国民生活審議会消費者政策部会自主行動基準検討委員会(第2回)議事録

平成13年12月21日(金)

国民生活局消費者企画課

〔 松本委員長 〕 ただいまから、国民生活審議会消費者政策部会第2回自主行動基準検討委員会を開催いたします。

 本日も、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。

 本日は、まず、事務局より「企業の社会的役割と情報開示のあり方に関する国民生活モニターの調査結果」についてご説明をいただきまして、その後、前回の委員会においてご案内のとおり「内外における自主行動基準の現状及び評価」ということで経営倫理実践研究センター主任研究員の田中委員と、麗澤大学国際経済学部教授の高委員のお2人からご報告をお願いすることになっております。

 それでは、早速、事務局の方からご説明をお願いいたします。

〔 堀田消費者企画課長 〕 今日はいろいろご報告が立て込んでおりますので、簡単にご説明したいと思います。

 お手元に今日の委員会資料1ということでお配りさせていただいている資料がございます。これは、「平成13年国民生活モニターに対するアンケート調査の結果」ということでまとめたものでございます。

 国民生活局の関係で国民生活モニターというものが各都道府県に全体で2,300名ほどおりますが、そのうち回答をいただきました 2,242名の方の結果をまとめたものでございます。

 実施した時期は8月30日から9月11日ということで調査を行っております。

 2ページをお開きいただきたいと思います。いくつかクエッションがございますが、(1)の企業の社会的役割についての問1は「企業は社会的役割を十分に果たしていると思いますか」といった質問をしております。「十分だと思う」、あるいは「少し思う」といった答えの合計が40%ぐらいでございまして、円グラフの白い部分が約半分で、「あまり十分ではない」ということが半分ぐらいあるということでございます。

 問2は「企業の社会的役割は何だと思いますか、上位3つを記入してください」という質問で、「事業を通じた貢献」が一番多く、次が「利益の追求と雇用維持」という答えが多くなっております。「環境保護」といったものも全体の約6割強ございます。

 3ページにまいりまして、(2)企業への信頼感についてということで、問3として「貴方の企業の信頼感は5年前と比べてどう変わりましたか」という質問ですが、「特に変化なし」というのが5割強の答えになっておりまして、「低くなった」というのが4割ぐらいございます。他方「高くなった」というのは7%という結果になっております。

 4ページにまいりまして、問4「今後企業が社会的信用を得るために、さらに力を入れるべきものは何だと思いますか? 上位3つを記入してください」ということでは、環境分野が多くて「環境保護」が第1番目になっております。「顧客重視の考え方の確立とその遵守」というのが67%、次が「情報開示による経営の透明性向上」といったような答えになっております。

 問5「今後企業経営で誰を重視すべきだと思いますか? 上位3つを記入してください」という質問に対しましては、当然のことかもしれませんが「顧客」というのが一番多くなっておりまして、次に「社員」、「地域社会」といった答えになっております。

 5ページにまいりまして、(3)企業の情報開示のあり方についてということですが、問6で「日本企業の情報開示は十分行われていると思いますか?」という質問で「あまり十分ではない」といったような答えが73%程度ございます。

 6ページにまいりまして、問7「情報開示が適切に行われれば、企業不祥事による消費者被害は少なくなると思いますか?」という質問ですが、49%が「少しそう思う」、40%が「思う」といった答えになっております。

 問8「消費者に不足している情報は何がありますか? 上位3つ記入してください」という質問に対しては、「消費者保護政策」といったこととか、「商品・サービスの説明」等々が続きます。

 簡単でございますが、大体こういったような質問になっておりまして、また後ほどご覧いただければと思います。

〔 松本委員長 〕 この調査結果につきましては、参考にしていただきながらご審議いただきたいと思います。

 続きまして、田中委員、高委員から、それぞれ30分程度お話をいただきまして、質疑はお2人のご報告が終わった後でまとめて行いたいと思います。

 まず、田中委員からお願いいたします。

〔 田中委員 〕 いただきました時間も30分と限られておりますし、お手元にお配りしました資料を使って、これからの検討の下準備としてのごく基本的なものをご報告したいと思っております。

 今日は3つに絞りましてご説明したいと思います。1.が日米企業の現状、2.が経営理念と倫理綱領の役割、3.がステークホルダー・マネジメントと消費者重視経営。これらをお話ししたいと思っております。

 それでは1ページをお開きいただきたいと思います。

 1.「日米企業の現状」

 (1)倫理綱領の明文化ですが、前回、事務局から報告がありました各種アンケート調査、倫理綱領がどの程度浸透しているかというところは、経団連や経済同友会にしましても、また関西経済連合会にしましても,調査した時点は違っておりますが5割から6割。私どもの経営倫理実践センター43社でごく最近やりましても7割程度というところで、実は「親会社にはあるが子会社までは全部持っていない」とか、「非常によくやっているが倫理綱領は明文化していない」というところがまだあるというのが現状でございます。

 (2)倫理綱領策定の現状 これは98年にカンファレンスボードが調べたものですが、当時、97年に私どもの経営倫理実践研究センターに協力要請がありまして、それで国際的に比較して調べております。

 ?倫理綱領を策定する理由ですが、非常に珍しいのは「価値の確立」というところが相当比率が高うございます。あとは「従業員の専門性の向上」とか「法律的リスクの回避」というのが5,6割あるというところが特徴でございます。

 2ページにまいりまして、各国の比較が書いてございます。その内容は、レポートの性格上つぶさにはわかっておりませんが、アメリカはどちらかというと法令を重視するための手段としてこういうコードを使っているというのが特に強調されております。

 一方、日本の方は、もちろん遵守の手法としても使っておりますが、「経営理念からきた価値」というものを相当重視している。また、カナダ、ヨーロッパもどちらかというと価値の方にちょっと重点を置いているというのが大まかな特徴でございます。

 ?倫理綱領策定の戦略的意味合いですが、当然のごとく法を遵守するというのが主要でございます。

 また、これをどういう関係者が参画して作っているかというと、当然、CEOが絡んでいる。これは特に海外の場合は日本以上に相当の関与をしておりまして、全平均にしましても95%になっております。

 次いで法務担当者が92%。これが高いのは当然この計数どおりかと思います。

 それから、倫理綱領をどの程度配布しているか。これも各国の平均ですが、だんだん増えてまいりまして、作ったところはかつては6,7割でしたが、ごく最近の98年の時点では、作ったところの9割近くはちゃんと配布しているという状況になっております。

 それでは、続いて2.「経営理念と倫理綱領の役割」です。実は倫理綱領ないしは行動基準を作るときになかなか難しいのは、他の企業のをちょっと借りてきて、名前をちょっと変更して使おうかというと、なかなかそうはいかないわけです。その1つが、(1)の経営理念あるいは企業使命をどのように織り込んでいくかというのがポイントだと思うのです。よく経営学者の方が、こういう経営理念に「階層性」とか「領域性」があると言っております。3ページをお開きいただきますと、どこの企業でも経営理念のない企業はありませんが、経営理念の書き方も各社まちまちでございます。しかし、その大まかな特徴を見ると上位概念から下位概念まで多種類にわたっております。

 図表1のように、一番重要なのは「企業使命・価値観」である。それに根ざして「事業目的」を決め、その事業目的を遂行するための「方針と戦略」を決め、これらに基づき行動指針を作っているという形なのです。

 ただ、ここで言う行動指針は、せいぜい3箇条とか5箇条の簡単なものが経営理念の中に含まれております。これから議論する倫理綱領は、この行動指針よりももっと詳しいものも意味しております。

 ところが、昨年のようないろいろな企業不祥事が起こったところをみますと、どちらかと言うと「経営理念が空洞化している」とよく指摘されているところでございます。

 3ページの下の方ですが、それでは(2)倫理綱領の役割と位置づけはどうなっているのか。やはり倫理綱領というのは、企業にとって実際には全員が遵守すべき行動基準というような“ガイドライン”の役割を果たしております。したがって、次の4ページの図表2をご覧いただくとよくわかるのですが、企業にとって一番大事なのは「創業の精神」であって、そこから出てきた「経営理念」が基本的な価値観でありますから、それを中心に倫理綱領の方に落とし込むのです。そのとき左右から、これはたまたまわかりやすく4つだけ挙げておりますが、右の方、例えば「企業の社会的責任」とか、経団連で企業行動憲章を作っているとか、左の方から、国際的な要請があっていろいろなルールがあるとか、関係法令があり、こういうものを全部組み入れて倫理綱領を作る。それを補完する形で下に「業務マニュアル」などがある。こういう流れかと思うのです。

 点線でくくりましたのは、この縦軸が言ってみれば企業経営の“座標軸的”なもので、ここをきちっと通しておくことが企業経営に非常に重要ではないか。したがって、倫理綱領の役割もそういうような中核的役割を担っているというふうにみられます。

 5ページにまいりまして(3)倫理綱領の一般的な構成。それでは倫理綱領は一体どのような構成で作られているかということです。

 各社、大体冊子にしている。表紙も各社のシンボルカラーを使ったりロゴを使ったりして、15ページから20ページ、場合によっては5ページ位のもありますが、そういう冊子にしている事例が多うございます。

 5ページの真ん中あたりの「一般的な構成」のところを見ますと、冒頭に「創業の精神と経営理念」を掲げて、その次にいわゆる「倫理綱領制定発表文」という経営者のメッセージを掲げて、そこのところで創業の精神とのつながり、世の中がこう変化して、したがってこれを守ることが大事なのだ、こういうようなことを守ることが社会の信頼を得る王道だというような経営者のメッセージを掲げまして、それから項目になっているというのが一般的でございます。

 その一般的な主要項目もアメリカと日本では変わっておりまして、アメリカの方は身近なところから諄々と説き明かしておりますが、日本の方はどちらかといいますと1章、2章、3章、大項目、中項目、小項目ときちっと整理している事例が圧倒的に多うございます。最後に補足として、何かあったときにこういうところに照会してください、我々の組織体制はこうなっています。そういうような組織体制と照会先を網羅しているというのが特徴でございます。

 5ページの下の方ですが、(4)倫理綱領の重要な柱と主要な項目は、主にどういうのが入っているのかというところでございます。

 一応便宜上5本の柱に整理してご説明したいと思います。

 第1の柱は、「企業の社会に対する基本姿勢は何か」を明示している事例が圧倒的に多うございます。第1、第2、第3と基本方針とか事業活動に関する体制、基本的な姿勢を示しております。

 6ページにまいりまして、その中に当然「企業の社会的責任に対してこれを遂行する」というような意思表示をしている企業が圧倒的に多うございます。

 第2の柱としては、これまた当然ですが、「法令等を遵守するという基本姿勢」です。これは企業によって業種によって関係法令が違いますので、その辺を意識してこういうような「法令を遵守する」ということをうたっております。

 第3の柱が「組織外のステークホルダーに対する基本姿勢」、第4の柱が「役員・社員の行動と責務に関する基本姿勢」で、最近の各企業の倫理綱領を見ますと、この第3と第4が相当詳細にわたっているというのが特徴でございます。

 第3の柱のところで「各ステークホルダーに対するバランスある行動」の中に初めて、各お客様はじめ株主、競争相手、関係業者までずっと述べている事例が多く出てきて、ここにいわゆる贈答とか接待とか、あるいは公務員に対する供応をどうするのかというのが書き込まれております。

 第4の柱で、「役員・社員」とわざわざ「・」をつけて並べてあるのですが、さすがに最近は「倫理綱領は社員が守るのだ」という意識はなくなりまして、やはり役員と社員が一体となって守るという前提で書かれている企業の事例が圧倒的に多うございます。

