消費者行政の推進について


平成11年12月7日
第32回消費者保護会議


 政府は、昭和43年に制定された消費者保護基本法の理念に沿って、消費者保護会議において、消費者安全の徹底及び消費者取引の適正化等各般の分野における消費者保護のための各種施策を決定し、その推進に努めてきた。こうした中、消費者をめぐる環境は、近年の我が国経済社会の多様化、国際化に伴って急速に変化してきている。 
 現在、政府は、公正かつ自由な経済社会を実現するため、市場メカニズムを積極的に活用するとの観点から広範な分野で規制緩和を推進しており、これに伴って行政の基本が事前規制型から市場ルールに基づいた事後チェック型への転換が求められている。そのため、消費者行政では、規制緩和の進展と合わせ、消費者と事業者の間にある情報力、交渉力の構造的な格差を踏まえた上で、事業者、消費者に自己責任に基づいた行動を求め得るような消費者のためのシステムの構築が重要となっている。
 また、こうしたシステムが十分機能するために、消費者が自ら考え判断し得る能力や積極的に行動し得る能力を高めることが必要である。そのため、消費者がかかる能力を段階的・体系的に培うための消費者教育の体制の整備・充実を図るとともに、学校や社会の現場において消費者教育の実践に対する支援を行うことが重要である。さらに、消費者が適切に判断し行動できるためには、正確かつ多様な情報が提供されることが必要である。そのため、消費者の様々な要求レベルに応じ、適時・適切に対応することを可能とする情報を積極的に提供するなど十分な環境整備を行う必要がある。
 他方、情報通信や科学技術等の発展により消費者を取り巻く環境のグローバル化が急速に進展している。このため、電子商取引に関する消費者トラブルの防止・救済に資する環境整備や遺伝子組換え食品の表示方法及び安全性評価についての基準の策定等の国際的な枠組み作りが進んでおり、消費者行政においても国際的な取組に積極的に参画していくことが重要である。
 政府としては、このような認識に基づいて下記の事項を重点として、別添の「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者行政の推進を図ることとする。



1. 消費者と事業者の間の市場ルールの検討
  [1]  国民生活審議会は、消費者が事業者と締結した契約に係る紛争の公正かつ円滑な解決を図るための新たな民事ルールすなわち「消費者契約法(仮称)」について、同法の制定に向けた具体的内容の検討を行っており、近々とりまとめられる報告の趣旨を踏まえ、同法の法制化に努める。
  [2]  金融取引の公正性・効率性の観点から、金融審議会第一部会において、金融商品の販売・勧誘に関するルール等についての議論を行っており、平成11年7月に公表した「中間整理(第一次)」やそれに対するパブリック・コメント等を踏まえ、一部早期法制化の可能性も含めて、更なる検討を進める。
     
2. 電子商取引上の消費者トラブルの防止・救済の推進
  [1]  電子商取引に関する消費者トラブルが増加していることから、内閣に設置された高度情報通信社会推進本部の「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」(平成10年11月9日決定)を踏まえ、電子商取引におけるトラブルを防止・救済する観点からの環境整備を検討し、所要の対応を図る。
  [2]  平成11年8月に成立した不正アクセス行為を犯罪として処罰する等の措置を定めることを内容とする「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」 (一部を除き平成12年2月13日施行)について広報啓発を行うとともに、その適切な執行を図る。
  [3]  OECD消費者政策委員会において本年中にとりまとめられる予定の「電子商取引に関する消費者保護のためのガイドライン」について、周知徹底を図るなど所要の措置を講じる。
     
