消費者行政の推進について


平成6年11月29日
第27回消費者保護会議


 消費者の利益を擁護・増進し,国民の消費生活の安定向上を確保するためには,消費者,事業者,国,地方公共団体がそれぞれの役割に応じて十分に責任を果たすことが必要である。このため,政府は,毎年,消費者保護会議において各般の施策を決定するとともに,その推進に努めているところである。
 消費者をめぐる最近の状況をみると,国際化,サービス化等の経済社会の急速な変化に加え,規制緩和が進展する中で,消費者を取り巻く環境もより多様化・複雑化している。こうした環境の変化に対応して国民の消費生活の安定向上を図るためには,生活者・消費者重視の観点から,一層積極的に施策を展開していくことが不可欠である。
 政府としては,このような認識に基づき,「消費者安全の徹底」,「消費者取引の適正化」及び「消費者教育・情報提供の推進」を柱とし,下記の事項を重点として,別添の「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者行政の推進を図ることとする。


1. 消費者安全の徹底
   消費者に提供される商品及びサービスについては,その質,内容等に関する安全性の確保が不可欠である。
 このため,本年7月1日に公布され,来年7月1日に施行される製造物責任法についての周知徹底や関連する諸施策を含む総合的な消費者被害防止・救済策を推進するとともに,品目の特性に応じた安全対策を推進する。
     
  (1)  総合的な消費者被害防止・救済策の推進
     (製造物責任法の周知徹底等)
   
[1]  製造物責任法の施行に際し,制度本来の趣旨が実現され定着していくようにその内容についての周知徹底に努める。
 さらに,消費者・事業者等の同法の趣旨,内容等についての疑問点に関し検討分析を加え,これを踏まえ啓発資料を作成するなど,広く一般に啓発を行う。
 (製品事故に係る被害発生・再発の防止)
[2]  電気用品,ガス用品,液化石油ガス用品及び消費生活用製品に係る安全規制の合理化を行うとともに,その実効を確保するため,規制遵守状況の確認,消費者と事業者双方に対する制度内容等に係る情報提供の強化を図る。
[3]

 警告表示を中心とした表示の統一化に係る調査・検討及びこれを踏まえた業種横断的な統一基準の作成,保証書の充実や定期検査等のアフターケアの充実に関する調査・検討,表示・取扱説明書作成のための業種横断的基準の周知徹底及びこれを踏まえた製品毎の表示・取扱説明書の適正化の推進など製品安全性向上対策の充実を図る。

 (裁判外紛争処理機関の整備・充実)
[4]  国及び国の地方機関等における消費者相談窓口について,専門家の配置,原因究明能力を有する機関との連携強化等による相談・あっせん体制の充実を図る。また,都道府県等における製品紛争処理機能の充実を図るため,都道府県等の紛争処理機関に対し製品関連技術専門家等を派遣するなど,その必要性に応じた協力を行う。
[5]  迅速・的確な裁判外の製品紛争処理を図るため,公正性・中立性に配慮しつつ,民間活力を活用し,現実のニーズに応じて,製品分野別に,技術的・専門的知識を備えた裁判外紛争処理機関の整備を促進する。
[6]  製造物責任法に則り,具体的な紛争処理基準,事例へのあてはめ例を取りまとめる。
 (原因究明機関の整備)
[7]  通商産業検査所,農林水産消費技術センター,交通安全公害研究所等国の機関や国民生活センターにおいて,被害者の証明負担を軽減するための原因究明や検査分析を行うため,拡充・強化を図る。
 また,専門的な知見・ノウハウを有した民間検査機関等について,原因究明の受入れ体制の整備を行う。
 さらに,通商産業検査所,農林水産消費技術センター等国の機関や国民生活センターが,各地の原因究明機関を結ぶネットワークの要として,消費生活センター等からの問い合わせに対して,適切な機関を紹介・あっせんできるような体制の整備を行う。
[8]  製品関連事故による消費者被害を緊急に防止・救済するため,原因究明を緊急に実施する必要があることが判明し,被害が大量に発生している,あるいは今後その可能性があるなど国民経済に多大な影響を与えるおそれがある重要事案について機動的に原因を究明できる体制を整備する。
[9]  消費生活センター等における原因究明機能の向上を図るため,商品テスト機器整備のための交付金を都道府県・政令指定都市に対し交付する。
 (情報の収集・提供等)
[10]  消費生活用製品等に係る事故に関する情報の収集・提供(事故情報収集制度・危害情報システム)の拡充・強化を図るとともに,消費者危害情報等の収集・活用を総合的に推進するため,消費者行政関係省庁等において活発な情報交換を行うなど,一層の連携強化に努める。また,全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)上に「商品テスト情報システム」を構築して,国民生活センターや消費生活センターで行った原因究明のための苦情処理テストの結果をデータベース化することにより原因究明情報の共有・相互活用を図る。