 したがって、第6の「社員の個人及び構成員としての行動と責務」をやや細かく説明している。特に第7の最近の特徴としましては、会社の財産あるいは資産、なかんづく企業情報、こういうものをいかにきちっと管理していくかというところをやや詳細に書き込んでいる事例が増えております。そんなところが特徴かと思います。

 7ページにまいりまして、第5の柱は「組織体制とか罰則規定など」で、各企業の事例を見ましても非常に簡単で、あるいは図解などをしております。特にここに、これから高先生の方からご報告があると思いますが、倫理ヘルプライン、照会ラインはこういうところにしてくださいとか、組織はこうなっているからこういうところに連絡してくれればお答えしますとか、ないしは罰則規定で、倫理綱領に反した場合には処罰されるという旨などが述べられています。特に役員につきまして最近の特徴としては、「役員については当社の役員規定及び関係法令に基づいて処罰される」というようなことをここに明示する事例が非常に増えております。そんなところが大まかな特徴かと思います。

 8ページにまいりまして、3.「ステークホルダー・マネジメントと消費者重視経営」という点です。ステークホルダーにつきましては、もう皆さんの方がご承知ですからごくごく簡単に、図表3で確認していただきたいのですが、どこの企業も業種によっていろいろな取引先、例えば、ここにいらっしゃるイトーヨーカ堂さんなんかは取引先に「お」をつけて「お取引先」というふうに非常に重視されておられます。当然、ご自分はメーカーではございませんから、品物を納入していただいて販売しますから「お取引先」と重視しているのは当然だと思います。通常、企業から見てお客様、消費者、それから働いてくれている社員、図の右の方の株主・投資家、左の地域社会はどこの業種でも重要だという考えに変わりはないかと思います。

 9ページにちょっと目を移していただきまして、そのときに具体的に企業が直面するコンプライアンスとか企業倫理、こういう問題は何も会議室で起こるのではありませんで、企業の経営者とか社員がさまざまなステークホルダーと接触する場面、言ってみれば“現場”で起こるわけです。現場で起こることはガイドブックどおりではありませんで、応用問題として起こる。したがって、それまでによく教育研修をしておかないと応用問題が解けないということになろうかと思います。

 ここには4つの大きなステークホルダーについての大まかなご説明をご参考までに挙げてみました。1)顧客・消費者について「顧客・消費者のニーズに対応して、“良質な商品と高水準なサービス”を提供する」、これは企業の使命ですから当然かと思うのですが、これが当然だとすると製品あるいは商品、サービスについてちゃんとした説明責任を要するとか、例えば不公正な宣伝をしてはいけないというようなことが法律的な関係との整合性で問題になろうかと思います。特にお客様への商品の提供では、健康とか安全というような配慮が重要だというところが特徴かと思います。

 2)社員(従業員)のところでいきますと、今は、当然、社員につきましては「個人としての能力を十分発揮できるよう職場環境を整備する」というのが主眼になっております。各会社の倫理綱領にもそういうものがうたってございます。そういう関係で当然のことながら職場環境を整備するとか、健康に配慮するような体制づくりをするというのが書き込まれております。

 また、国籍、宗教、人種、性別、年齢に対して差別的な行為をしてはいけないということがきちっと書かれておりまして、これとの関係でセクハラもきちっと明示するというのが実態でございます。

 こういうことでやっていきますと、今、こういう不況の時期ではありますが、サービス残業、セクハラ、プライバシーをどうするかというのが具体的な問題としてささやかれております。

 3)株主・投資家、ここはもう皆さんの方がお詳しいので省きますが、一番大事なのは経営者が適正な責任を分担して企業使命を遂行するということが書き込まれているということでございます。

 10ページにまいりまして、4)地域社会のところは、「良き企業市民」として企業はどう行動しているか、地域社会との共存共栄が図られているかというようなところがポイントかと思います。

 「環境保全」という点で、特に最近の企業の行動基準では、環境関係の言葉が目立っております。そんなところが特徴かと思います。

 (2)倫理綱領にみる消費者重視の事例として、1)日本の事例ですが、消費者重視という観点からどのように皆さんが取り上げているか。これはほんのいくつかの事例で、次回以降企業側のご説明がありますから、そこで言及があろうかと思います。ここにいらっしゃるイトーヨーカ堂さんの事例は、第1章の事業活動のところにお客様との関係を明示している。松下電器さんも第1章の事業活動の推進中にお客様の信頼という形で載せている。資生堂さんもマーケティングとかTHESHISEIDO WAYの中にお客様への公正な宣伝というような形で載せている。横河電機さんも第4章の客先に対する行動規範で載せている。そのように何らかの形でそれを織り込んでおります。

 ただ、これから議論されるような消費者重視というのを鮮明に何か特別なものを作っているかというと、そういう事例はやや少ないというのが現状でございます。

 外資系のところを見ましても、NCR、ヒューレット・パッカード、ジョンソン&ジョンソン、各々載せております。皆様、ご承知のジョンソン&ジョンソンの「我が信条」(アワ・クレドー(OurCredo))では、第一の責任に消費者を掲げて、非常に鮮明に打ち出している事例が目立っております。

 しかし、どこの企業さんも当然のごとく消費者重視は経営理念の方では鮮明にうたっておりますが、行動基準のところでは事細かに書く事例というのはそんなにはありません。むしろ大まかな原則をうたっているという状況でございます。

 11ページにまいりまして、【消費者(顧客) 重視経営の企業活動評価7基準】、これは私の単なる議論のためのたたき台としての提案なのですが、結局、消費者重視というところを行動基準に入れるといっても、よほど議論を詰めていきませんと拡散してしまいます。一応7つにしてみたのですが、?は、やはり経営理念とか、経営方針などに消費者を重視するというのがきちっと明示されている。単なる掛け声の顧客第一主義というのではないという内容を盛り込むことが重要かと思っております。

 ?は、実践の段階では教育・研修にどういうふうに取り上げているか。単なる掛け声ではなくて実践的な対応が役員・社員ともできるように、そういう教育を施しているという点が2番目に重要かと思います。

 ?は、製品・商品サービスに的確な情報開示がなされているか。特に「十分な説明がなされているか」こういうところが重要なポイントかと思っております。

 ?は、製品・商品の安全が確保されているか。特にここでは地球環境とかそういう関係できちっとした内容が盛り込まれているか、あるいは製品・商品の保証書がきちっと添付されているか、そういう部分もチェックする必要があろうかと思っております。

 12ページにまいりまして、?は、広告・宣伝、商取引等が消費者重視という視点から適正に行われているか、という点でございます。当然、過大な広告があってはならないし、また、契約内容についても不公正な約款規定等があるのは好ましくございませんので、そういうのも内容としてやはり重視しなければならないかと思っております。

 ?の地球環境のところは、やはり大きな項目で1つ取りだすようなことが必要かなと思っております。各企業では環境会計等に相当精通している企業もおりまして、ここに相当配慮しているのは現実に出ております。

 ?が意外に重要なのですが、消費者・顧客が苦情・意見を述べる手段・方法が確立しているか?、そういうものを真っ正面から受け止めて企業の経営戦略とかマーケティング戦略にきちっと落とし込まれているかというところも重要かと思っております。

 これはたまたま私の試案として7つ挙げたのですが、消費者重視というと、何かの項目を立ててそれなりに整理したものを我々が検討するモデルの中に織り込んでいくということが重要かなと思っております。

 【参考資料】として掲げましたのは、私どもの経営倫理実践研究センターで実は1年間企業の方と勉強しまして、もうモデル倫理綱領というのができております。ところが、これは皆様ご承知のように、まだ内容が全部会員企業限りで、なかなか開示しておりません。したがって、ここで項目だけで内容のざっとのところをご理解いただきたいと思います。これは、各企業の代表が集まって、私ども「コード策定遵守研究部会」ということで1年間研究したものをまとめたのですが、それでもやはり皆さんの意見は、第1章で会社の基本方針を相当列挙する。13ページにまいりまして、第2章で役員、社員の行動基準を明示する。これは各企業とも相当細かく書き込んだ方がいいと、私ども検討の段階ではそういう意見でございました。

 14ページにまいりまして、第3章からは当然組織体制の問題になりますから、担当役員が任命されているかとか、運用体制はどうなっているか。

 第4章が特に重要なのですが、質問を受ける倫理ヘルプラインとか、コンプライアンス相談窓口、ここがちゃんとしているか。

 第5章が実際には罰則規定、あるいは懲戒処分の内容という形になっております。

 それに、最後にちょっと2行書きましたのは、俗に言うエシックスカード的なビジネスの自問自答、例えば「これは法律に違反していないか」、「良心に反することはないか」とか、あるいは「会社の方針に合っているか」というのを自問自答して不祥事を防ぐというようなチェックの手法。

 それから、私どもセンターの場合には、モデル倫理綱領を提示すると同時に誓約書というのを取った方がいいという前提でいくつかのひな型を作っております。そんなことをして、今、各企業の方に提示しております。大半の企業は倫理綱領を持っているわけなのですが、大きな銀行も、それから、最近、ファイナンシャル・グループになっておりますからまだ作成しているところもあります。大企業でも、相当有名なところでもまだ行動基準までは持っていない。従来のフィロソフィーとか、あるいは何々イズムというのを中心に教えておられるというところもありまして、全部が全部行動基準をまだ十分持っている状況ではないというのが現状かと思っております。

 こんなところで、ざっとでございますが、私の報告を終わらせていただきます。

〔 松本委員長 〕 ありがとうございました。

 引き続きまして高 委員の方からご報告をお願いいたします。

〔 高 委員 〕 事務局の方から「資料は多い方がいい」と言われまして資料を用意しましたが、お話は、資料の前についている4ページもののレジュメを使ってさせていただこうと思っております。

 時間に限りがありますので、このレジュメを使ってお話ししたいことがどこまでできるかわかりませんが、2つのことをお話ししたいと思っております。

 1つ目は、今、田中委員の方から倫理綱領等の話をいただいたわけですが、そういった倫理綱領がコンプライアンス活動の中でどういう位置を占めるのかという、いわゆる全体像を描き出してみて、そのどの部分にくるのか。

 それから、さらに、ここで検討することになると思うのですが、いろいろなステークホルダーがいるわけですが、消費者というステークホルダーに対して、私は独立のポリシーがいると思っているのですが、どういうポリシーを作らなければいけないのかという、つまり、ポリシーの問題と倫理綱領の問題、あるいはコンプライアンス・マニュアルの問題と、コンプライアンス体制全体という、この3つの関係を最初に整理したいと思っております。

 タイトルは「内外の云々」というのがついていることになっているので、できるだけ内外のことに触れながらお話ししたいと思います。

 2つ目は、これも1回目の会議のときにちょっと申し上げたのですが、皆さん方のお手元のレジュメですと2ページ目から書いてあるのですが、?.法制度的な環境変化。これは日本でどうこうということではなくて、ヨーロッパとかアメリカ、いわゆるコンプライアンス、コンプライアンスと言うのはちょっと正確ではないかもしれませんが、いわゆる「企業社会責任」というのでしょうか、そういった問題に取り組む企業、あるいは企業倫理の問題に取り組む企業、これはある意味では市場の力を使ってとか、法律の力を使って、制度の力を使ってそれを競争力に変えていくという、こういう外側からの働きかけです。

 この議論はここでやることではないのかもしれませんが、あくまでもコンプライアンスの取組みを企業さんに求めるというのは、ただ「やれ」というのでは単にコスト負担になって競争力の低下につながるという問題がどうしてもあるわけです。ですから、「これが競争力に変わるのですよ」という仕組みについても、ここで議論できるのかどうかわかりませんが、1年、2年かけて検討していただければありがたいと思いますので、それのさわりを2番目の柱のところでお話ししたいと思っております。

