消費者行政の推進について(案)


平成8年12月13日
第29回消費者保護会議


 消費者の利益を擁護・増進し、国民の消費生活の安定向上を確保するためには、消費者、事業者、国及び地方公共団体がそれぞれの役割に応じて十分に責任を果たすことが必要である。このため、政府は、毎年、消費者保護会議において各般の施策を決定するとともに、その推進に努めているところである。
 消費者をめぐる最近の状況を見ると、国際化、サービス化、情報化等の経済社会の急速な変化に加え、規制緩和が進展する中で、消費者を取り巻く環境もより多様化・複雑化している。こうした環境の変化に対応して国民の消費生活の安定向上を図るためには、生活者・消費者重視の観点から、一層積極的に施策を展開していくことが不可欠である。
 政府としては、このような認識に基づき、「消費者安全の徹底」、「消費者取引の適正化」及び「消費者教育・情報提供の推進」を柱とし、下記の事項を重点として、別添の「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者行政の推進を図ることとする。




1. 消費者安全の徹底
     
   消費者に提供される製品及びサービスについては、その質、内容等に関する安全性の確保が不可欠である。
 病原性大腸菌O-157による食中毒事故に対しては、被害の未然・再発防止を図るため、生産・加工・流通・消費の各段階を通じた食品衛生管理の一層の徹底が不可欠である。このため、政府においては、「病原性大腸菌O-157対策関係閣僚会議」を開催し、関係省庁の緊密な連携の下、医療の確保、二次感染の防止、感染経路の究明、学校給食の衛生管理の徹底、関係事業者による衛生管理の徹底、広報・情報提供等の対策を講じているところであるが、引き続き、これらの対策に全力を挙げて取り組むとともに、食品安全確保対策の総合的な推進を図る。
 また、製造物責任法が施行されて1年を迎えたが、製造物責任制度の趣旨が実現され、より良いものとして定着していくよう、事業者における製品安全性向上対策の充実、裁判外紛争処理体制・原因究明体制の充実・強化、事故情報の収集・提供等に努めるなど、総合的な消費者被害防止・救済策の推進を図る。
     
  (1)  食品安全確保対策の総合的な推進
   
[1]  病原性大腸菌O-157による食中毒事故の未然・再発防止を図るため、全国のと畜場及び食肉処理場において事業者による自主点検・自主検査を指導するなど衛生管理の徹底を図るとともに、処理工程における二次汚染を未然に防止するための食肉処理等に係る基準を策定するなど、所要の措置を講ずる。
 また、地方公共団体とも連携を図りつつ、食中毒の予防方法等についての普及啓発の拡充を図る。
[2]  家畜の生産から食肉の処理・加工に至る各段階を通じた安全性の確保及び品質管理の徹底を図るため、HACCP(危害分析重要管理点)方式等を導入した品質管理モデルの策定及び普及啓発を行うなど、家畜衛生及び食肉の品質管理に係る体制の整備を図る。
[3]  食品事故の未然・再発防止対策の一層の強化を図るため、事業者における新たな食品安全確保システムの構築、食品事故等の危害・危険情報を迅速かつ的確に収集する体制の整備等を行う。
[4]  生産から消費に至る各段階を通じた食品の安全性の確保を図るため、国内における農薬等の適正使用の徹底、生産・加工・流通・消費の各段階におけるモニタリング体制の充実・強化及び農林水産消費技術センターにおける検査分析体制の充実・強化を図る。
[5]  増大する輸入食品の安全性の確保を図るため、検査機器の整備等監視体制の一層の充実に努めるとともに、農産物中の残留農薬については、ポスト・ハーベスト(収穫後使用)農薬を含め、食品の安全性確保の観点から順次基準を策定するなど、適切な対応を図る。
[6]  食品添加物の安全性の一層の確保を図るため、従来の化学的合成品に加え、既存の天然添加物について、最新の科学的水準に基づき、安全性の見直しのための毒性試験等を行い、必要に応じて規格・基準の設定等の措置を講ずる。
     
