消費者行政の推進について


平成4年12月2日
第25回消費者保護会議


 消費者の利益を擁護・増進し,国民の消費生活の安定及び向上を確保することは,現代経済社会における基本的課題であり,政府は,毎年,消費者保護会議において,消費者保護に関わる各般の施策を決定し,その推進に努めている。
 昨年12月3日に開催された第24回消費者保護会議において決定された施策についても,実施ないし検討が着実に進められてきているところである。
 我が国においては,その到達している経済的豊かさを生活の質の向上に結び付け,国民一人一人が豊かさとゆとりを日々の生活の中で実感できる「生活大国」を構築していくことが求められている。そのためには,我が国は,地球的規模の視点から自らの経済社会を見直すとともに,単なる効率の優先から社会的公正にも十分配慮した視点へ,また生産者中心から生活者や消費者をより重視した視点へと考え方を転換していく必要がある。このような中で,本年6月30日,「生活大国5か年計画-地球社会との共存をめざして-」が閣議決定されたが,その中で,充実した消費生活基盤の確立に向け,自立した消費者のための条件整備が重要な課題として位置づけられている。
 消費者行政をめぐる状況をみると,国際化,情報化,サービス化,高齢化等の経済社会の急速な変化の中で,消費者ニーズも多様化・高度化し,これに伴い,新たな形態の商品・サービスや販売形態等が登場し,多種多様な苦情も発生してきている。また,種々の情報についての消費者の関心も広がりを見せている。こうした動向に適切に対処し,消費者が自己責任に基づく自由な選択を行い,より安全かつ豊かな消費生活を営むことができるようにするため,今後とも,「消費者安全の徹底」「適切な消費者選択の確保・推進」「消費者取引の適正化」「消費者支援の強化」を四つの柱として,消費者を取り巻く環境の変化に対応した,積極的な施策を展開していくことが必要である。
 消費者安全の徹底については,本年11月25日の国民生活審議会答申の趣旨を踏まえ,引き続き,総合的な消費者被害防止・救済の在り方について検討を進める必要がある。また,適切な消費者選択の確保・推進のため,計量・規格・表示の一層の適正化を図るとともに,消費者取引の適正化については,トラブルの未然防止及び迅速な解決に向け,積極的な対応が必要である。さらに,消費者支援の強化として,消費者教育や情報提供を一層充実させることや,地球環境問題等の地球規模の課題を視野に入れた消費者啓発を積極的に推進することも重要である。
 政府としては,このような認識の下に,当面下記の事項を重点として,別添「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者保護に関する施策の推進を図ることとする。


1 消費者安全の徹底
     
   消費者安全の徹底については,経済の国際化等が進展する中で,品目の特性に応じた安全対策の推進及び被害者救済策の充実を図るとともに,危害情報等の収集,活用を積極的に行い,危害の防止を図る。あわせて,総合的な消費者被害防止・救済の在り方について検討を進める。
     
  (1) 品目の特性に応じた安全対策の推進
     食品,医薬品,農薬,家庭用品,化学品等のそれぞれの特性に応じた安全確保対策を推進する。
   
[1]  生産から消費にいたる各段階を通じた食品の安全性の確保のため,国内での農薬等の適正使用の徹底,生産,加工,流通,消費の各段階でのモニタリング体制の整備及び農林水産消費技術センターでの検査分析体制の整備充実等を図る。
[2]  JAS規格の制定される食品製造等における安全・衛生上の課題点及び製造工程上衛生管理等を必要とする主要ポイントについて適正製造基準を策定し,これをJAS制度における承認・認定工場の技術的基準に導入し安全性確保の充実を図る。
[3]  増大する輸入食品に関し,食品衛生監視員の増員,検査機器の整備等監視体制の一層の充実{こ努め,安全性の確保を図るとともに,農産物中の残留農薬については,ポスト・ハーベスト(収穫後使用)農薬を含め,食品の安全性確保の観点から順次基準を作成する等適切な対応を図る。
[4]  プレジャーボートを対象とした救助事業を行う機関について,当該事業が適正に行われるよう支援・監督することにより,海洋レジャーの安全を確保するための環境整備に努める。
     
  (2) 危害情報等の収集・活用
     危害情報,事故情報等の広範かつ迅速な収集,分析に努め,これに基づき適切な消費者啓発を行うとともに,その結果を必要に応じて安全施策に反映させることにより,危害の予防及び拡大防止に努める。
   