 一番最初の話に戻りますが、?.コンプライアンス体制のあり方というところでございます。その横にECS2000というふうに書いたのですが、これはべつにECS 2000という規格を使ってくださいという話ではなくて、ある意味では、この規格の枠組みが内外で取り組まれているコンプライアンスの体制を集約しているのではないかと思っているわけです。 このECS2000といういわゆる倫理のマネジメントシステム規格ですが、歴史をちょっと申し上げますと、97年に関西の経済連合会で「企業と社会委員会」、ここに池田委員がいらっしゃいますが、これは松下正幸副社長が副委員長を務めた委員会で議論がございまして、倫理に関する規格というものを作って発信しないかと。特に、失礼な言い方ですが関西の方は関東に対して何か対抗意識がありまして(笑)、できれば関西から発信したいというのがありまして、こういう規格を作って発信させてもらったわけです。

 ただ、経済団体ですから、その性格上、なかなか会員企業さんに「これを使え」ということは言えないということで、泣く泣く私の方に、麗澤大学の方に持って帰りまして、規格は99年の5月に発表されたのですが、その後、規格だけではなくて具体的なガイダンスも作ろうということで、170ページぐらいのガイダンス・ドキュメントを作りました。そのときには、今ご報告いただきました田中委員にもご協力いただいて、こういうものを作って出したわけです。

 要はこの規格そのものの問題ではなくて、中身はどうなのかと言いますと、簡単なことでして、計画を立てて実行して、実行した結果をチェックして、それで不十分なところがあれば見直して、またその結果を受けてプランに落とし込む。P>D>C>Aという、ここでもおなじみの方が多いと思いますが、ISOの1)PLAN 2)DO 3)CHECK4)ACT いう、この枠組みで考えましょうということです。

その枠組みが説得力があるだろうと思うのは、COPOLCO Working Groupの議論を書きましたが、ここで今フィージビリティー・ディスカッションがやられているというのも前回皆様方の方に連絡があったと思いますが、CSR(企業社会責任)の規格を作ることが可能かどうかという議論をやっているのですが、やはり出てくるのが、いわゆるP>D>C>Aというような、いわゆるマネジメント・システムに共通する枠組みで作ろうということがここで話が出ている。

 それから、EOAというのを書きましたが、これはアメリカのエシックス・オフィサー・アソシエーションといいまして、大体、アメリカの大企業の700人ぐらいの倫理オフィサーが集まって作っている組織ですが、ここがCSRの1つとしてか、あるいは独立でいわゆる倫理あるいはコンプライアンスに関するマネジメント・システム規格を作ろうということでEOAがアメリカのISOに対して提案しまして、一応アメリカの方はこれを受けてスタートしている。

 その枠組みですが、それもやはりプランを立てて、実行して、チェックして、アクト。EOAはLeeという方が担当者なのですが、頻繁にやりとりしてまして、ECS 2000を見せてくれないかというので、英文になったものを見せました。「じゃあ、おまえのところのも見せてくれ」と言ったら、「いや、実はうちは何もないのだ」と言われまして、「じゃあ、何もないのにどういうものを作ろうとしているのか」と聞きましたら、ここに書きました連邦量刑ガイドラインの、前回もお話があったと思いますが、7つの条件に合ったような形のマネジメント・システム規格を作ってほしいとISOに申し出ていると言っておりました。

 その7つというのも、整理すれば、結局、プランを立てて、マニュアルを作って、教育をやって、コミュニケーションをやって、その結果を見て、それでもう一度見直す。これも1)PLAN 2)DO 3)CHECK4)ACT ということです。

 英国公正取引庁云々というのを書きましたが、これも彼らがコンプライアンスの取組みをイギリスの企業に求めているわけですが、その柱は、経営幹部が、「まずトップがコミットすること」というのがあって、それから、「方針を作っているか」、「手続きを作っているか」、「教育、訓練をやっているか」、その結果を見て評価して、不十分であれば、当然トップがコミットしているわけですから、「見直していこう」という、こういう取組みです。

 ですから、私が申し上げたいのは、P>D>C>Aの枠組みで説明しますが、これが内外の取組みを整理するときに手っとり早いのではないかと思っているわけです。

 その下に書きましたが、「P>D>C>Aを回しながら一気に完成したものを作りなさい」というのは非現実的な話でして、「徐々に回しながら不十分であればそこを改めていってより責任ある誠実な経営というのを実現していきませんか」ということです。

 ですから、目指すところというのは「公正かつ誠実な経営を実現すること」、これがコンプライアンスの体制。体制というのはでき上がった状態ではなくて、くり返していく動態的なプロセスだというふうに理解していただければと思います。

 1)PLAN のところで何をやるのか。先ほどからご説明いただきましたように、「経営方針」と言ってもいいでしょうし、「基本方針」とここには書きましたが、とにかくまず柱となるものを決める。それに基づいて具体的なマニュアルを作る。(資料04)と書きましたが、ここにモデル倫理綱領というのを出しました。先ほど田中委員の方は外には公表できないと言ってましたが、私の方は安売りでけっこうでございます(笑)。

 これは弁護士なんかと組んで作ったのですが、いわゆる金融庁の検査が始まる前に金融機関さんから、「是非、モデルになるものが欲しい」というふうに言われまして作って、これは出版物で公表したものです。べつにどういう形で使われてもかまいません。

 その下の「各種ガイドライン」、これは何かといいますと、いわゆる基本方針とかコンプライアンス・マニュアルというのは全社に、すべての人に適用する。ところが何でもかんでも全員に適用するかというと、そうでないものもかなりあるわけです。例えば独禁法の遵守ガイドラインというのは多分全員が知らなくてもいいことだと思うのです。

 セクハラについては全員知った方がいいのかもしれませんが、遵守ガイドラインとか、インサイダーについても全然関係ない方もいると思うのです。

 そういう各種いろいろなガイドライン、ある特定の職種とか、ある特定の部署に対して作らなければいけないガイドラインというのがあるだろう。

 もう一つ「実施計画の策定」と書きましたが、これは具体的にマニュアル等を作って、「さあ、これでOK」というわけではないと思うのです。先ほどから言っております「企業が誠実な経営を実現していく」というのは、やはり「自分自身の会社にどういうリスクがあるのか」ということをきちんと把握して、こういう把握を受けて取り組んでいかなければいけない。

 例えば、これは失礼な言い方かもしれませんが、証券会社さんなんかは大体どこも部店長会議をやるときの説明はパターンが決まっており、「これから相場は必ず上がっていく、だから、皆さん、これだけ売ってくれ」という形でハッパをかけるわけです。そうやってノルマをかけて販売させると、結局、企業としてはお年寄りなんかにかなり回転販売をさせてしまう。手数料稼ぎのようなことになってしまう。そういう自分のところのビジネスが持っているリスクをきちんと踏まえる必要がある。

 もっといい例は不動産会社です。皆さん方も住宅を購入なさるときに不動産住宅展示場等に行くと思いますが、そのときに、皆さん方は自分の職業とか住所とか電話番号を入れます。さらに年収まで書かされるわけです。皆さん方セッセと書くわけです。そういった個人情報をきちんと管理しているかというと、今のところ不動産会社さんはほとんどやっておりません。

 こういう、自分のところにどういうリスクがあるのかということを踏まえて、そして合理的な取組みをやってもらうというのが1)PLANのところにくるわけです。もちろん、これもいろいろな企業さんにも申し上げていることですが、リスクというのは洗い出していくといっぱい出てくるわけです。大学でも恥ずかしながらいっぱい出てきます、私どもの大学でも。すべてをコントロールするのは不可能なことでして、やるべきことというのは自分の団体あるいは会社にある問題が起こって、それが社会に出てどのぐらいの打撃を受けるのかというリスク評価をやった上で、例えば「今年は上位3番目まで取り組む、残りのものについては来年度以降やる」という形で、自分自身のリスクを踏まえて合理的な取組みを展開していくということが1)PLANで求められることです。

 その下に白抜きの数字で???と書きましたが、これは特にコンプライアンス・マニュアルに関してですが、実施計画もそうですが、とにかくこういったものを作るときはステークホルダー別でアプローチしてもいいですし、「モデル憲章事項別」と書きましたが、これは例えば経団連の憲章とかがあるのですが、そういったものを柱にして作ってもいいですし、あるいは「法令違反別」、これはアメリカの倫理綱領というのは最初に何かモデルがあって作ったわけではなくて、やはりいろいろな法令違反の経験があってでき上がってきているのです。ですから、IBMのものを見ても独占禁止法に関するものが非常に多いのです。そういったものを受けてでき上がってきている。ですから、自分のところのリスクを合理的にコントロールするという意味では、自分のところは過去にこういう失敗があったということを踏まえて倫理綱領を作るとかコンプライアンス・マニュアルを作るというのも合理的だと思うのです。

 ですから、「これが作り方だ」という1つの方程式があるのではなくて、結局、目指すところは法令違反リスクとか、社会規範から逸脱するリスク、それを合理的にコントロールするためのマニュアルを作ればいいということです。

 2番目は省略しますが、「コンプライアンス・マニュアルにおける柱の例示」、これはアメリカとイギリスの例を皆様方の資料のところに掲げたわけですが、何を言いたいのかといいますと、コンプライアンス・マニュアルそのものを見たときに、いわゆる消費者関係のものというのはそんなに大きなウエイトを占めていないのです。

 先ほど、田中委員のご説明のときにもあったと思いますが、「消費者契約法に関わるようなところはどこなんだ」というぐらいの内容だったと思います。それをそこに無理に盛り込むべきだというのも私はちょっとおかしいと思っておりまして、言いたいことは倫理綱領の中に消費者契約法に関わるそういった内容を1つ柱を設けて、倫理綱領とかコンプライアンス・マニュアルに書き込めというのもおかしいと思っているのです。

 どういうことかといいますと(資料08)を見ていただきますと、三角形のピラミッドみたいなのが描かれていると思います。

 もう1回整理しますと、コンプライアンス関連の文書というのはこういうふうになるのだろうと。ピラミッドの一番上のところにいわゆる基本方針みたいなものがきます。全社に適用される行動基準とか基本方針、A4の紙で言えば1枚とか2枚程度のものだと思いますが、そういったものがくる。それだけでは不十分なので、もう少し具体的なものということでコンプライアンス・マニュアル、あるいは企業さんによっては倫理綱領と呼んだり、行動ガイドラインと呼んだり、こういったものが2番目にくる。これはかなり具体的なのですが、基本的に全社に適用する。

 それから、先ほど各種ガイドラインと言いましたが、これが一番下のところにくる。ある特定の職種とか職場向けとか、あるいはある特定の問題に焦点を絞ったもの。例えば先ほど言いましたセクハラ関係とか、あるいはプライバシー・ポリシーとか、そういったものがくるかもしれません。こういったものを作っていく。

 これは一体何を目指すのかといいますと、企業そのものが、先ほど言いましたような「誠実で責任のある経営」をやるために必要となってくるいろいろな文書類だということを申し上げたいのです。

 それでは、消費者に対してどういう取組みをやるのか。それに関してどこにどういう文書を作ったらいいのかということですが、私は、基本的にこの三角形の外側に作るべきだと思っているのです。左側に矢印で出して、例えば販売勧誘方針、苦情対応方針、製品安全方針、あるいはプライバシー・ポリシーといったものがくると思うのです。つまり、「消費者の方々に対して私どもはこういった方針に従って経営をやります」ということで、消費者というステークホルダーに対して社会契約をする。外側に出すような形でやっていく。

 三角形の中のコンプライアンス・マニュアルに、そういった方針を揚げるとしても、コンプライアンス・マニュアル自体があまり公表されるものではないので、あるいはリスクを踏まえて社内体制を整えようとしてするものですので、あまり消費者向けの情報発信とはならないだろう。そういう意味で別枠で設け、独立の方針として発信したらどうでしょうかと思っているわけです。