3. 多重債務問題及び個人情報保護等の取組
  [1]  近年、多重債務による経済破綻者が急増していることにかんがみ、これまでの清算型の自己破産手続に加え、債務者が生活再建を果たすことを可能にする法的手続である「個人債務者更生手続」(仮称)について検討を行う。
  [2]  多重債務問題に対して適切に対応するため、消費者が自己責任に基づいて行動する意識を育むとともに、事業者の過剰な貸付や違法な取立行為等について、関係法令の厳正な運用や事業者に対する業務の適正な運営の指導を行う。
  [3]  多重債務問題への対応を含めた適正な与信システム確立の観点から、個人信用情報の保護・利用に関し、「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」(大蔵省・金融審議会、通産省・産業構造審議会、割賦販売審議会の下の作業部会)における議論を踏まえ、法的整備を含めた具体的な制度整備の在り方について検討する。
  [4]  内閣に設置された高度情報通信社会推進本部の下に開催された個人情報保護検討部会の中間報告を最大限尊重し、我が国における個人情報保護システムの中核となる基本的な法制の確立に向けた具体的検討を進める。
     
4. 福祉サービス利用の充実
   福祉サービスの提供方法について行政による措置制度から利用者が自らサービスを選択し利用する制度への移行、利用者保護の観点から、福祉サービスの利用を支援する地域福祉権利擁護制度の導入、事業者に対する契約成立に係る説明・書面交付の義務付け、事業者の誇大広告の禁止等を内容とする社会福祉事業法等の改正法案を国会に提出するとともに、同制度の啓発・情報提供を推進する。
     
5. 食品の安全性確保、適正な表示等の推進
  [1]  遺伝子組換え食品の安全性に対する消費者の関心が高まっていることを踏まえ、「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に基づき適切な審査を行うとともに、消費者に対し当該審査資料の公開や遺伝子組換え技術の有用性、安全性、諸外国の状況等に関して国民の正しい理解を促進する観点からの情報提供を推進する。
 さらに、平成11年7月に創設されたコーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会の議長国として、遺伝子組換え食品の国際基準の策定を積極的にリードする。
  [2]  平成11年7月に改正されたJAS法により、一般消費者向けのすべての飲食料品が品質表示基準制度の対象となるとともに、生鮮食料品についての原産地表示や加工食品についての原材料等の表示、遺伝子組換えに関する表示が義務付けられることから、食品表示の適正化を図りつつ、この制度を適切に運用するため、点検指導の拡充、表示機器の整備及び制度の普及啓発等を図る。
 また、同法に基づぎ有機食品の検査認証制度の適切な運営を通じ、その表示の適正化を図る。
  [3]  消費者の健康に対する関心や知識の向上等に対応して、栄養素等を補うことを主な目的としたいわゆる栄養補助食品の流通が急速に拡大していることから、消費者が当該食品を適切に摂取できるよう、名称、定義及び表示のあり方について「いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会」において検討されており、本年度中にとりまとめられる報告を踏まえ、適切に対応する。
     
6. 公正かつ自由な競争の確保
   二重価格表示を始めとして小売業者の価格表示が多様化していること等を踏まえ、不当景品類及び不当表示防止法に基づく不当な価格表示に関する運用基準の見直し・明確化等を行うことにより、適切な価格表示の推進を図る。
     
7. 環境問題への対応
   消費活動における環境を考慮した製品選択の活発化や企業の環境調和型製品の開発・普及を通じた環境負荷の低減に資するため、ISO規格に則ったエコマーク事業の充実・強化を推進するとともに、製品及びサービスのライフサイクル全般における定量的な環境負荷情報を総合的に表示する新たな環境ラベルの導入を推進する。
     
8. 消費者教育・情報提供の推進
  [1]  消費者契約に関するトラブルの現状にかんがみ、消費者契約法(仮称)の検討と並行して、消費者契約上のトラブルに関する問題意識・議論を喚起するとともに、消費者契約被害に係る情報提供体制の充実や消費者契約に関する教育の支援に取り組む。
  [2]  消費者が環境の変化に対応しつつ自己責任に基づいて主体的・合理的に行動できる能力を培うため、電子媒体の効果的活用を含めた消費者教育の推進に対する支援や様々な要求レベルに対して情報通信の特性を活用した情報提供の体制整備を行う。
     
9. 2000年問題への対応
   コンピュータ西暦2000年問題について、金融、エネルギー、情報通信、交通、医療等の影響の大きい重要分野等においては未然防止や危機管理等の対応が進んでいるところであるが、当該問題に係る消費者への影響の防止を図るため適切に対応する。



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