消費者行政の推進について


平成5年12月17日
第26回消費者保護会議


 消費者の利益を擁護・増進し,国民の消費生活の安定及び向上を確保するためには,消費者,事業者,国,地方公共団体がそれぞれの役割に応じて十分に責任を果たすことが必要である。このため,政府は,毎年,消費者保護会議において各般の施策を決定するとともに,その推進に努めているところである。
 消費者をめぐる最近の状況を見ると,国際化,サービス化等の経済社会の急速な変化の中で,消費者生活の安定及び向上を図るためには,生活者・消費者重視の観点から,一層積極的な施策を展開していくことが不可欠である。
 政府としては,このような認識に基づき,「消費者安全の徹底」,「消費者取引の適正化」及び「消費者教育・情報提供の推進」を柱とし,下記の事項を重点として,別添「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者行政の推進を図ることとする。


1. 消費者安全の徹底
   消費者に提供される商品及び役務については,その質,内容等に関する安全性の確保が不可欠である。
 このため,総合的な消費者被害防止・救済策を推進するとともに,品目の特性に応じた安全対策を推進し,併せて、苦情処理・原因究明体制の整備を行なう。
(1)  総合的な消費者被害防止・救済策の推進
[1]  製造物責任制度を始めとした総合的な消費者被害防止・救済制度の確立のため,消費者行政関係省庁において行われた検討の成果や,これらの成果を踏まえ経済社会の発展に即応した消費者の保護に関する総合的な方策を策定する視点から検討を行なって内閣総理大臣に提出された国民生活審議会意見を踏まえ,関係省庁缶で調整を行い,その法制化を含め,所要の措置について早急に具体化を図る。
[2]  (具体的施策については,別紙参照)
(2)  品目の特性に応じた安全対策の推進
  [1]  生産から消費にいたる各段階を通じた食品の安全性の確保のため,国内での農薬等の適性使用の徹底,生産,加工,流通,消費の各段階でのモニタリング体制の整備及び農林水産消費技術センターでの検査分析体制の整備充実等を図る。
  [2]  JAS規格の制定された食品製造等における安全・衛生上の課題点および製造工程上衛生管理等を必要とする主要ポイントについて適性製造基準を策定し,これをJAS制度における承認・認定向上の技術的基準に導入し安全性確保の充実を図る。
  [3]  増大する輸入食品に関し,検査機器の整備等監視体制の一層の充実に努め,安全性の確保を図るとともに,農産物注の残留農薬については,ポスト・ハーベスト(収穫後使用)農薬を含め,食品の安全性確保の観点から順次基準を作成する等適切な対応を図る。
[4]  電気用品,ガス用品,液化石油ガス用品及び消費生活製品に係る安全体制の合理化を行うとともに,その実効を確保するため,規制遵守状況の確認,消費者と事業者双方に対する制度内容等にかかわる情報提供の強化を図る。
  [5]  警告表示を中心とした表示の統一化に係る調査・検討及びこれを踏まえた業種横断的な統一基準の作成,保証書の充実,定期検査等のアフターケアの充実に関する調査・検討,製品舞の表示。取扱説明書の適正化の推進など製品安全性向上対策の充実を図る。
[6]  大都市圏における通勤混雑を緩和し,消費者の快適かつ安全な通勤を確保するため,オフピーク通勤や時差通勤・フレックスタイム制に関する企業への協力要請等を行うことにより、通勤に係る運輸サービスの質・内容の適正化を図る。
[7]  医薬品等の適正使用の推進、医療用具の適正な保守点検の推進及び市販後対策の充実など医薬品等の安全性確保対策の充実・強化を図る。
(3)  苦情処理・原因究明体制の整備
  [1]  商品テスト需要に的確に対応するため、通商産業検査所、国民生活センター等の商品テスト実施機関における商品テスト機器・設備の整備・拡充を図る。
[2]  国及び国の地方機関等における消費者相談窓口について、専門家の配置、原因究明能力を有する機関との連携強化等による相談・あっせん体制の充実を図る。また、都道府県等における製品紛争処理機能の充実を図るため、都道府県等の紛争処理機関に対し製品関連技術専門家等を派遣するなど、その必要性に応じた協力を行う。
[3]  迅速・的確な製品紛争処理機能を確保するため、公正性・中立性に配慮しつつ、民間活力を活用し、現実のニーズに応じて、製品分野別に、技術的・専門的知識を備えた裁判外紛争処理機関の整備を促進する。
[4]  通商産業検査所、農林水産消費技術センター、交通安全公害研究所等国の機関や国民生活センターにおいて、被害者の証明負担を軽減するための原因究明や検査分析を行うため、拡充・強化を図る。
 また、専門的な知見・ノウハウを有した民間検査機関等について、原因究明の受入れ体制の整備を行う。
 さらに、通商産業検査所、農林水産消費技術センター等国の機関や国民生活センターが、各地の原因究明機関を結ぶネットワークの要として、消費生活センター等からの問い合わせに対して、適切な機関を紹介・あっせんできるような体制の整備を行う。
     
