消費者行政の推進について


平成10年12月15日
第31回消費者保護会議


 政府は、昭和43年に制定された消費者保護基本法の理念に沿って、消費者保護会議において、消費者安全の徹底及び消費者取引の適正化等各般の分野における消費者保護のための各種施策を決定し、その推進に努めてきた。
 消費者をめぐる最近の状況を見ると、規制緩和の進展に加え、我が国経済社会のグローバル化、高齢化、情報化及びサービス化の進展等を背景に多様な商品・サービスが出現するに伴い、消費者取引に係るトラブルの大幅な増加、取引自体の複雑化などの問題が生じている。また、消費者安全の分野においては内分泌かく乱物質、表示等の分野においては遺伝子組換え食品等の新たな課題が生じている。
 一方、政府は、現在、市場メカニズムを重視した活力ある経済社会を構築するため、規制緩和等の経済構造改革を積極的に推進しており、消費者政策においては、消費者と事業者が自己責任に基づいて行動できる環境整備を図る必要がある。すなわち、消費者と事業者の間の市場ルールの整備・活用によって、消費者トラブルの防止及び円滑な処理を図ることが重要となっている。また、複雑化する環境の中で消費者が自己責任に基づいた適切な消費行動を実現するためには、必要な情報を入手するとともに、自主的かつ合理的な行動主体としての知識及び判断力を身につける必要があり、新たな時代における消費者教育・啓発及び情報提供の体制整備が不可欠である。
 また、金融システム改革(いわゆる日本版ビッグバン)や電子商取引などの新たな状況の展開を踏まえ、消費者取引の適正化に向けての環境整備を推進する必要がある。
 さらに、環境負荷の少ない消費行動への取組みなど、消費者は望ましい経済社会構造の形成者としての自主的な活動を強めており、政府としてもこうした消費者の活動を支援していく必要がある。
 政府としてはこのような認識に基づいて下記の事項を重点として、別添の「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者行政の推進を図ることとする。




1. 消費者と事業者の間の市場ルールの整備
  [1]  近年、高齢化、グローバル化、サービス化等の急速な進展とともに、市場メカニズムを活用する観点から広範な分野で規制緩和が推進され、行政の基本が事前規制型から事後チェック型への転換が求められる中、市場ルールの整備が重要となっている。
 このため、消費者契約をめぐる紛争の事前防止、あるいは紛争のルールに基づいた円滑な解決に資することを目的として、あらゆる消費者契約に適用される具体的な民事ルール、すなわち消費者契約法(仮称)の法制化について国民生活審議会において検討されており、とりまとめられる報告を踏まえ適切に対応する。
  [2]  一般消費者が供給者側と対等の立場で安心して住宅を建設・取得できるよう、瑕疵保証の充実、性能表示の整備、専門的紛争解決処理体制の充実等を通して、住宅の生産からアフターサービスまで一貫した住宅の質が確保されるような枠組みの構築を図る。
  [3]  金融システム改革に対応した消費者取引のあり方については、「新しい金融の流れに関する懇談会」(金融をめぐる諸問題に関係する省庁等の共同勉強会)で新しい金融法制ルールの枠組の論点を整理したが、今後の取引環境の整備に向け検討を推進する。
  [4]  いわゆる継続的役務取引のトラブルの増加を踏まえ、これらの取引の適正化を図るための方策について検討を推進する。
     
2. 悪質商法への対応
   不正な利殖商法、強引な勧誘等悪質商法の多様化、巧妙化及び被害の潜在化に対応して、積極的な指導・取締りを行うとともに、関係法令の厳正な運用を行う。
     
3. 消費者信用の健全化
  [1]  多重債務者問題への対応を含めた適正な与信システム確立の観点から、個人信用情報の利用と消費者のプライバシー保護の在り方について検討を行った「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」(大蔵省・通産省の共同の懇談会)の報告書を踏まえ、法的措置及び民間の自主ルールによる重層的な制度整備について検討する。
  [2]  消費者に商品や役務の売買代金の支払いに関して販売業者が消費者金融業者等の与信業者を紹介し、金銭消費貸借契約の書面を用いて契約がなされる事例が近年増加していることを踏まえ、このような取引における契約のあり方について検討を推進する。
     
