消費者行政の推進について(案)


平成7年12月5日
第28回消費者保護会議


 消費者の利益を擁護・増進し,国民の消費生活の安定向上を確保するためには,消費者,事業者,国,地方公共団体がそれぞれの役割に応じて十分に責任を果たすことが必要である。このため,政府は,毎年,消費者保護会議において各般の施策を決定するとともに,その推進に努めているところである。
 消費者をめぐる最近の状況をみると,国際化,サービス化等の経済社会の急速な変化に加え,規制緩和が進展する中で,消費者を取り巻く環境もより多様化・複雑化している。こうした環境の変化に対応して国民の消費生活の安定向上を図るためには,生活者・消費者重視の観点から,一層積極的に施策を展開していくことが不可欠である。
 政府としては,このような認識に基づき,「消費者安全の徹底」,「消費者取引の適正化」及び「消費者教育・情報提供の推進」を柱とし,下記の事項を重点として,別添の「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者行政の推進を図ることとする。



1. 消費者安全の徹底
   消費者に提供される商品及びサービスについては,その質,内容等に関する安全性の確保が不可欠である。
 このため,製造物責任制度の定着をはじめとする総合的な消費者被害防止・救済策を推進するとともに,品目の特性に応じた安全対策を推進する。
     
  (1)  総合的な消費者被害防止・救済策の推進
     (製品事故に係る被害発生・再発の防止)
   
[1]  表示・取扱説明書作成のための業種横断的基準の周知徹底及びこれを踏まえた製品毎の表示・取扱説明書の適正化の推進など製品安全性向上対策の充実を図る。
 (裁判外紛争処理機関の充実・強化)
[2]  都道府県等における製品紛争処理機能の充実・強化を図るため,都道府県等の苦情処理委員会に対する製品関連技術専門家の派遣や紛争処理ガイドラインの作成等を行う。
[3]  迅速・的確な裁判外の製品紛争処理を図るため,公正性・中立性に配慮しつつ,民間活力を活用し現実のニーズに応じて製品分野別に設立され,技術的・専門的知識を備えた裁判外紛争処理機関の運営を支援する。
 (原因究明機関の整備)
[4]  製品評価技術センター(旧通商産業検査所),農林水産消費技術センター,交通安全公害研究所等国の機関や国民生活センターにおいて,被害者の証明負担を軽減するための原因究明や検査分析等を行うため,拡充・強化を図る。
 また,製品評価技術センター,農林水産消費技術センター等国の機関や国民生活センターが,各地の原因究明機関を結ぶネットワークの要として,消費生活センター等からの問い合わせに対して,適切な機関の紹介・あっせんを行うよう努める。
[5]  消費生活センター等における原因究明機能の向上を図るため,商品テスト機器整備のための交付金を都道府県・政令指定都市に対し交付する。
 (情報の収集・提供等)
[6]  消費生活用製品等に係る事故に関する情報の収集・提供(事故情報収集制度・危害情報システム)の拡充・強化を図るとともに,消費者危害情報等の収集・活用を総合的に推進するため,消費者行政関係省庁等において活発な情報交換を行うなど,一層の連携強化に努める。また,国民生活センターや消費生活センターで行った原因究明のための苦情処理テストの結果をデータベース化することにより,原因究明情報の共有・相互活用を図る。
[7]  製品評価技術センターにおいて,製品の検査技術に関する調査研究及び品質に関する技術上の情報の収集・評価・提供等を新たに行うことにより,その拡充・強化を図る。
[8]  製品に係る事故防止及び円滑な被害救済を確保するため,製品の基礎的な知識や取扱説明書・マニュアルの読み方等に関するビデオを作成するなど,製品安全に係る消費者教育の充実を図る。
 (その他)
[9]  製品関連事故に関して,消費生活センターの相談・苦情処理機能,原因究明機能,情報提供・消費者啓発機能の一層の充実・強化を図るため,その現状,役割等を踏まえつつ,消費生活センターの今後の在り方及び当面講ずべぎ施策について検討を行う。
     
  (2)  品目の特性に応じた安全対策の推進
   
[1]  生産から消費にいたる各段階を通じた食品の安全性の確保のため,国内での農薬等の適正使用の徹底,生産,加工,流通,消費の各段階でのモニタリング体制の整備及び農林水産消費技術センターでの検査分析体制の整備を図る。
[2]  増大する輸入食品に関し,検査機器の整備等監視体制の一層の充実に努め,安全性の確保を図るとともに,農産物中の残留農薬については,ポスト・ハーベスト(収穫後使用)農薬を含め,食品の安全性確保の観点から順次基準を作成する等適切な対応を図る。
[3]  食品衛生法の改正に基づき,化学的合成品以外の添加物(いわゆる天然添加物)についても原則として指定制の対象とするとともに,既存の天然添加物の安全性確認のための毒性試験等を進めるほか,栄養改善法の改正に基づき,食品の栄養成分・熱量に関して製造販売業者が表示をしようとする場合に主要栄養成分等も併せて表示することを義務づける等の栄養表示基準制度を導入するなど,食品保健対策を総合的に推進する。
[4]  モーターボート,ヨット等の舟艇の利用者保護を目的にした,迅速かつ公正・中立な消費者被害救済体制の在り方について検討を行い,所要の措置を講ずる。
     