2. 消費者取引の適正化
   消費者に関する取引については、商品及び役務に関する十分な情報とともに、適切な取引方法が確保される必要がある。
 このため、独占禁止法等の厳正かつ的確な運用に基づく、公正自由な競争の確保を前提としつつ、計量・規格・表示の適正化を図るとともに、個別具体の事案に応じた取引の適正化を図る。
(1)  計量・規格・表示の適正化
[1]  消費者の本物志向等に対応した表示の適正化を図るとともに、この一環として公正競争規約の設定指導等を行い、規約制度の積極的活用を図る。
[2]  食品の日付表示については、「食品表示問題懇談会」報告、「食品の日付表示に関する検討会」報告等を踏まえ、消費者、関係業者等の意見をも参考としつつ、製造年月日表示から期限表示を原則とする方式に移行するための具体的な検討を行う。
[3]  消費者の適正な商品選択を確保するため、品質表示ガイドラインの設定・普及、特別表示食品適正化認証事業等を通じた総合的食品表示対策を実施する。
  [4]  JAS法の一部改正により導入された、特別な生産方法又は特色ある使用原材料に着目し、これについての基準等を内容とする新たなJAS規格等について、規格等の制定のための調査、制度の啓発普及、品質管理向上対策等の措置を講ずる。
  [5]  JIS規格について、高齢者・障害者を含む生活者・消費者の利便性・安全性の確保を図るための標準化の基礎となるデータの収集・体系化及び試験評価方法の開発を行う。
(2)  具体的取引の適正化
  [1]  いわゆる悪質商法や不正商品問題の多様化、巧妙化及び被害の潜在化に対応して、積極的な取締りを行うとともに関係法令の適正な運用を図る。特に訪問販売等に関する法律については、その施行を担当する都道府県等の職員を対象に研修を行い、同法の厳正な施行に努める。
  [2]  経済社会の変化を踏まえ、各種約款の適正化の方策について総合的な検討を行うための調査を行う。
  [3]  暴力団関係金融の被害から消費者を保護するため、暴力団員による不当に高利な貸付け及び不当な債権取立て行為を、暴力団対策法等により取り締まる。
  [4]  クレジット等の多重債務者問題に適切に対応するため、適正な利用限度額の設定、消費者のプライバシー保護を十分踏まえた「残高情報」の相互交流に向けた体制整備の検討等について、割賦販売審議会の報告等を踏まえつつ、業界における取り組みを推進する。
[5]  いわゆる継続的役務取引については、「継続的役務取引適正化研究会」の報告の趣旨を踏まえ、業界における自主ルールの策定・整備を推進すること等により、取引の適正化を図る。
  [6]  近年の情報通信技術の進展等に対応して、電気通信事業における個人情報保護を図るため、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」に基づき、引き続き電気通信事業者に対する指導等適切な措置を講ずる。
  [7]  旅行業者の登録情報の電算化を行い登録情報を有効に活用し、業務適正化を図ることにより、旅行契約をめぐるトラブルの発生防止に努める。また、ホームステイツアーを取り扱う旅行業者の組織化により、その業務の適正化を図り、トラブルを防止する。
     