 例えば「販売勧誘方針」、この中身をどういうふうにしていくかがあるでしょうが、消費者契約法を意識すれば、断定的な判断といったものは提供しないとか、重要事実を必ず告げるとか、そういうことを書くのがいいのかどうかわかりませんが、消費者契約法との絡みで言えばそういった内容が出てくるだろう。

 「苦情対応方針」は、何か問題があったときに、「うちの会社としてはこういう形で皆様方の苦情を受け入れます」といったものを方針として出す。

 「製品安全方針等」は、昨年のいろいろな問題を受けて何らかの方針を示す必要があるのではないか。これは、昨年あった事故等というのは、製品に問題があってというのは多分50%以下です。むしろ誤使用によっていろいろな問題が起こっているということがある。ですから、そういうことに関する会社側の方針、あるいはリコールに当たってはどういう手続きを取って私どもは取り組みますと。こういった問題をここで話をしますと「いや、それは経産省がやることで俺たちではない」と言われてしまうかもしれませんが、消費者という視点で考えれば、こういった内容を盛り込んだ方針を作るというのが我々のやるべきことかなと思っているわけです。

 もう一度レジュメに戻りまして、そういう意味で?のところにこういう方針を作って、他文書との関係をこういうふうに考えませんかと書いてあるわけです。

 2)DOですが、これは当然そういった責任部署、金融機関であればコンプライアンス統括部とか、一般事業会社さんであれば倫理室とか、あるいは法務担当とかいろいろあると思いますが、そういった部署を設置して、そこに権限を与える。

 もう一つ、先ほど田中委員の方から説明がありましたが、ガバナンスとの構造でちゃんと連動した形を作る。単なるそこの部署だけ設けて、対外的に部屋を作ったよというのではなかなか実質的な機能は果たせないのではないかという意味で、ガバナンスと連動させる。

 「教育、研修、コミュニケーション」。コミュニケーションというのは報告相談を受けるような部署を設けるということ。苦情の対応というのは中の声を受けるというものもありますし、外側からの苦情対応、これは既にできておりますJISのZ9920ですが、そういったものを応用する形でもいいのではないかと思いますが、要は外の声、中の声を吸い上げるような仕組みを作る。

 ただし、中の声に関しては、これも一般の企業さんに申し上げているのですが、大体そういう担当部署を設けてもほとんど声が上がってこないのが実態です。何をやるのかといいますと、コンプライアンスに取り組む目的というのは先ほどから言ってますように「誠実な経営ということを実現していきましょう」、それから、「いろいろなリスクがあればそれを把握していきましょう」ということですから、声が上がって来なければ担当部署がやることは、自分から現場に下りていって聞取調査等をやることです。つまりこの部署にはこういう問題があったのか、あるいは過去に問題があった部署については定期的に行って、ここにはこういう問題があったが今はどういう状況かというような形で、リスクを自分自身で把握しながらそれをコントロールしていくための取組みを行なうわけです。

 「運用管理」というのは、先ほど言いましたが実施計画を立てたら立てっぱなしではなくて、その計画が実際にうまく進んでいるのかどうかというようなことを把握しながらやりましょうということです。

 「緊急事態への対応」というのがありますが、これはちょっときついのでECS2000が嫌われる理由だと思いますが、「経営の幹部が不正に関わった場合の手順を決めておけ」というのがあります。これは、幹部が不正に関わることはないでしょうが、とにかく「日常的な手続きではコントロールできない状態」を緊急事態というふうに定義してその手順を作りましょうと。企業さんによってはべつに経営幹部の云々ではなくて、昨年ありましたようなリコールの問題とか食中毒の問題とか、ああいった状況、あれを緊急事態と考えて手順を作るというのでもかまわないと考えています。

 3)CHECK には2段階ありまして、1つは現場レベルでのチェック活動、「モニターリング」というのですが、現場できちんと行われているかどうかを確認する。

 もう一つは、「マネジメント・システム監査」ということで、いわゆる犯人探しの監査ではなくて、仕組みそのものの監査。例えば報告相談部署を設けた、しかし、実際にはすぐプライバシーが、誰が報告に来たというのが翌日には会社全体に伝わってしまうようなことがあればこれは機能しないわけです。こういった仕組みの監査をして仕組みを改善していくという取組みでございます。

 2ページにまいりまして、そういう形で取り組んで、実際に監査をやってみて、あるいはモニターリングをやってみて、「うちの部署はなかなかうまくできています」、あるいは「なかなかうまくいきません」、あるいは「ある特定の部署で頻繁にある問題がくり返されます」、あるいは「ある法律が改正されました」、そういったものを受けて4)ACTの部分で経営層に報告し、経営層の決断をもって次の会計年度、会計年度といったらいいのでしょうか、次のP>D>C>Aのサイクルの実施計画を立ててPに落とし込んで回していく、こういう取組みの連続がコンプライアンスへの取組みとなるわけです。

 ?.にまいりまして、前の会議で申し上げましたが、こういった取組みそのものが企業さんにとってメリットになるような動きというのは4つございます。1つはプロセスを評価してあげる。例えば、連邦量刑ガイドラインの話もそうでしたし、イギリスのこれも同じような仕組みがございます。2ページの1)プロセス評価に基づく制裁方式というのがあって、英国1998年競争法というのがありますが、これも連邦量刑ガイドラインに、独占禁止法に限定されますが考え方は似ております。

 それから、先週、日経新聞に報道されておりましたが、実際に公正取引委員会がそうやって動くのかどうかわかりませんが、マスコミさんは先取りしてどんどん書いてしまうところがありますので、同じような独禁法の運用を考えているという記事がございました。

 そういう意味で、プロセス評価に基づく。例えば簡単に申しますと、どんな組織にでも問題がいつか必ず起こるわけです。ただし、起こった場合でもふだんからそういうことが起こらないように組織としてまじめに努力していたか、あるいは起こったときにどう対応したか、責任ある対応をしたか、当局に協力したか、こういうところを評価し最終的な罰則、罰金、これは行政罰になるでしょうが、それを緩めてあげましょう。あるいはそれがなければ悪意をもって団体としてやった場合には厳しく罰しましょうというような、こういう方式が特にアメリカとイギリスにはっきりした形である。

 2)ですが、これはSRI(社会的責任投資)というのを前回申し上げたと思いますが、今回、イギリスとフランスに行ってきたのですが、ヨーロッパというのは今CSRというのを盛んに議論しているのです。「企業社会責任」というのをとにかくやろうと。なぜそんなに騒ぐのかというのが私の問題意識としてありました。なぜかと言うと、企業社会責任なんていうのは1970年代にもう既に言われていたわけです。それが今改めてEUを取り込んでグリーンペーパーまで作って、議論がものすごく白熱しているわけです。なぜ、ヨーロッパでCSRというのが騒がれるのか。ヨーロッパのSRI、倫理的な会社とか社会責任を果たす会社を評価しようという仕組みがありますが、アメリカのものよりもかなり複雑なのです。どうして複雑なのかというのが2番目の問題意識です。

 3番目は、SRIといった投資運動を通して倫理的な会社を支援するという動きがあるのですが、どうして政府はそれを支援するような法律を次々と作っていくのかということです。

 4番目は抜きにしておきますが、その3つがすべて相互に関係してくるのです。

 ヨーロッパでCSRが強調される理由は、簡単に申しますと、経済的にヨーロッパが弱体化しすぎた。それを強化するためにどうしたらいいか。当然、EUを作ったことがその目的なのですが、そのときに、私はいろいろな文献を読んでいて、あるいはNGOの団体の名前を見ても頻繁に出会う言葉がありまして、それはソーシャル・コヒージョン(Soc-ialCohesion ) 、社会的連帯という概念なのです。これは端的に文章でも出ていたのですが、「ファーイーストからの脅威に対抗するためには、ソーシャル・コヒージョン、社会がまとまっていかなければならない」という内容になっているのです。具体的に言いますと、国と国が言語が違うからまとまらなければいけないという話もあるのですが、もっと読んでいくと深いところがありまして、要は域内で人、資本が自由に動き始めると当然失業者が出てくる。そうやって落ちこぼれが出てくると世の中の不安定要因になってソーシャル・コヒージョンが壊れる。ソーシャル・コヒージョンを充実するためにどうしたらいいかということで失業者対策ですが、政府では手に負えないので企業に協力を求めるという形で、「とにかく失業者を出すな、出した場合には将来別の仕事につけるように、あなたの会社の中で年間何時間以上教育をしなさい。次の会社で使えるスキルを身につけさせなさい」ということで、そういう運動をCSRとして進める。

 あるいは、ある工場が閉鎖されて別の地域に移転されると、地域が荒廃するわけですが、その荒廃を止めるために企業さんに、CSRとして「地域に対するいろいろな寄付活動とか、ボランティア活動をやりなさい。そういうことを通して企業はチームワークの大切さを学ぶことができる」、そうやってソーシャル・コヒージョンをとにかく実現していこうとしているのです。

 「おまえ、何を言っているのか」と思われるので整理しますと、要は、ヨーロッパは自分たちの社会をこういう方向にもっていきたいというイメージがあってCSRの運動を展開しているのです。

 SRIは、これはコインの裏と表だと言っていましたが、そういうCSR活動をやっている企業を評価するために、SRIというのをとにかく推進していこう。政府は何をやるのかといいますと、そういった社会的責任投資を促すために、例えば年金基金の受託者に、「投資対象企業が、法的な取組み、社会的な取組み、倫理的な取組み、環境的な取組み、こういった取組みをしているか考慮に入れていますか、入れていればそれを公表してください」という情報開示義務の法律を作るわけです。この法律ができたおかげで、実際「やれ」ということではなくて、法律ができたおかげで一気にそれが進み始めている。

 (資料22) ですが、たくさん用意していながらほんのわずかな資料しか紹介しませんが、例えばイギリスは、受託者に情報開示義務という法律を施行します。それを受けてフランスが同じような法律を制定する。オーストラリア、これはタン委員に先ほどお願いしたのですが、もう既に帰られるというので、調べてきてほしいと。金融サービス改革法云々。つまり、法律でコンプライアンスとか企業倫理の取組みを評価するような仕組みを政府が作ってあげる。実はEUとしてはその方が自分たちが目指している社会を作っていく上で非常に便利なわけです。

何を言いたいのかと言いますと、ここでコンプライアンスの体制を企業さんに作ってもらいましょうという話をしているわけですが、それと同時に、外側からの枠組みを作ってあげるということ。これは特に日本がどういう社会を作っていくのか、我々はどういう社会を作っていくのか。単にヨーロッパでCSRが言われているので日本もやらなきゃねというのはある意味でおかしいということです。今さらチームワークの大切さを教えているかどうかということで企業を評価してあげるというのは、日本の場合はチームワークが良すぎるぐらいですから、そっくりそのまま向こうで求められるCSRを持ってくるのではなく、もし、ここでこういう形でコンプライアンスの大切さを皆様方が強調されるというのであれば、日本として法律の枠組みを用意し、そういった倫理やコンプライアンスへの取組みを評価していく必要があるのではないかと申し上げたいわけです。

 3)規格化・ISO化に基づく支援方式ですが、ここにも経済産業省の方がいらっしゃると思いますが、午前中、基準の担当の方とお話ししましたが、ISOのレベルでCOPOLCOですが、CSRのマネジメント・システム規格を作ろうという動きがある。それと同時に,最初にも申し上げましたが、EOAがアメリカ発、アメリカを中心にそういった規格を作ろうという動きを起こしている。つまり、ISOという形で競争力に変えていこうという動きがありますよということです。