  (2)  総合的な消費者被害防止・救済策の推進
   
 (製品事故の未然・再発防止対策の充実・強化)
[1]  製品の安全性や取扱い上の注意に関する情報を消費者に適切に提供するため、警告表示・取扱説明書の充実方策に関する業種横断的ガイドラインの周知徹底を図るとともに、これを踏まえた製品毎の警告表示・取扱説明書の適正化を推進するなど、製品安全性向上対策の充実を図る。
 (裁判外紛争処理体制の充実・強化)
[2]  都道府県等における紛争処理の充実・強化を図るため、都道府県等の苦情処理委員会に対する製品関連技術専門家の派遣等を行う。
 また、公正性・中立性に配慮しつつ、民間活力を活用し現実のニーズに応じて製品分野別に設立され、技術的・専門的知識を備えた裁判外紛争処理機関の運営を支援する。
[3]  モーターボート、ヨット等の小型船舶の普及に伴い、舟艇の欠陥に起因する被害に係る紛争を簡易・迅速に解決するための体制整備を図る。
 (原因究明体制の充実・強化)
[4]  製品評価技術センター、農林水産消費技術センター、交通安全公害研究所等国の機関や国民生活センターにおいて、被害者の証明負担を軽減するだめの原因究明、検査分析等の機能の拡充・強化を図る。
 また、製品評価技術センター、農林水産消費技術センター等国の機関や国民生活センターが、各地の原因究明機関を結ぶネットワークの要として、消費生活センター等からの問い合わせに対して適切な機関の紹介・あっせんを行うよう努める。
[5]  都道府県等における原因究明機能の向上を図るため、消費生活センター等における商品テスト機器の整備を促進する。
 (事故情報の収集・提供等)
[6]  消費生活用製品等に係る事故に関する情報の収集・提供(事故情報収集制度・危害情報システム)の拡充・強化を図るとともに、消費者危害情報等の収集・活用を総合的に推進するため、消費者行政関係省庁等において活発な情報交換を行うなど、一層の連携強化に努める。
 また、国民生活センターや消費生活センターで行った原因究明のための苦情処理テストの結果をデータベース化することにより、原因究明情報の共有・相互活用を図る。
[7]  製品に係る事故防止及び円滑な被害救済を図るため、製品の基礎的な知識等について副教材としても利用できるような冊子を作成するなど、製品安全に係る消費者教育の充実を図る。
[8]  医薬品副作用モニター制度等により収集した副作用や医薬品が関与していると思われる感染症の情報など国が把握している医薬品の安全性に関連する情報を提供するため、公開情報の作成及びオンラインによる情報提供のためのシステムの開発に着手する。
     
     
2. 消費者取引の適正化
   経済社会の多様化・複雑化等の急速な変化に加え、規制緩和が進展する中で、消費者が自主的かつ合理的に行動することができるようにするためには、その判断の前提となる情報が十分に与えられるとともに、適切な取引方法が確保されることが必要である。
 このため、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律等の厳正かつ的確な運用に基づく公正自由な競争の確保を前提としつつ、計量・規格・表示の適正化を図るとともに、個別具体の事案に応じた消費者取引の適正化を図る。
     
  (1)  計量・規格・表示の適正化
   
[1]  商品や消費者の購買行動の変化等を踏まえ、事業者の自主性の発揮により表示内容の充実を図り、消費者に分かりやすい表示が行われるよう、家庭用品品質表示法における規制対象品目、表示事項等について所要の見直しを行う。
[2]  コーデックス規格(国際食品規格)等の国際規格と各国の規格・基準制度の整合化への要請等を踏まえ、食品の規格・基準をめぐる国際的な動向を的確に把握するとともに、消費者・関係業界等への情報提供及び意見集約を行うことにより、我が国の実情を国際規格に反映し得るよう基準・認証分野における国際化への対応を充実・強化する。
[3]  JAS制度に関する申請・報告手続の簡素化・迅速化を図るシステムの構築等を行うとともに、HACCP(危害分析重要管理点)方式等を導入した高度品質管理システムのJAS認定工場への適用を行う。
[4]  近年の輸入野菜の増加、野菜産地の多様化等に対応して、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に基づく品質表示基準制度により、原産地表示を義務付ける青果物の対象品目の拡大を検討する。
 また、原産地表示が消費者の商品選択に十分活用されるよう情報提供に努める。
[5]  食品の栄養成分・熱量に関する適切な情報を広く提供するため、平成8年5月から導入された栄養表示基準制度の推進を図る。
     