3. 消費者教育・情報提供の推進
   消費生活の安定及び向上のためには、消費者の自主的かつ合理的な行動が確保される必要がある。
 このため、消費者教育の一層の推進を図るとともに、消費者への情報提供を積極的に推進する。
(1)  消費者教育の一層の推進
  [1]  消費者教育の総合的な体系の確立、教材、指導者のマニュアル等の作成・配布、消費者教育に関する図書、教材等に関するデータベースの整備等を推進することにより、消費者教育の定着・充実を図る。
  [2]  平成元年3月に改訂された小・中・高等学校の学習指導要領の順次実施に伴い、各種講習会を開催するなど、学校における消費者教育の充実を図る。また、市町村が行う社会教育施設を中心とした事業等を支援することにより、社会教育における消費者教育を推進する。さらに、新人社員に対する研修の活用等を要請することにより、企業における消費者教育の積極的な実施、定着を促進する。
(2)  情報提供の積極的推進
  [1]  消費生活用製品に係る事故に関する情報の収集・提供(事故情報収集制度)の拡充・強化を図るとともに、消費者危害情報等の収集・活用を総合的に推進するため、消費者行政関係省庁等において活発な情報交換を行うなど、一層の連携強化に努める。
  [2]  消費者啓発を積極的に推進するため、毎年5月に全国各地で開催される消費者月間に伴う事業を中心に各種事業を実施する。
  [3]  広域的、全国的な消費者問題に対応するため、全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIONET)の拡充を図り、商品テスト情報や市町村の消費生活相談情報の収集を強化する。
  [4]  国民生活センターにおいて、消費者危害の予防及び拡大防止のため、危害情報の収集・提供体制(危害情報システム)の拡充強化を図るとともに、障害者への消費者情報の提供を充実する。
[5]  食品をめぐる消費者からの相談、消費者への情報提供を充実するため、食品・食生活関連情報のシステム化を図るとともに、「消費者の部屋」の相談情報のネットワーク化等国及び地方公共団体における相談体制を充実・強化する。
[6]  電気通信サービスに関する消費者からの相談等が増加していることに対応するため、新たに設置した電気通信利用者相談室を活用して、消費者相談の充実を図る。
[7]  優良な建設業者・設計者の選定に関する消費者への情報提供を充実するため、データベースを利用して、建設業者及び建築士事務所に関する情報提供を推進する。
  [8]  エコマーク事業、グリーンマーク事業等の積極的推進により、消費者に対する環境保全に関する情報・省エネルギーに関する情報の提供を充実する。
   

 

 

(別紙)
 総合的な消費者被害防止・救済策の推進に係る具体的施策(*は再掲項目)
(1) 民事責任ルールの転換等
*  製造物責任制度をはじめとした総合的な消費者被害防止・救済制度の確立のため、消費者行政関係省庁において行われた検討の成果や、これらの成果を踏まえ経済社会の発展に即応した消費者の保護に関する総合的な方策を策定する視点から検討を行って内閣総理大臣に提出された国民生活審議会意見を踏まえ、関係省庁間で調整を行い、その法制化を含め、所要の措置について早急に具体化を図る。
(2) 被害に係る発生・再発の防止
* [1]  電気用品、ガス用品、液化石油ガス用品及び消費生活用製品に係る安全規制の合理化を行うとともに、その実効を確保するため、規制遵守状況の確認、消費者と事業者双方に対する制度内容等に係る情報提供の強化を図る。
* [2]  警告表示を中心とした表示の統一化に係る調査・検討及びこれを踏まえた業種横断的な統一基準の作成、保証書の充実、定期検査等のアフターケアの充実に関する調査・検討、製品毎の表示・取扱説明書の適正化の推進など製品安全性向上対策の充実を図る。
(3) 裁判外紛争処理機関の整備・充実
* [1]  国及び国の地方機関等における消費者相談窓口について、専門家の配置、原因究明能力を有する機関との連携強化等による相談・あっせん体制の充実を図る。また、都道府県等における製品紛争処理機能の充実を図るため、都道府県等の紛争処理機関に対し製品関連技術専門家等を派遣するなど、その必要性に応じた協力を行う。
* [2]  迅速・的確な製品紛争処理機能を確保するため、公正性・中立性に配慮しつつ、民間活力を活用し、現実のニーズに応じて、製品分野別に、技術的・専門的知識を備えた裁判外紛争処理機関の整備を促進する。
(4) 原因究明機関の整備
*  通商産業検査所、農林水産消費技術センター、交通安全公害研究所等国の機関や国民生活センターにおいて、被害者の証明負担を軽減するための原因究明や検査分析を行うため、拡充・強化を図る。
 また、専門的な知見・ノウハウを有した民間検査機関等について、原因究明の受入れ体制の整備を行う。
 さらに、通商産業検査所、農林水産消費技術センター等国の機関や国民生活センターが、各地の原因究明機関を結ぶネットワークの要として、消費生活センター等からの問い合わせに対して、適切な機関を紹介・あっせんできるような体制の整備を行う。
(5) 情報の収集・提供
* [1]  消費生活用製品等に係る事故に関する情報の収集・提供(事故情報収集制度・危害情報システム)の拡充・強化を図るとともに、消費者危害情報等の収集・活用を総合的に推進するため、消費者行政関係省庁等において活発な情報交換を行うなど、一層の連携強化に努める。
  [2]  製品に係る事故防止及び円滑な被害救済を確保するため、製品の基礎的な知識や取扱説明書・マニュアルの読み方等について副読本としても利用できるような冊子を作成するなど、製品安全に係る消費者教育の充実を図る。
(6) その他
   製品事故に対し、SGマーク制度等それぞれの製品分野で被害救済の機能を果たしている各種の救済制度の適正な整備・充実や周知を図る。



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