 4ページにまいりまして、4)情報発信に基づく支援方式 これはどういうことかと言いますと、ある特定の機関が企業にいろいろな賞を与えていく。例えばCEPというところであれば「企業良心賞」というのを出す。あるいは日本のフィランソロフィー協会も賞を出しております。こういう形でCSRとか、企業倫理について、あるいはコンプライアンスについての賞というのはまだないのですが、そういった賞を出していくというのもこれから考えていいことではないか。特にNGOとかNPOが中心になってこういう動きを起こせばおもしろいのではないかなというふうにも思っております。

 以上でございます。

〔 松本委員長 〕 どうもありがとうございました。

 膨大な資料をご提供いただきながら、非常に短い時間しかご報告していただけませんで、誠に申し訳ありません。

 今、お2人の委員から、それぞれ考えておられるモデル、枠組みのようなものをご提示いただいたわけですが、お2人のご報告につきまして、これから皆様からご質問やご意見を承りたいと思います。

〔 滝川委員 〕 田中先生と高 先生の今のご意見を伺ってまして、私なりに理解しやすいように整理してみて、倫理綱領あるいはコンプライアンス・プログラムは2つのアプローチに分けられるのではないかと考えたのです。1つは、倫理綱領あるいはコンプライアンス・プログラムを作ることは、企業が社会に対して当然果たさなければいけない責任だというふうに、政府、役所が迫っていくやり方です。

 もう一つは、コンプライアンス・プログラムあるいは倫理綱領を守ることが長期的には企業の経営目的に沿っているのだ、だから、それをやることが企業の利益になるのだというふうに、いわば啓蒙していくやり方です。この2つがあるのではないかと思います。

 両方のやり方が必要だと思うのです。最初の、政府の方から社会的責任として迫っていくということの典型はアメリカの連邦量刑ガイドラインです。これでみると社会的責任、特に刑法犯的な犯罪をやらないように、刑法的犯罪はアメリカの場合特にホワイトカラー・クライムと言われるものもありますが、独占禁止法が大きいです。反トラスト法がそうですね。これでちゃんと防止プログラムを作っているものは量刑が少ないということであれば、当然、自分の利益のためにやります。

 金融規制でもそういう方向があると思うのです。あまり細かくやっていると行政が大変ですから、企業がモデルを作っていると監督を軽くしてやる。あるいは自己資本基準なども緩くしてやるとか、こういう方向が出てきています。公取のお話も出ましたが、公取もそういう方向を考えているようです。連邦量刑ガイドラインのような方向です。今、課徴金の制度設計が必要になりますのでどうなるかわからないですが。こういういろいろな方向で政府が迫っていくと当然企業はやらなければいけない。

 もう一つの、それを守ることが企業にとって利益になるというときに、田中先生がおっしゃったジョンソン&ジョンソンが1つモデルになると思うのですが、これはアメリカのよくあるパターンだと思いますが、会社の企業目的がこうだと打ち出した上で、その中に位置づけて「倫理綱領を守ることがだから必要なのですよ」ともっていく。例えばジョンソン&ジョンソンだったら消費者主権です。このアプローチでないといけないと思うのです。

 ステークホルダーという考え方でやりますと、消費者がステークホルダーの1つに埋もれてしまっているのでちょっと問題ではないかと思うのです。今はむしろこういうステークホルダーがいっぱいある中に消費者と株主、投資家があるのではなくて、企業の長期目的は株主利益の最大化だと。そのためにはまず消費者、消費者というのは顧客ですから、顧客に長期的に気に入られなければいけない。そういう視点が必要だと思うのです。その中で倫理綱領を守ることが長期的に株主利益を高めることに役立つ、だから従業員はそれに従ってやることが会社の利益になる。そうやると十分モチベーションが出てきます。 そうではなくてただ倫理綱領だけ独立してありますと、特にこういうふうに不景気になってきますと、コストはもうかけられない、そんなことはやってられないということになります。会社全体の綱領、目的規定の中に消費者重視、利益、それと倫理を守ることは長期的には消費者に気に入られますし、従業員のモラルを高めます。そういうふうに位置づけていくことが必要ではないかと思います。

〔 鍋嶋委員 〕 今の委員のご説明に私は基本的に大賛成です。2方法あるというのはそのとおりで、企業の自主性を待つというのが本当は大事なのかもしれませんが、実際にはなかなかそこだけではいきませんで、政府あるいはこういう委員会のいろいろな提言があるというところで、やはり企業側も本格的に取り組むという姿勢になるのだろうと思うのです。

 それから、実際に企業倫理を実践しますと、先ほど高 委員のご説明にもありましたが、やってみますと、実際は行動基準がないとなかなか教育・研修が行き届かないのです。行動基準があって初めてそれを手がかりにして、そこから細かいことが教えられるということになって、単純な経営理念だけではできない。したがって、今、委員からご説明がありましたようなジョンソン&ジョンソンの場合も相当アワ・クレドーだけでなく、アワ・クレドー・チャレンジ・ミーティングとかサーベイをやって、そういうのを手がかりにしてずっと職員に浸透している。そしてお客様の信頼、社会の信頼を得ているというのが実情で、私も、これは両サイドから進行すべきものだと思っております。

〔 松本委員長 〕 高 委員、何かございますか。

〔 高 委員 〕 ジョンソン&ジョンソンの場合は本当に成功した例だと思うのです。他に、そんなに表に出てこなくてもまじめにやっている会社さんもあると思います。ですから、マーケットで評価されれば一番いいのですが、私は、すべて評価されるとは思っていません。

 例えば雪印さんの事件がある前に、参天製薬さんの異物混入の事件がありましたが、あのときに、私もバカみたいなことをやりまして、メールを出して、「参天さんの目薬を買いませんか」というチェーンメールでも起こればいいなと。倫理をやっているので本当はそんなことを期待してはいけないのですが、チェーンメールでも起こって1つ運動が起こればいいな、消費者団体もそういうことを支援するような運動を起せばいいなと思ったのですが、何も起こらなかった。

 ですから、マーケットだけに任せるというのは確かに筋かもしれませんが、マーケットというのはやはり教育していかなければ変わらないと思うのです。

 ですから、「こういった取組みを評価していきます」という政府のスタンスを示すというのは非常に大きなインパクトがあると思うのです。また、皆さん方も、そういう会社を応援したいと思っている人も多いと思うのです。

 そういう仕組みが具体的にできてくれば、おっしゃるようにジョンソン&ジョンソンのような会社、「俺もそういう会社になって、それでマーケットで評価されたい」というふうに動き始める会社が増えれば大成功だと思います。

 ですから、ただ「マーケットに任せる」じゃなくて、何かアクションを起こしてもらえるとありがたいと思います。

〔 南条委員 〕 途中で退席させていただきますので、意見という感じで発言させていただきます。

 先ほどのご意見と関係するのですが、先ほどのお2人の委員のご報告、具体的にどういうものか僕はイメージがなかなかつかめないのです。

 というのは、はっきりいって企業の性格によっても全然違うので、それもおっしゃっておられましたが、外側に消費者を置くというイメージはちょっとあれかなという感じがあります。末端の商品を作っていて、直接それを消費者に売る場合なんていうのは、まさに消費者がいなければ成り立たないわけで、そうしたら一番根幹の企業の倫理綱領の中にそれが入ってこなければいけない。松下電器などの場合はまさにそうで、ちゃんとそういうものが入っているわけです。

 私は通商産業省の「消費者優良企業選定会議」というのに入っていて、毎年、そこで優良表彰をしているのですが、そこで何をチェックしているかというと、消費者をちゃんと見ているかという話と、消費者との関係で環境の問題についてきちっと取り組んでいるか。それをチェックするチェックポイントとしては、要するに上から下までちゃんと哲学、倫理としてそれがはまっていて、それがきっちり書かれたものがあって徹底しているかどうか。それから毎年、年の初めに社長がきっちり演説なり何をするときにきちっとやるとか、そういうものを含めて徹底しているかということです。

 そういう消費者志向と環境問題の両方についてきちんとした責任体制が具体的に、誰がそれに責任を持っていて、どういうふうにそれが下まで及ぶか、社長を含めた役員会にその関係の情報がきちっと上がっているかとか、制度的なものとか実際的な運用を全部チェックしているのです。そういうのをやっていって「OK」となった場合に表彰するということをやっていく中で、企業は自然に「ああ、こういうのをやっていかなければ表彰されないな」と。表彰されれば、「こういうふうにやっています」ということでそれがセールスポイントになるしモチベーションにもなるということで、今のお話の非常に一部かもしれないけれども、そういうことをやっているのです。

 ですから、そういうアプローチからすると僕なんかは何となくわかりやすいのです。「あ、そういうものを作っていけばいいのか」と。こういう理念は企業によっても違うし、企業が直接よって立つ基盤によっても違うわけだからいろいろなバリエーションがあるけれども、そこにポイントとして哲学なり理念がある。それは隠すようなものではなくて公表していくもので、内輪のマニュアルというのは確かに内輪のマニュアルとして表に出してはまずいのもあるし、それは企業のバリエーションでいろいろあるけれども、そういうことで組み立てていくものではないか。

 確かに、2つのアプローチもそうだと思うので、そういう環境を作って、それの方がメリットがあると思わせることは基本的に大事ですが、法整備が本当に必要ならば、そういうものもある程度やっていけばいいけれども、基本的には資本主義であるのだからあまりお役所とか法律でギシギシ無理してやるということでないように、市場原理でそういう方向に。理想論かもしれないけれども、やっていけるようなもの。

 だから、はっきり言えば、できるだけおだててやらせるという感じのものを、今でもバラバラにあるわけですから、それを全部一元化することはないわけですが、そういうものがうまく有効に働くような全体的なものを作っていくという。既にあるものをうまくつなぎ合わせていくという手もあるのではないかと思いました。

〔 池田委員 〕 2つあります。1つは私個人の実感としてもそうですし、今日のお2人の委員のお話を聞いてもそうなのですが、企業倫理、コンプライアンスという点は、まさに不易と流行といいますか、基本的に変わらないものと時代の変化によって変わるものと2つの側面があるのではないか。なおかつ、その中で最近のグローバリゼーションの中で経営環境が急変している。コンプライアンス、企業倫理というところもいろいろな見方、考え方、価値観が今どんどん変化している。そういう実感を持っているわけです。

 したがって、この委員会も、これから1年ないし1年半ということで言うならば、まさに現在だけではなくて1年後あるいは1年半後を視野に入れた検討になるのではないかと思っているわけですが、その前提として、この何年かを含めて、高 委員、田中委員のお2人に質問なのですが、企業倫理、コンプライアンスの点で急速に変化している大きな特徴として、先ほども一部触れてはいただいたのですが、お感じいただいているところがあればお教えいただきたいというのが1つであります。

 2つ目は意見であります。まさに先ほど高 委員がお話しのように、大きく言えば、これからの社会はどういう社会を作っていくのかというイメージを持って、環境の変化、急速に変化するものを読んでいくといいますか、そのあたりが大事だと思っております。

 この大きく変わっていると思われる企業倫理、コンプライアンスのところについて、特に顕著な特徴として高 委員、田中委員が感じておられるところを教えていただければありがたいと思います。

〔 田中委員 〕 私は今の環境変化というのは、池田委員がおっしゃるとおり、一番大きな環境変化はやはりグローバル化の進展だと思っております。これが進展した分だけ、例えば検査を見ても事前検査から事後検査へ、なるべくマーケットに依存したルール重視という形になっております。これが大きなきっかけかと思います。

 2点目、我々はついつい忘れてしまうのですが、日本が成熟社会になっていて、先進諸国の相当上の方のグループになっている。発展途上国とはかなり違ってきている。そうすると、企業行動そのものが全部内外の社会から批判にさらされて、先進諸国共通のルールに沿っているかというふうに見られてしまうというところだと思うのです。