[1]  消費者の安全意識の高まり等に対応し,国民生活センターにおける危害情報の収集・提供体制(危害情報システム)及び消費生活用製品の欠陥による事故に関する情報の収集・提供体制(事故情報収集制度)の拡充・強化を図る。
[2]  消費者危害情報等の収集・活用を総合的に推進するため,消費者行政関係省庁等において活発な情報交換を行うなど,一層の連携強化に努める。
     
  (3) 消費者危害に関する原因究明・苦情処理体制の整備
     製品の複雑化,多機能化に対応した事故原因究明・苦情処理のための体制整備を進める。
   
[1]  通商産業検査所において事故原因究明技術や安全技術の体系的整備を行う。
[2]  商品テスト需要に的確に対応するため,通商産業検査所,国民生活センター等の商品テスト実施機関における商品テスト機器・設備の整備・拡充を図る。
     
  (4) 総合的な消費者被害防止・救済の在り方の検討
   
[1]  製品にかかる消費者被害防止・救済の在り方については,製品特性,苦情の実態等を踏まえ,産業構造審議会等の場を活用しつつ,消費者行政関係省庁において総合的な検討を行うとともに,国民生活審議会において,これらの成果を踏まえ,経済社会の発展に即応した消費者の保護に関する総合的な方策を策定する視点から,引き続き,製造物責任制度を中心とした総合的な消費者被害防止・救済の在り方について検討を行いおおむね1年以内にその結果を取りまとめる。
[2]  製品関連事故に対し,SGマーク制度等,それぞれの製品分野で被害救済の機能を果たしている各種の救済制度の適正な整備・充実や周知を図る。
[3]  製品等のトラブルを巡る消費者と企業の紛争解決の円滑化を図るため,企業の苦情対応,メーカーと販売店との協力連携,裁判外紛争解決,原因究明及び損害填補等の各々の実態について調査するとともに,これらに係る体制整備について検討を行う。
[4]  製品の安全性確保の観点から,警告表示を中心として表示の統一化について調査・検討を行いつつ,業種横断的な統一基準を作成するとともに,製品毎に表示・取扱説明書の適正化を推進する。
     
2 適切な消費者選択の確保・推進
     
   公正自由な競争を確保し,規格・表示等の一層の適正化を図ることにより,適切な消費者選択を確保・推進する。
     
  (1) 公正自由な競争の確保
   
[1]  公正自由な競争を確保し,適正な消費者の選択を確保・推進するため,独占禁止法等を厳正かつ的確に運用し,消費者利益の増進を図る。
[2]  再販売価格維持行為の適用除外制度については,現在指定されている品目の概ね半数について,原則として平成5年4月1日に指定を取り消すとともに,今回指定取消しの対象とならなかった品目については,平成10年中に見直しを行う。また,再販適用除外が認められる著作物の範囲については,幅広い角度から総合的な検討を行う。
[3]  有名ブランド商品の偽物,ビデオソフトの海賊版等を始めとする知的所有権の侵害に関わる不正商品等の問題が多発しているが,これに対処するため,引き続き積極的な取締りを行うとともに,広報啓発活動を積極的に推進し,公正な競争と適正な消費者選択の確保を図る。
     
  (2) 計量・規格・表示の適正化
     消費者の合理的な選択の確保の観点から,製品及びサービス等の各分野における計量・規格・表示の一層の適正化を図る。
   
[1]  消費者利益の確保等の観点に基づく計量行政審議会の答申を踏まえ全般的な見直しが行われ,平成4年5月に公布された新計量法につき,平成5年11月の円滑な施行を図る。
[2]  最終改訂後10年が経過している日本食品標準成分表の抜本的改訂を図るために必要な調査を実施する。
[3]  特別な生産方法,製造方法等により生産されたことについて特別な表示が付される食品について基準を作成し,認証する制度を検討する。また,食品の表示に関する具体的な問題点を迅速,かつ,的確に把握するための調査を行う。
[4]  JIS規格について,高齢者・障害者を含む生活者・消費者の利便性・安全性の確保を図るための標準化の基礎となるデータの収集・体系化及び試験評価方法の開発を行う。
[5]  国際観光ホテル・旅館の登録基準を見直し,一定水準以上の宿泊施設の整備をより一層促進するとともに,新たに登録ホテル・旅館に関する宿泊情報を提供する機関を指定する。
[6]  民間事業者による様々な気象情報に関するサービスの提供について,情報提供者の技術水準の向上を図るとともに,一般利用者に情報の品質を判断する基準を提供するため,技能検定制度の導入について検討を行う。
[7]  サービス業等における公正競争規約の設定指導を行うとともに,規約制度の普及啓発に努める。
[8]  主催旅行に関する広告の表示基準について消費者保護の観点からより詳細な表示を義務付ける等の見直しが行われたことに伴い,同基準に基づき旅行商品の内容の表示の適正化について旅行業者及び関係団体を指導する。
     