2. 消費者取引の適正化
   消費者に関する取引については,商品及びサービスに関する十分な情報とともに,適切な取引方法が確保される必要がある。
 このため,独占禁止法等の厳正かつ的確な運用に基づく公正自由な競争の確保を前提としつつ,計量・規格・表示の適正化を図るとともに,個別具体の事案に応じた取引の適正化を図る。
     
  (1)  計量・規格・表示の適正化
   
[1]  食品の日付表示を製造年月日表示から期限表示に改正したことに伴い,その趣旨及び内容について,消費者,流通業者及び製造業者に対して周知徹底を図る。
[2]  近年の輸入野菜の増加,野菜産地の多様化等に対応して,消費者の適切な選択に資するため,野菜の一部品目について農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律に基づく品質表示基準制度により産地・原産国表示を義務付けるとともに,その他の青果物についても,現行の「青果物の一般品質表示ガイドライン」の見直し強化を図る。
[3]  国際的な品質管理システムとの整合化が図られた高度品質管理システムのJAS認定工場への適用について検討する。また,登録格付機関の製品検査の精度向上を図る。
     
  (2)  具体的取引の適正化
   
[1]  資格講座を中心とした電話勧誘取引による被害の急増及び連鎖販売取引による被害の多発にかんがみ,消費者をめぐる取引の適正化を図るため,電話勧誘等による販売及び連鎖販売取引の適正化について訪問販売等に関する法律等の改正も含めた検討を行い,所要の措置を講ずる。
[2]  いわゆる悪質商法や不正商品問題の多様化,巧妙化及び被害の潜在化に対応して,積極的な取締りを行うとともに関係法令の厳正な運用を行う。特に訪問販売等に関する法律については,その施行を担当する都道府県等の職員を対象に研修を行い,同法の厳正な施行に努める。
[3]  経済社会の変化を踏まえ,各種約款の適正化の方策について総合的な検討を行うための調査を行う。
[4]  暴力団関係金融の被害から消費者を保護するため,暴力団員による不当に高利な貸付け及び不当な債権取立て行為を,暴力団対策法等により取り締まる。
[5]  いわゆる多重債務者問題に適切に対応するため,消費者のプライバシー保護を十分踏まえた「残高情報」の相互交流に向けた体制整備の検討等について,審議会等の報告等を踏まえつつ,業界における取組を推進する。
[6]  いわゆる継続的役務取引については,「継続的役務取引適正化研究会」の報告の趣旨を踏まえ策定された業界における自主ルールについて,取引の適正化を期するために各業界における周知徹底を図るとともに,消費者に対する啓発・普及を図る。
[7]  近年の情報通信技術の進展等に対応して,電気通信事業における個人情報保護を図るため,「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」に基づき,引き続き電気通信事業者に対する指導等適切な措置を講ずる。
     
3. 消費者教育・情報提供の推進
   消費生活の安定向上のためには,消費者の自主的かつ合理的な行動が確保される必要がある。
 このため,消費者教育の一層の推進を図るとともに,消費者への情報提供を積極的に推進する。
     
  (1)  消費者教育の一層の推進
   
[1]  平成元年3月に改訂された小・中・高等学校の学習指導要領の順次実施に伴い,各種講習会を開催するなど,学校における消費者教育の充実を図る。
[2]  市町村が行う社会教育施設を中心とした事業等を支援することにより,社会教育における消費者教育を推進する。また,新入社員に対する研修の活用等を要請することにより,企業における消費者教育の積極的な実施,定着を促進する。
[3]  行政,消費者,教育関係者,企業の四者の連携協力の下,消費者教育の総合的な体系の確立,教材,指導者のマニュアル等の作成・配布,消費者教育に関する図書,教材等に関するデータベースの整備等を推進する。
     
  (2)  情報提供の積極的推進
   
[1]  消費者啓発を積極的に推進するため,毎年5月に全国各地で開催される消費者月間に伴う事業を中心に各種事業を実施する。
[2]  広域的,全国的な消費者問題に対応するため,全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)の拡充を図り,商品テスト情報や市町村の消費生活相談情報の収集を強化する。
[3]  高齢者や視覚障害者に対する効果的な食品の表示に関する調査検討等を通じて,食生活をめぐる環境の改善を図る。
[4]  環境基本計画に示された国民の役割を周知するとともに,消費生活等において環境保全への取組に対する参加を促すため,エコマーク事業,グリーンマーク事業,省エネルギーマーク事業等の諸事業を積極的に推進するほか,「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動計画」の内容,実施方法について周知徹底に努める。
[5]  平成7年7月1日に施行された改正道路運送車両法により,自動車ユーザーの保守管理責任が明確化されたことを踏まえ,自動車ユーザーの保守管理に関する意識の高揚,自主的な点検整備の励行を推進するため,「自動車点検整備推進運動」を実施し,点検整備に関する情報を提供する。



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