 次は環境の問題なのです。環境というところが、環境だけをきちっと守るということはやりにくくて、企業行動の中でそれを守っていく、それもより一層厳しい社会の批判を受けております。特に企業が地域社会に支えられて事業行動をするとなると、地域社会と同じような問題意識を持ってきちっと対応しなければいけない。従来の姿勢ではだめだ。そこにいわゆる単に法令を重視するだけではなくて、それを上回る社会的な規範、社会常識に悖(もと)ることのないような行動をとることが求められている。

 最近では、皆さんご承知のIT革命その他どんどん浸透している。そうすると、ITの方の変化が法律の範囲をどんどん超えて動いていってしまう。何か起こると基本的人権が守られているかとか、あるいは生活者主権は守られているかということで、原点に必ず戻ります。そういうところを見てみると、いずれ今の大きな変化も大きな地殻変動で、それがみんなコンプライアンスとか企業倫理を企業に求めるような方向に加速されていると私は理解しております。

〔 高 委員 〕 池田委員の質問に答える前に、南条委員はもう退席されたのですが、先ほどちょっと誤解があったので先に訂正させてもらいたいと思います。

 私の先ほどのピラミッドの図で「消費者向けの方針等」というのを外側に云々と言ったのは、それがあまり重要でないという意味ではなくて、ちょうど金融機関さんが預金者の方々に向かって勧誘方針というのを公にするのと同じで、「こういう方針でやりますよ」という意味で、つまり、重要だという意味で、この方針を外向けに作って公表したらどうでしょうかということです。

 そして会社の中の取組みというのは、公表したことを、宣言したことを担保するためにこういう取組みをやりませんかという話でございます。その意味で、方針をピラミッドの外に置くというのは、あまりウエイトが大きくないということではないのです。

 池田委員の指摘ですが、何が大きく変わっているのかということですが、私の個人的な印象ですが、やはりエッセンスはディスクロージャーかなという気がするのです。とにかく見えるような形にしていく。

 人間というのは、私もそうですが、見えなければついつい悪いことをやってしまいます。目の前に1万円があって、誰も見ていなければ私も、それをポケットに入れるかもしれません。要は目に見える形にしていけば個人も企業もきちんとした経営を行うだろう、誠実な経営になるだろう。そういう意味でとにかくディスクロージャーが進んでいくと思います。

 先ほどSRIの話をしましたが、これもいわゆるディスクロージャーを進めるためのマーケットからの動きです。マーケットが評価して「ここの会社はこういう取組みをしている」と。

 それから、先ほどイギリスの例を挙げましたが、あれも法律の中身を言うと、例えば投資をするときに、どこに投資をするかを決めるわけですが、そのときに倫理的な側面あるいは環境的な側面、あるいは社会的な側面、こういう点も考慮に入れて投資している場合には、その事実を公表してください。「そういうふうに投資しなさい」ということではなくて公表義務を課すのです。そうした法律がイギリスで施行され、さらに類似の変化がヨーロッパで起こっているのです。

 例えば、フランスですが、「公的年金準備基金」という公的年金がスタートしました。その運用に関してもSRI的な視点で企業を評価し、投資する場合にはこれを公表しなさいという法律ができたのです。

 何が起こるかといいますと、企業側もそれに対応して自分たちが取り組んでいる内容を公にし始める。そして、お互いに見える形を作れば、非常にフェアな社会になっていく。

 日本の社会であれば「いつもおてんとさんが見ていると思って行動しなさい」と言えば悪いことはしませんよね。それと同じで、情報公開を進めていくのがフェアな社会を作っていく上での大前提になるだろうし、そういう方向で同じような動きが起ってくると思います。

 ちょうどアメリカでGRIという報告書のガイドラインが出ましたが、環境と社会と経済、この3つのパフォーマンスについて統一ガイドラインの仕組みができてきた。それを使いませんかという呼びかけ。フランスはそれを受けて3Pレポートというのを2002年からスタートします。3PというのはProfit、People、Planet、いわゆる社会と利益と環境について強制的に情報を公表させるというわけです。

 イギリスは強制はしませんが、主体的に公表したければやってくださいということで、環境大臣が言うわけですが、これがある意味では脅しになっているわけです。

 流れとしては、とにかくやっていることはもう内々にしまうのではなくて、やっていればどんどん公表していきませんかというのがこれからの流れだ。それをマ?ケットが評価するという時代になっていくのではないかという印象を持っています。

〔 澤藤委員 〕 大変興味深いお話を聞かせていただいたのですが、まだよくのみこめませんで、高 委員にお伺いします。これまでの私の理解ですと、企業の社会的責任というものは、コストとしての負担であって競争力を減殺する方向に働く。ですから、企業の利潤追求と社会的責任の全うということとは矛盾せざるを得ず、倫理という問題のレベルではどうも解決しないのではないか。何らかの外的強制が必要ではないかと、こういう印象が抜けがたいわけです。

 特に私は、消費者被害と言われるような訴訟に携わって、そういう目で企業を見ることが多いわけですが、倫理のレベルで立派な綱領を作って企業がみんな守るだろうか。また、守るような企業が市場で勝ち抜けるのだろうか。つまり、競争力と企業倫理とが幸福な結婚をするとは思えないわけです。

 先ほどの高 委員のお話ですと、ヨーロッパでもかなりの国で、むしろ強制的に社会的責任を守らせるような法律を作っているというお話がありました。つまり、何が社会の目標であって、企業はかくあるべしということが先にあって、それをある程度強制力で守らせるということがないと、企業の社会的責任を果たすということにはなかなかならないのではないか。その辺の議論が納得できませんと、絵空事というかきれいごとで終ってしまうのではないかという感じがいたしまして、大変ベーシックなことですが、この点のお考えをお聞かせいただければありがたいと思います。

〔 松本委員長 〕 私からも、今のご発言に付け加えて、高 委員が、ヨーロッパでは競争力の強化という観点からCSRが重視されているということをおっしゃいましたが、その中ではコヒージョン、ヨーロッパとしては社会的な統合といいますか、そこを重視だとおっしゃった。そうなると、ヨーロッパ全体の競争力、対アメリカというのを考えているのか。それとも今のご質問との関係では、個々の事業者がコンプライアンスを重視すれば、個々の事業者の競争力がつくぞというような観点から競争力強化と言っているのか、どちらなのでしょうかというのを、少し付け加えてお答え願いたいと思います。

〔 高 委員 〕 ヨーロッパ全体としてソーシャル・コヒージョンというのを強調していると思うのです。ですから、ヨーロッパがアメリカ、極東、日本とかですね、そちらと対抗していくためにはこれは欠かせない。政府だけではとても手に負えないので企業さんにも手伝ってもらいたい。ただ、手伝ってくれと言っても、先ほどからおっしゃっておられますように、それをやって単なるコスト高になって競争力が低下するというのではやっていけないという意味で、こういう取組みをやるところに関しては情報開示を促すよう法律を作るわけです。

 先ほど、強制的にやらせる方向にある、ヨーロッパはそういう方向にあるというふうに解釈されたようですが、そうではないのです。強制的にやらせるのではなくて、強制的に情報開示義務を課すだけなのです。例えば「あなたは、例えば保険等の機関投資家が投資先を選ぶときに、SRI的な視点を入れながら選んでますか。選んでいるとすれば、その視点について公表してください」。ですから、全然義務は課していないのです。

 ところが、そういう法律ができれば、積極的に機関投資家とか、年金運用基金などがそういう動きを示すわけです。それがある意味で、若干でしょうが、一気にということではないでしょうが、競争力につながっていく。

 実は、これは朝日新聞さんに紹介していただいた調査結果なのですが、去年の暮れに10の大学で2,400人ぐらいから回答をもらったのです。大学生に対する意識調査です。最初の質問は当たり前のことですが、「誠実な会社と、ふまじめな会社、嘘をつくような会社のどちらからモノを買いたいですか、サービスを受けたいですか」と聞きますと、98%の学生が当然「まじめな会社からモノを買いたい」と答えます。これは当然ですね。

 これは学生の印象ですが、「それではどちらが儲かっていると思いますか」と聞きますと、70%の学生が「でたらめの嘘をつく会社が儲かっている」と(笑)。これは事実かどうかわかりませんが、さらに学生たちに「それでは、あなたたちは,こんな社会でこれからも生きていきたいか」と聞きますと、みんな「いやだ」と言います。

 それでは、何がそこで連動しないのか。もし、みんながまじめな会社から買いたいと思っているのであれば、マーケットがきちんと働くのであるならば、そういった会社が勝てるはずなのです。ところが実際にはそれが起こらない。

 その一番の理由は「一体、どこの会社がまじめなのか、マーケットではわからない」ということです。そういう意味で情報開示を促すような取組みとワンセットにしながらコンプライアンスの取組みを求めていくことが大切ではないかと思うのです。

 お答えになりましたか。

〔 坂東委員 〕 先ほど来、企業のモチベーションとして、価値だとか情報開示を通して評価をする。その評価が結局決定的な意味を持つような形で動いていけば、市場が答えを出していくのだということですよね。それについては大変参考になりましたし勉強になりました。さて、先ほど、高 委員もNGOやNPOも評価するとおっしゃっていたわけですが、私たちの社会でそれができるだけの制度的な枠組みであるとか、あるいは客観的な状況があるかということを考えますと、なかなか簡単ではないなと思うのです。情報が出てくることに加え、いわゆるNGOを構成するであろう消費者に一定の権限がもう少し法によって付与されることというのが制度的に必要ではないかという気が私はしております。これが1点です。

 もう1点は、高 委員の(資料08)と田中委員のステークホルダーの図を比べてみながら、「あ、なるほど、ステークホルダーの左側の顧客、消費者、行政機関、地域社会というのは外だな」と。それ以外のところは企業から見ると、ひょっとすると取引先も含めて内側の話なのかなと考えたのです。

 とすると、企業の倫理綱領とあるいはそれ以外の、先ほど高 委員が「外に作られるべきである」と言われたような方針の間に、同じステークホルダーに関する規律であっても現われ方や強制の仕方に違いが出てくるのかなというふうにも思いました。

 その上でですが、今の法律は、例の規制法型から民事ルール型へと大きく変化しています。民事ルール型ということになりますと、やはり事業者の方も民事ルールを自分の経営方針の中にどう生かしていただくかという部分は、やはり抜けがたい課題として私の中にはあるわけです。

 問題は、そうしたらそれをどこで、この図の中で実現していくか。基本的には基本の倫理綱領の枠組みの中でそれに触れていただく。そして、消費者に情報の開示がされなければ、それがどう守られているかの評価もできませんから、したがって、何とか外に出る形の方針としてそれをより具体化していただきたいと、個人的には強く思うのです。

 改めて考えますと、なるほど法的経営というのはいままでも対応されてきただろうし、ちゃんとやってこられただろうと思います。しかし、一方で民事ルールまでちゃんと遵守した経営を大企業の方も含めてやってこられているかというと、率直に申し上げれば大変疑問を持っております。例えば民法では、未成年者取消権というのは親の承諾を前提として契約をすることを求めているのですが、それが大企業の取引も含めてちゃんと実現できているかというと必ずしもそうではない。

 とすると、どうもそこで言われている法の遵守というのは、行政法規であったり、刑事法規であったりするならば、今の大きな法律のトレンドとの関係でいくと十分ではないのではないだろうかというのがとても気になっておりまして、それをこの中にどう位置づけるかというのが、私には大変な問題関心なのであります。