[11]

 製品に係る事故防止及び円滑な被害救済を確保するため,製品の基礎的な知識や取扱説明書・マニュアルの読み方等について副読本としても利用できるような冊子を作成するなど,製品安全に係る消費者教育の充実を図る。

 (その他)
[12]  製品事故に対し,SGマーク制度等それぞれの製品分野で被害救済の機能を果たしている各種の救済制度の適正な整備・充実や周知を図る。

[13]

 本法の施行に伴う影響を把握するため,事業者及び消費者の本法の施行に伴う行動の変化,相互の認識・評価について調査等を行う。

 

(2)

 品目の特性に応じた安全対策の推進

   
[1]  生産から消費にいたる各段階を通じた食品の安全性の確保のため,国内での農薬等の適正使用の徹底,生産,加工,流通,消費の各段階でのモニタリング体制の整備及び農林水産消費技術センターでの検査分析体制の整備充実等を図る。
[2]  JAS規格の制定された食品製造等における安全・衛生上の課題点及び製造工程上衛生管理等を必要とする主要ポイントについて適正製造基準を策定し,これに留意しつつ,安全性確保の充実を図る。
[3]  増大する輸入食品に関し,検査機器の整備等監視体制の一層の充実に努め,安全性の確保を図るとともに,農産物中の残留農薬については,ポスト・ハーベスト(収穫後使用)農薬を含め,食品の安全性確保の観点から順次基準を作成する等適切な対応を図る。
[4]  食品流通の国際化等の環境の変化を踏まえ,食品衛生法等の改正を含めて新しい食品保健対策の在り方について検討を行い,所要の措置を講ずる。
[5]  医薬品等の適正使用の推進など,医薬品等の安全確保対策の充実・確保を図る。特に,医療用具については,新たに記録の保存の義務化及び再審査・再評価制度の導入を内容とする市販後対策の充実並びに保守点検の推進をはじめとする適正使用の推進を図る。
[6]  家庭用品の事業者による安全確保マニュアルの作成を支援し,有害物質を含有する家庭用品による健康被害の未然防止を図る。
[7]  自動車製作者等に対するリコールの届出の義務付け及び国がリコールの実施勧告を行うことができる制度を導入することにより,自動車事故等の未然防止対策の充実を図る。
     
2. 消費者取引の適正化
   消費者に関する取引については,商品及びサービスに関する十分な情報とともに,適切な取引方法が確保される必要がある。
 このため,独占禁止法等の厳正かつ的確な運用に基づく公正自由な競争の確保を前提としつつ,計量・規格・表示の適正化を図るとともに,個別具体の事案に応じた取引の適正化を図る。
     