  (2)  具体的取引の適正化
   
[1]  近年の電話勧誘取引による被害の急増及び連鎖販売取引による被害の多発に対応して改正された訪問販売等に関する法律の円滑な施行を図るため、同法の改正内容の周知徹底、関係事業者に対する指導等を行う。
 また、消費生活センター等関係機関との連携強化及び同法の厳格な運用のための体制強化を行う。
[2]  いわゆる悪質商法や不正商品問題の多様化、巧妙化及び被害の潜在化に対応して、積極的な取締りを行うとともに、関係法令の厳正な運用を行う。
[3]  多様化・複雑化する経済社会において、消費者が自己責任に基づき、自らの意思により適切な選択を行うことができるよう、消費者取引の適正化を図るための環境整備の在り方について、国民生活審議会において総合的な検討を行う。
[4]  暴力団関係金融の被害から消費者を保護するため、暴力団員による不当に高利な貸付け及び不当な債権取立て行為を暴力団対策法等により取り締まる。
[5]  いわゆる多重債務者問題に適切に対応するため、消費者のプライバシー保護を十分踏まえた「残高情報」の相互交流に向けた体制整備の検討等について、審議会等の報告等を踏まえつつ、業界における取組を推進する。
[6]  いわゆる継続的役務取引については、「継続的役務取引適正化研究会」の報告の趣旨を踏まえ業界において策定された自主ルールについて、取引の適正化を期するために各業界における周知徹底を図るとともに、消費者に対する啓発を行う。
[7]  近年の情報通信技術の進展等に対応して、電気通信事業における個人情報保護を図るため、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」に基づき、電気通信事業者に対する指導等を行う。
 また、発信電話番号等発信者に関する個人情報を通知する電気通信サービスの実施に当たり、発信者に関する個人情報を保護するため、「発信者情報通知サービスの利用における発信者個人情報の保護に関するガイドライン」の周知徹底を図るなど、所要の措置を講ずる。
 さらに、電気通信の高度化・多様化等に伴い、電気通信役務の円滑な利用に資する環境整備を図るため、電気通信役務に関する苦情処理体制の整備について、電気通信事業法等の改正を含めた検討を行い、所要の措置を講ずる。
[8]  近年の引越運送に係る消費者トラブルの多発にかんがみ、引越運送に係る消費者取引の適正化を図るため、見積書の統一化等具体的な検討を行い、所要の措置を講ずる。
     
     
3. 消費者教育・情報提供の推進
     
   規制緩和が進展する中で、消費生活の安定向上を図るためには、消費者の自立と主体性の発揮を支援するための環境整備に努めることが必要である。
 このため、消費者に対する情報提供の積極的な推進を図るとともに、消費者自らが必要な情報を選択し、正しく理解した上、適切に活用することができるよう、消費者教育の一層の推進を図る。
     
  (1)  消費者教育の一層の推進
   
[1]  小・中・高等学校の現行学習指導要領が平成4年度から順次実施されたことに伴い、各種講習会を開催するなど、学校における消費者教育の充実を図る。
 また、消費生活センターが行う学校における消費者教育への支援の更なる充実を図る。
[2]  市町村が行う社会教育施設を中心とした事業等を支援することにより、社会教育における消費者教育を推進する。
 また、新入社員に対する研修の活用等を要請することにより、企業における消費者教育の積極的な実施・定着を促進する。
[3]  行政・消費者・教育関係者・企業の四者による連携協力の下、消費者教育の総合的な体系の確立、教材・指導者マニュアル等の作成・配布、消費者教育に関する図書・教材等に関するデータベースの整備等を推進する。
[4]  消費者教育の充実・推進を担う人材の資質の向上を図るため、国民生活センターにおいて、地方公共団体の職員や消費生活相談員に対する啓発活動の一層の充実・強化を図る。
     
  (2)  情報提供の積極的推進
   
[1]  消費者啓発を積極的に推進するため、毎年5月に全国各地で開催される消費者月間に伴う事業を中心に各種事業を実施する。
[2]  消費者被害の未然・再発防止を図るため、都道府県等に設置しているPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)の拡充を行うとともに、都道府県等とその域内の消費生活センターを結ぶ地域ネットワークの整備を促進する。
 また、消費者と都道府県等との双方向の情報交流を促進するため、従来からの情報提供資料の作成に加え、ニュー・メディアを活用した普及啓発に努める。
[3]  道路運送車両法が改正されたことに伴い、自動車ユーザーの保守管理責任が明確化されたことを踏まえ、自動車ユーザーの保守管理に関する意識の高揚や自主的な点検整備の励行を推進するため、「自動車点検整備推進運動」を実施し、点検整備に関する情報を提供する。
[4]  消費者の食品の安全性等に関する正しい理解を深めるとともに、消費者の健康安全志向に対する生産者の的確な対応を促進するため、消費者と生産者が情報交流等を図る体制を整備する。
 (環境への配慮)
[5]  環境基本計画に示された国民の役割を周知するとともに、消費生活等において環境保全への取組に対する参加を促すため、エコマーク事業、グリーンマーク事業、省エネルギーマーク事業等の各種事業を積極的に推進する。
[6]  環境保全型製品の積極的な購入・調達(グリーン購入・グリーン調達)を促進するための企業、行政機関、民間団体等からなるグリーン購入ネットワークが発足したことを踏まえ、環境保全型製品の普及に向けた積極的な支援を行うため、商品選択の際に環境への配慮を組み込んだ消費行動が促進されるよう、消費者啓発を行う。



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