〔 川本委員 〕 2,3の点について発言させていただきたいのですが、1つはどうやってインセンティブを与えるかということで、競争的なルールと、市場のインセンティブと両方あるということですが、その両方をどうバランスしていくかということだと思います。前に、ある雑誌を読んでいたら、アメリカのNGOでカウンシル・オン・エコノミック・プライオリティーズですか、昔からいろいろな活動をしていて、特に企業の活動をいくつかの分野で評点をつけて、それを総合してレーティングをしている。情報公開しているかとか、地球環境に配慮しているかとか、マイノリティーの権利を尊重しているかとか、雇用について男女の機会均等が果たされているかとか、セクハラ防止とか、家族を大切にしているかとか、社会的な貢献の一環として寄付を十分配慮しているかとか、いろいろな分野に分けて評点をしている。それを公表してマスコミ等を通じて報道されて、消費者が製品や企業を選ぶ判断の参考になっているという。NPOとかNGOとかいろいろな分野でそういう活動が出てくれば、企業の自主基準みたいなものをしっかり作って、それが守られているかどうかとか、いろいろなこともレーティングに入ってくるのだろうと思うのです。

 それと、もっとマーケットに近いところでは、ムーディーズとかいろいろな格付機関も、今や単なる売上げの伸びとか将来の期待収益とかそういうことだけではなくて、社会的な貢献度なども入れて判断しているということになってきてますから、そういう意味ではマーケットでもある程度そういう方向にはあると思うのです。

 ただ、それだけで本当にインセンティブがわくのかというと、必ずしもそうではない面もたくさんあると思うので、やはり何らかの強制的なルールというかそういうものが必要なところもあろうかと思うのです。だから、そういう意味ではイギリスとかアメリカとかのいろいろな制度、そのままはあてはまらないにしても、日本でも、ただマーケットに任せておくだけでは、とうていなかなかうまくいかないところがあるのではないかと思うのです。

 第2点としては、具体的な自主基準の中身の中で消費者志向ということが1つあるわけですが、それは顧客として、あるいは社会の構成員の一員としてという2つの側面があるのだと思うのですが、顧客としてという意味では、会社によって消費財を作っている会社か生産財、中間財を作っている会社とかいろいろ違うと思いますが、特に消費財を作って販売しているような会社であれば、倫理綱領の中に別にこういうのがあるから、それを守りましょうということだけではなくて、そのエッセンスが非常に短い、全体の倫理綱領の総論というか、そういうところでもしっかり位置づけられている必要があるのではないかと思うのです。特に販売方針などについてかなりきっちりしたものを作って、それを研修等も含めて従業員の方にしっかり守ってもらって、販売してもらう。そこのところをきっちりする必要が特にあるのではないかと思います。

 第3点は、ちょっと質問になるのですが、高 委員のSRIのところで、アメリカの資産残高が1兆1,850億ドルですか、ドルだから、1997年でも巨額です。これは何を意味しているのかよくわからなかったのですが、雇用や何かも含めた投資、相当広くカウントしているのかこの辺の数字の意味をちょっと教えていただけたらと思います。

〔 高 委員 〕 アメリカの社会投資フォーラムというところが発表している数字で、かなり大きく概念を広げて数字を組み込んでいます。ですから、いわゆる投資信託とかの数字だけではなくて年金の運用とか、あるいは日本で言えば信用組合みたいなものも入るのでしょうかね。要するに地域に対して積極的に投資をするというようなものも入りますから、そういったものも全部含めていますので、金額的にはかなり大きくなって出てきています。

 それから、川本委員と坂東委員が指摘されたことにかかってくると思うのですが、私が方針を外側にどうこうというのは、実は方針をこうやって表に出して消費者に示すことで、民事ルールの遵守が徹底されるという意味で外に出しませんかと言ったのです。つまり、「これをお客様にお約束します」と。明確にする。綱領の中に例えば数行書いてやったところで、「そこに書いてあるじゃないか」と言っても非常に抽象的で消費者の方には何の手段にもならないと思うのです。そういう意味で外に出した方がよろしいのではないでしょうかというふうに申し上げたのです。

〔 宮部委員 〕 私は、経団連の中で、PL法、消費者契約法をやってきた関係で、今回、この委員会の委員を仰せつかっているのですが、私もどうも今ひとつピンとこないのです。

なぜかと言うと、最終的にこのコンプライアンスの問題について、実効性が上がっているかどうかについてどういう形でどう評価したらいいのかという、実効性の問題がまだ定かでないわけです。

 今、企業の資金調達の観点からは、格付機関による企業格付けの問題があり、先ほども高先生がおっしゃったように、格付機関が企業を評価するにあたっての項目がどんどん増えているわけです。コンプライアンスに近いところまで入ってきている。

 ISOも、我々企業にとっては、お取引先との関係で非常に実効があるし、ISOの方も規格化の範囲を消費者の苦情対応や企業の社会的責任、行動規範にまで広げてきている。

 その次にあるのは、これは民間が勝手におやりになっていると思うのですが、実効が上がっているという意味では、ホテルとか料理屋さんの星印があるわけです。これも実効がある程度上がっているのだと思うのです。各国に行って四つ星、五つ星のホテルに止まれば絶対安全だという意識を我々は持っているわけです。

 それから、先ほども高先生からご紹介があったように、いろいろなことで企業の表彰をしています。

この程度の実効性の確保策で十分なのかどうか、実現可能性とメリットの大小といいますか、そういった観点から考えたら、今度のコンプライアンスの位置づけというのは、消費者対応の向上のための実効という点では、やはり一番弱いところにあるという気がしないでもないのです。

 また、今日ここで議論されている問題というのは、私もいろいろな会社さんと付き合っているのですが、「優良企業で大規模な企業がどういうふうにされているかというような問題だ」と私は受け止めてしまうわけです。中小でも行動規範をお作りになっているところはたくさんございます。ただ、今、例えばベンチャービジネスの方々とお話をすると、企業倫理やコンプライアンスといったようなことは全く考えていない。とにかく「どうやってこの新しい俺のアイディアを世の中に売るか」ということしか考えていない。今、国全体の景気を考えると、雇用を確保するために、そういう人たちにどんどん大きくなってほしいわけです。そういうところには、今日ここで議論されている問題はおそらく全く関係ないのかなと思います。

 それから、現在、既存のビジネスもどんどん変わろうとしているわけです。従来型の発想から言うと、「その新しい発想というのはやや問題があるよ」というところもなきにしもあらずなのです。そういったものを、それでも雇用を増し、お客さんがOKと言えばいいのか、あるいは、古いやり方の方が本当は変わっていかなければいけないのかというようなことで、今日のお話を聞いていて、非常に悩んでいるわけです。その辺、どなたからでもよろしいですがご回答をいただきたいと思います。

 もう一つは、国民生活局の方にお聞きしたいのは、一番最初に堀田課長からご説明のあった国民生活モニターの「調査対象」が2,300人、「回答」が 2,242名で、これは非常に回答率が高いなと思いましたら、調査対象は、男性が219名で、女性が 2,023名とあります。おそらく女性の方がほとんど答えて男性の方はあまり答えてないのかなと思います。「このバランスでの調査の結果を根拠として、いろいろなことが本当に言えますか」ということについて、ちょっとお聞きしたいと思います。

〔 堀田消費者企画課長 〕 最初に詳しくご説明しなかったので申し訳ないのですが、これは生活モニターということで、特に一般の人から選んだのではなくて、生活局がふだんから依頼しておりますモニターに対するアンケート調査ということになっております。対象が女性に偏っているということも事実でございます。

〔 宮部委員 〕 高齢者に偏っているんですね。

〔 堀田消費者企画課長 〕 30代、40代というところが多くなっています。

〔 松本委員長 〕 それでは、お二人の委員にお答えいただきましょう。

〔 田中委員 〕 なかなか難しいご質問なのです。私、最近、企業から頼まれてよく講演しているのですが、皆さんの想像以上に企業側の姿勢は変わっております。役員が中心になって勉強会を開いて、どういうふうにするかと討議しております。それは大企業も中小企業もそういう問題意識です。先週、中小企業大学校に呼ばれて経営者の講演に行きましたが、テーマは「企業経営と倫理」です。中小企業の方も一生懸命それをやっているのです。

 なぜかと言いますと、社会の信頼を得るというところをみると、やはり立ち振る舞いがちゃんとしてないと地元からもなかなか信頼が得られないと言うのです。立ち振る舞いは法令遵守は当然で、周囲がそれ以上のものを求めているわけです。だから、それなりのことをしなければいけない。

 そうすると、よく言われるように健全な内部管理をちゃんとしていないと、業績も伸びないと同じように、コンプライアンスというのはむしろブレーキや何かではなくて、仕事と表裏一体になって業務を支えるような形でコンプライアンスがなければいけない。

 それでは、そのために経営者は何をするかというと、メッセージをきちっとして、教育指導をする。教育指導とは何かというと、具体的な行動基準がないと実際はできない。単なる経営理念、哲学的なフィロソフィーだけでは今の若い人はついてこない。だから具体的に示そうではないか、というような流れになっていると思うのです。

 ですから、狙うところは法令遵守には違いありませんが、それをもっと具体化して、その企業独自の色合いをつけてきちっと周知徹底する方がむしろ仕事もやりやすいし、周囲の信頼も得られるという状況に今なっているのではないかと私は受け止めております。

〔 松本委員長 〕 高 委員、実効の確保策について。

〔 高 委員 〕 これは14000でも 9000でも同じだと思うのですが、規模に応じて、あるいは業種等に応じて、その中身はかなり柔軟に考えていいのではないかと思うのです。同じコンプライアンスの取組みでも2,3人しかいない会社であれば、おそらく社長が徹底していればこれで機能すると思うのです。

 大企業中心だというふうに言われましたが、確かにその傾向はあるのですが、例えば、環境のところであればグリーン調達というような考え方もありますし、こういう倫理の取組みでもコンプライアンスの取組みでも大企業は、「おたくと取引をするにあたって、おたくはどういう取組みをしていますか」というような、ちょっと確認されるようになれば全体が変わっていくのかなという期待も持っているわけですが、そうはいかないよというふうに思っておられますね(笑)。

 (資料19) を見ていただきたいのですが、これも省略してしまったのですが、実は昨年、自民党の行政改革推進本部で、規制改革にあたっての議論をやるので参加しないかというので、ボランティアでやらせてもらいました。この表で申し上げたいのは、このマトリックスは全部を網羅しているわけではないのですが、国民の安全というのがいろいろな局面で脅かされているのではないか。例えば生命の安全、健康の安全、財産の安全、右側にずっと書きましたのは、これを分野とか業種といったらいいのでしょうか、こういうものを整理しまして、特に▲のところがかなり深刻だったということなのですが、このマトリックスのところというのは法律とか既に規制とか省令とか大体網羅していると思うのです。新しい法律を作るという議論もあるとは思うのですが。

 共通するものは何かというと、結局、これを具体的に主体的に守っていくような仕組みがない。これはもう皆さん方わかると思うのですが、さらにもう一歩踏み込んで、要は90年代リストラで、「そんな管理部門に人を置けるか、とにかくおまえらみんな営業に回れ」というような形で動いてきたと思うのです。

 ですから、自民党で議論があったのは、そういう取組みそのものが競争力になるように仕組みを考えてやろうではないか。その1つは、これは議論が進まなかったのですが、いわゆる連邦量刑ガイドライン的な考え方です。アメリカの連邦量刑ガイドラインですと、これ97年だったと思いますが、50人以下の会社に連邦量刑ガイドラインを適用したのが96パーセントです。ですから大小は関係ないのです。あれを適用されて、実際に裁判所が判断して機能する仕組みはなかったということになりますと保護観察におかれるのです。強制的に作らなければいけないのです。その会社の規模に応じて機能するコンプライアンスの仕組みを。

 ですから、とにかく規模の大小を考えないでそういう取組みをやることが何らかの形でメリットになるような仕組みを考えてあげるということが政府のやることなのかなと思っているわけです。