  (1)  計量・規格・表示の適正化
   
[1]  食品の日付表示については,「農林物資規格調査会」答申,「食品衛生調査会」答申等を踏まえ,製造年月日表示から期限表示に変更することとし,必要な法令等の改正を行うとともに,消費者,流通業者及び製造業者に対して周知徹底を図る。
[2]  品質管理検査の迅速化,格付業務の簡素化,迅速化等に対応するため,JAS規格における分析方法,品質管理検査の手法について見直しを行う。
[3]  JIS規格について,工業標準センターの設立運営等を通じ,生活者・消費者の利便性・安全性の確保を図るため,標準化の基礎となるデータの収集・体系化等を行う標準基盤研究を推進する。
[4]  国民の栄養・健康増進の基礎資料である日本食品標準成分表の全面改訂に着手する。
     
  (2)  具体的取引の適正化
   
[1]  いわゆる悪質商法や不正商品問題の多様化,巧妙化及び被害の潜在化に対応して,積極的な取締りを行うとともに関係法令の厳正な運用を行う。特に訪問販売等に関する法律については,その施行を担当する都道府県等の職員を対象に研修を行い,同法の厳正な施行に努める。
[2]  経済社会の変化を踏まえ,各種約款の適正化の方策について総合的な検討を行うための調査を行う。
[3]  暴力団関係金融の被害から消費者を保護するため,暴力団員による不当に高利な貸付け及び不当な債権取立て行為を,暴力団対策法等により取り締まる。
[4]  いわゆる多重債務者問題に適切に対応するため,消費者のプライバシー保護を十分踏まえた「残高情報」の相互交流に向けた体制整備の検討等について,審議会等の報告等を踏まえつつ,業界における取組を推進する。
[5]  いわゆる継続的役務取引については,「継続的役務取引適正化研究会」の報告の趣旨を踏まえ,業界における自主ルールの策定が行われたところであり,取引の適正化を期するために各業界における周知徹底を図るとともに,消費者に対する啓発・普及を図る。
[6]  近年の情報通信技術の進展等に対応して,電気通信事業における個人情報保護を図るため,「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」に基づき,引き続き電気通信事業者に対する指導等適切な措置を講ずる。
     
3. 消費者教育・情報提供の推進
   消費生活の安定向上のためには,消費者の自主的かつ合理的な行動が確保される必要がある。
 このため,消費者教育の一層の推進を図るとともに,消費者への情報提供を積極的に推進する。
     
  (1) 消費者教育の一層の推進
   
[1]  消費者教育の総合的な体系の確立,教材,指導者のマニュアル等の作成・配付,消費者教育に関する図書,教材等に関するデータベースの整備等を推進することにより,消費者教育の定着・充実を図る。
[2]  平成元年3月に改訂された小・中・高等学校の学習指導要領の順次実施に伴い,各種講習会を開催するなど,学校における消費者教育の充実を図る。また,市町村が行う社会教育施設を中心とした事業等を支援することにより,社会教育における消費者教育を推進する。さらに,新入社員に対する研修の活用等を要請することにより,企業における消費者教育の積極的な実施,定着を促進する。
     
  (2)  情報提供の積極的推進
   
[1]  消費者啓発を積極的に推進するため,毎年5月に全国各地で開催される消費者月間に伴う事業を中心に各種事業を実施する。
[2]  広域的,全国的な消費者問題に対応するため,全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)の拡充を図り,商品テスト情報や市町村の消費生活相談情報の収集を強化する。
[3]  国民生活センターにおいて,一般消費者への情報提供を強化するため,パソコン通信を利用した「消費生活情報ニューネット」を整備する。
[4]  都道府県等の広報誌などを活用して,消費者に対し有機農産物等特色のある食品の供給,消費に関する情報の提供を行う。
[5]  電気通信サービスに関する消費者からの相談等が増加していることに対応するため,電気通信サービスモニターに対するアンケートの実施等電気通信利用者相談室を活用して,消費者相談の充実を図る。
[6]  エコマーク事業,グリーンマーク事業等の積極的推進により,消費者に対する環境保全に関する情報・省エネルギーに関する情報の提供を充実する。



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