4. 食品の安全性確保・適正な表示の推進
  [1]  多種多様な食品の流通の増加、消費者ニーズの多様化の中で、消費者が自己判断により的確な商品選択が可能となるよう、食品表示の充実を通じた消費者への・清報提供の推進が求められているとともに、JAS(日本農林)規格について国際規格との整合化や規制緩和・民間能力の活用の推進等が求められていることから、食品等の表示・規格制度について、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)の改正を含め所要の見直しを行う。
  [2]  遺伝子組換え技術を応用して製造された食品等について、 「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全は評価指針」に基づき適切な審査を行う。
 また、遺伝子組換え食品の表示については、食品表示問題懇談会(農林水産省の懇談会)における検討の結果を踏まえ、表示ルールを定めるとともにその適正な実施を図る。また、食品衛生調査会表示特別部会(厚生省の部会)における食品衛生法に基づく表示の基準見直しの観点からの検討結果を踏まえ適切な措置を講じる。さらに、遺伝子組換え食品の表示の検討に資するため検証技術の実証・検討を行う。
  [3]  有機食品の表示の適正化を図るため、明確な基準に基づく国内統一的な有機食品の検査認証制度の構築を図る。
  [4]  食品の安全性を確保するために、食品中の内分泌かく乱物質の簡便で迅速な検出手法の開発や食品からの除去技術等の開発、モニタリング体制の整備を行う。また、食物アレルギーについては、アレルギー原因物質の特定やそれらを除去した食品の開発等を行う。
  [5]  食中毒対策を推進するため、「大量調理施設衛生管理指針」に基づく集団調理施設に対する監視・指導の強化等の発生予防対策、「食中毒調査指針」による迅速・確実な指導等の原因究明対策及び食品衛生調査会食中毒部会を通じた情報分析対策を引き続き講じる。
     
5. 高齢社会への対応
  [1]  本格的な高齢社会の到来を控え、高齢者・知的障害者・精神障害者等の財産等を保護すべき必要性が高まっている状況を踏まえ、高齢者・知的障害者・精神障害者等の行為能力制度や財産管理等を内容とする、いわゆる成年後見制度の見直しについて、法制審議会において検討し、平成11年通常国会に所要の法案を提出する。
  [2]  平成9年12月に改正した「有料老人ホーム設置運営指導指針」の周知を図り、「有料老人ホーム等のあり方に関する検討会」(厚生省の検討会)報告書を踏まえ、引き続ぎ有料老人ホームの健全育成及び利用者保護を図る。
     
6. 電子商取引上の消費者トラブルの防止・救済の推進
  [1]  近年、電子商取引に関する消費者トラブルが増加していることから、内閣に設置された高度情報通信社会推進本部電子商取引等検討部会の報告書「電子商取引等の推進に向けた日本の取組み」を踏まえ、電子商取引におけるトラブルを防止・救済する観点からの環境整備を検討し、個人情報保護等の制度的・技術的対応を図る。
  [2]  電子商取引の増加等による事業者の販売方法の多様化を踏まえ、不当景品類及び不当表示防止法の規制対象となる表示の種類等について所要の見直しを行うとともに、その内容の周知等を図り、違反行為の未然防止に努める。また、訪問販売法に基づく表示の適正化を事業者に促すこと及び不適正事業者の排除により消費者取引の適正化を図る。
  [3]  OECDの消費者政策委員会が作成している電子商取引における消費者保護のためのガイドラインの来年の完成に向け、積極的に参加する。
     
7. 消費者教育・情報提供の推進
  [1]  消費者を取り巻く環境の変化に対応して消費者が自己責任に基づいた行動を実現できるようになるには、適正な市場ルールの整備とともに、消費者が市場ルールを含む市民社会のルールを身につけることや、生涯の各時期における様々な消費者問題に主体的・合理的に対応できる能力を培うことが重要である。このため、新たに電子媒体の効果的活用を含め、消費者教育・消費者啓発の一層の充実を図る。
  [2]  消費者と事業者の情報や交渉力の格差の是正、消費者トラブルの解決・未然防止等に資するため、消費者が求める多岐にわたる消費者生活関連情報について、様々な要求レベルに対応しつつタイムリーに提供するために包括的なデータベースを構築する。
  [3]  消費者被害の未然・再発防止に資するため、全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)の拡充を行うとともに、都道府県等とその域内の消費生活センターを結ぶ地域ネットワークの整備を促進する。また、消費者と都道府県等との双方向の情報交流を促進するため、従来からの情報提供資料の作成に加え、ニュー・メディアを活用した普及・啓発に努める。
     
8. 環境問題への対応
  [1]  環境基本計画に示された国民の役割を周知する一方、環境への負荷の少ない製品に表示を付ける事業(環境ラベリング)に対して適切な指導・助言を行う。
  [2]  環境保全型製品の積極的な購入(グリーン購入)を図るため、環境保全型製品の普及に向けた積極的な支援を行う。
  [3]  消費者に対し省エネルギー型機器の利用を促すため、国際的に統一された基準をもとにしたマーク制度である国際エネルギースタープログラムの普及を図る。



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