 ちなみに、レジュメの2ページの?.のところに書きましたが、これは行政改革大綱で閣議決定された内容です。この文書を使って皆さん方いろいろなことができるのではないかと思うのです。最後の行ですが「企業における自己責任体制を確立し、情報公開等の徹底を図るものとする。」ということで、規制改革とセットでこの提言が出ているわけです。つまり、規制改革をするということは企業さんはもっと自由に行動していいですよ。ただし、行動するに当たって自分自身をコントロールする仕組みを作っていきましょうねと、この提言に出ているわけです。

 今は特殊法人改革なんかでとても手が回らないのでしょうが、こういう大綱の考え方を受ければ、今、ここで議論しているようなことも時代の流れに則しているのではないかと思うのです。

〔 松本委員長 〕 どうもありがとうございました。

 この問題はまた次回に、個別企業の取組みをご報告願う中で再び議論する機会があると思いますから、あと、タン委員にオーストラリアの状況について調査していただきましたので、簡単にご紹介願います。

〔 タン委員 〕 A3の大きな資料です。昨日遅くまで作っていたのでタイトルもなく申し訳ないのですが、オーストラリアのCodeof Conduct 4つについての比較です。それから、別紙???がありまして、それから、前回の資料の中にあったオーストラリアについての2枚の資料です。

 簡単に説明しますと、オーストラリアは、1990年代の前半からFair TradingCode of  Conduct、公正取引を目的としたCode of Conduct をどんどん推進しています。

Code of Conduct の規格のようなものはないのですが、連邦と州政府のガイドラインがあります。前回の資料の中に、そのガイドラインについての簡単な説明がありました。その説明の中にCodeof Conduct を実際に作成することになったらどういう事項を中心にして作成すればよいかというところがありまして、この資料の?の重要事項のところに列挙されています。

 私が作った表はこの項目プラス若干自分が考えた項目を追加した形でちょっと比較してみました。しかし、私の日本語がずいぶんあちらこちら間違っていますのでちょっと読みづらいと思いますが、一応、第一案として皆さんにお配りしたいと思います。

 できたらもう一度、もう少し上手な最終版を皆さんにお配りしたいと思います。

 まず取り上げたのは、General Insurance Code of Practice、これは保険業界、生命保険は入ってませんが、それ以外の、消費者関係の保険の種類が全部入っています。例えば医療保険とか、車の自動車保険、火災保険なども全部入っています。

 2番目はDirect Marketing業界が作ったCode of Conduct です。DirectMarketing   Code of Practice 。

 3番目はACIFという通信業界が作ったコードです。この業界はさまざまな消費者関係のコードを作ってますが、ACIFコードを取り上げてみました。

 4番目はコンシューマー向けではないのですが、製薬会社の業界団体が作ったCodeof Practice、名前は時々Code of Practiceになったり、Code of Conduct になったりしますが。

 それぞれについての「適用範囲」ですが、場合によっては高い、 100%とか90%の参加率があります。

 それから, それぞれについての「対象行為」。

それから「目的」。この目的のところはなるべく各Code of ConductあるいはCode of Practiceの原文を見ながら作ってみました。

 「基本的なルール」もそうです。

 「運用組織」になると、かなり苦労しました。それぞれの特徴がありまして、わかりにくい部分もありますが、とりあえず整理してみました。

 ちょっと私の勝手な記号というか、General Insurance Code of Practiceのところに

TORという省略がありますが、これは英語でTerms of Refemence(解説書)という言葉の省略なのです。この中に、コードの苦情処理制度についての細かいルールが定められています。

 それから、次の項目はそれぞれについての「苦情処理あるいは紛争処理制度」です。

その次は「サンクション」。まずコードの違反者に対してどういうサンクションを加えることができるかということをまとめてみました。

 この中で最後の製薬会社のコードの場合は罰金までできるので、ちょっと珍しいです。 製薬会社のコードは除名も可能です。DirectMarketing Code of Conduct の場合も除名が可能です。一番最後の項目は「認定の可否」、これについては後で説明します。

 次は「周知及び報告責任」。どういうふうにCode of Conduct を宣伝しているのか、あるいは報告責任はどんな形でその責任を果たしているのかということです。

 次は「コンプライアンスのモニターリング」です。例えば、各Code of Conductに参加している会社がどういう社内のモニターリングをやっているのか。 それと、Code of  Conduct を運用している組織もCode of Conduct についてのコンプライアンスとかのモニターリングをどういう形でやっているのかということです。

 次は「レビューと改正」ですが、Code of Conduct を作ってもそのまま放っておいたらよくないので、必ず何年ごとに、改善を目的としたレビューが必要ですね。

 「備考」のところは、それぞれについてもし何か特に注意していただきたいところがあったら、そっちに入れます。

 最後の「認定の可否」ですが、先ほど申し上げたように、除名のサンクションがあるコードの場合は競争法に違反する可能性がありますので、オーストラリアの公取委に当たる「オーストラリア競争・消費委員会」の認定が必要です。それがなければこういう Codeof Conduct はオーストラリアの取引慣行法に違反する可能性が高いです。

 別紙についてですが、これが収集した資料の中からコピーしたものですが、別紙?は保険業界のCodeof Conduct の組織図です。

 別紙?は、通信業界。

 別紙?は、製薬会社の業界団体の組織図です。

 それ以上説明できないと思いますが、ただ、1つだけちょっと注意していただきたいのは、今日はいろいろな倫理についての話がありましたが、オーストラリアではCodeof  Conduct の話になるとエシックス(ethics) という言葉はあまり出てきません。どちらかと言うと、多分、避けていると思います。やはり国によって倫理観が全然違いますし、日本に来てからだんだん「ああ、自分の倫理観はやはりキリスト教からきているな」というのがわかってきたような気がします。

 だから、倫理という話になるとものすごく不愉快になる人が多いです。特にオ?ストラリア人の場合は。だから、こういう顔をしている人間はみんな同じだという先入観があるかもしれないのですが、例えばアメリカ人は私の目から見れば多分オーストラリア人より倫理については熱心に話をする。オーストラリア人に倫理がないわけではないのですが、あまり表に出さないで、ただ、その倫理をどういうふうに具体化するかという話、そちらの方に力を入れると思います。なるべくエシックス(ethics)という言葉は避けて……。 ですから、Code of Conductの場合も、APMA、製薬会社のCodeof Conduct ももともとはCode of ethicsだったのです。1960年代にできたコードですが、オーストラリアの場合は公正な取引を目的とするCodeof Conduct は、なるべくCode of Conduct の中に具体的なものを作ることが望ましいということと、あとは、倫理は言わないかもしれませんが、よくindustrybest practiceという言葉が出てきます。オーストラリアの場合は企業ではなくて業界でこういうCodeof Conduct をやっているのですが、自分たちで作ったルールを自分たちで守るという、そういう話をよくします。

 ベスト・プラクティスを目指すことで、ビジネスチャンスをつかむという話もよく耳にします。資料の中に書いてありましたが、どこかのセミナーのときに、ある企業の方がこういうコンプライアンスとかCodeof Conduct を積極的にやることによって売上げが8%上がったと話していました。ですから、そういう具体的な形でよくこういう問題を話します。

〔 松本委員長 〕 最初のお2人の委員のご報告は、個別事業者による倫理綱領の話だったわけですが、今のタン委員の話は業界団体によるCodeof Conduct ですね。

 そうすると、オーストラリアでは、各個別企業が、例えば高 委員の(資料08)で示されているような販売勧誘方針だとか、苦情対応方針だとか、製品安全方針だとか、こういったものを作って「お客様に対して我が社はこのような方針でやります」ということを対外的に約束するという形のコンプライアンスというのは行われているのか。それは業界団体のCodeof Conduct を引用する形で行うのでしょうか。個別事業者のものと業界団体のものの関係はどのようになっているでしょうか。

〔 タン委員 〕 業界団体が大きな骨組みを決めて、それを各会社が具体的に考えないといけないということになっていると思います。しかし、Codeof Conduct は骨組みというふうにいってもかなり細かいルールが定められています。

〔 松本委員長 〕 今のタン委員のご報告は簡単すぎてちょっと質問しにくいところもあるかもしれませんが、何か特にこの点を確認しておきたいということがありましたら。〔 滝川委員 〕 この話は独禁法における公正競争規約と似ている。そこで、その点に危険があるのでその辺注意しなければいけない。アメリカの連邦取引委員会は昔こういうやり方をよく使っていたのですが、今、ほとんどやっていません。どうしてかと言うと、これは業界カルテルになるおそれがあるのです。

 日本の公取は公正取引規約ということでこういうようなやり方をやっているのですが、やはり今言ったように危険を承知していますので、公取が厳しくみることになっています。ですから、今、タン委員が言われましたオーストラリアの公正取引委員会が監視しているということですが、監視するだけでいいのかということも考えなければいけないと思うのです。

 これはカルテルになるおそれがありますから、もし、こういうことをやるとすれば、それを十分認識した上で、少なくとも具体的な販売方法には入ってはいけない。結局、そういうことをやりますと今度はベンチャービジネスを排除するのに使われてしまいますので、私は、こういうアプローチ自体に疑問を持っています。もし、こういう方向に行くとしても、誰が見てもこれはやらなければいけないというところに限定しないといけない。

〔 タン委員 〕 ちょっと説明不足で申し訳ないのですが、この資料を読んでいただくとわかると思いますが、必ず外部の参加が各段階で要求されます。だから、日本の公正競争規約に似ているねと言われたら、私、とても反発したくなります(笑)。とっても似てないと、逆に言いたいですね。

 特に最近の通信業界は、多分、外部のすべてのステークホルダーが参加している一番いい例かもしれません。作成の段階、運用の段階で必ず外部の参加が、しかもその比例まで定められている場合が多いです。消費者団体の代表は2名、業界団体の代表は2名などと。だから企業寄りにならないようにものすごく慎重にやっています。

 この4つのコードに関して言えば、とても評価されています。社会からも信頼されているという評価もあるようです。

〔 鍋嶋委員 〕 この場合、業界団体ということですが、質問が入っていないアウトサイダーというか、そういうところはどういう形になっているのですか。

 アウトサイダーの場合はどうしているのか。これは全く関係なくやっているのか、あるいは全く何もないのか。

〔 タン委員 〕 まず保険業界の場合はアウトサイダーはありません、100%参加ですから。Direct marketingの場合は、もし、アウトサイダーがCodeof Conduct に違反をするようなことをした場合、まずCode of Conduct のSecretariatの方から手紙を出すそうです。できればCodeof Conduct に入ってほしいと。そこで解決をする。この間も行って調査してきたのですが、この間の話だと、その場合は大体Codeof Conduct のことを知らなかったから、「それじゃ入ります」ということで解決します。

 しかし、どうしても入りたくないのだったら、場合によってはCode of Conductの運用組織の方から規制当局へ報告が行くことがあるようです。

 ちなみに、通信業界の場合は、アウトサイダーが違反行為をした場合は、規制当局は違反者に対してCodeof Conduct に従うように命令を出すことができるようになっています。あるいは場合によってはCodeof Conduct に入ることを命令することができるようになっているようです。

〔 松本委員長 〕 よろしいでしょうか。

 まだまだ興味のある方が多いと思いますが、オーストラリアの話はどこかでまたもう一度お聞かせ願うようになるかもしれませんので、本日は、若干時間をオーバーしてしまいましたが、このぐらいで討論を終えたいと思います。

 事務局の方から何かご連絡ありますか。

〔 堀田消費者企画課長 〕 次回のご案内でございますが、次回は、本日の議論も踏まえまして、各企業において具体的にどのようにコンプライアンスに対応しているかといった点につきまして、池田委員、稲岡委員、鍋嶋委員のお3方にご報告をいただきたいと思っております。

 日時は11月30日の午前10時からでございます。よろしくお願いいたします。

〔 松本委員長 〕 本日はどうもありがとうございました。これをもちまして閉会といたします。

 以 上