3 消費者取引の適正化
     
   情報化,サービス化,高齢化等の経済社会の変化の中で,消費者をめぐる具体的取引の適正化のために積極的な対応を図る。
     
   
[1]  個別取引については,いわゆる悪質商法の多様化,巧妙化及び被害の潜在化に対応して,積極的な取締りを行うとともに,関係法令の適正な運用を図る。特に訪問販売等に関する法律については,その施行を担当する都道府県等の職員を対象に研修を行い,同法の厳正な施行に努める。
[2]  経済社会の変化を踏まえ,各種約款の適正化の方策について総合的な検討を行うための調査を行う。
[3]  消費者を暴力団関係金融の被害から保護するため,指定暴力団員による不当に高利な貸付け及び不当な債権取立て行為を,暴力団対策法等により取り締まる。
[4]  クレジット等の多重債務者問題に適切に対応するため,適正な利用限度額の設定,消費者のプライバシー保護を十分踏まえた「残高情報」の相互交流に向けた体制整備の検討等の業界における取り組みを推進する。また,割賦販売審議会において実態を調査しつつ幅広い検討を進める。
[5]  近年の情報通信技術の進展等に対応して,電気通信事業における個人情報保護を図るため,「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」に基づき,引き続き電気通信事業者に対する指導等適切な措置を講ずる。
[6]  ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律の適切な運用を図る。
[7]  旅行業者の登録情報の電算化を行い登録情報を有効に活用し,業務適正化を図ることにより,旅行契約をめぐるトラブルの発生防止に努める。また,ホームステイツアーを取り扱う旅行業者の組織化により,その業務の適正化を図り,トラブルを防止する。
     
4 消費者支援の強化
     
   消費者の選択の幅を広げ,より豊かな消費生活の実現を図るため,消費者教育の一層の推進,消費者に対する情報提供の積極的推進等により,消費者に対する支援を強化する。
     
  (1) 消費者教育の一層の推進
   
[1]  平成元年3月に改訂された小・中・高等学校の学習指導要領の順次実施に伴い,その趣旨の実現を図るため各種講習会を開催するなど,学校における消費者教育の充実を図る。さらに,望ましい消費者教育の総合的な体系の確立,教材,指導者のマニュアル等の作成・配布,データベースの整備等を推進し,消費者教育の定着・充実を図る。
[2]  市町村が行う社会教育施設を中心とした事業や婦人団体等の学習・実践活動を推進する事業のうち,モデル的な事業に対して支援をすること等により,社会教育における消費者教育を推進する。
     
  (2) 情報提供の積極的推進
   
[1]  消費者啓発を積極的に推進するため,毎年5月に全国各地で開催される消費者月間に伴う事業を中心に各種事業を実施する。
[2]  苦情相談について,多様化した問題に対処しうる相談担当者等の資質向上に必要な知識及び技法に関するセミナーを,特に首都圏以外の地域において開催する。
[3]  消費者が食をめぐる環境変化に伴う様々な問題に対処し適正な食生活を組み立てる能力を備えるため,食品・食生活関連情報の収集・提供や環境に配慮した食生活等についての啓発を行う。
     
  (3) 地球的規模の課題を視野に入れた消費者啓発等
   
[1]  資源エネルギー問題,地球環境問題に関する消費者の理解を深め,具体的な行動を促すため,消費者行動の在り方についての調査や啓発手法の検討等を含め,種々の普及・啓発事業を推進する。
[2]  再生資源の利用の促進に関する普及啓発,情報提供等を行うとともに,消費者の環境に対する知見の充実に努めるために,再生資源の利用の促進による環境保全上の効果・影響を定量的に評価する。
[3]  環境保全及び資源の有効利用に対する消費者の意識の高揚等を図るため,当該目的に資する商品にマークをつけて推奨する事業を促進し,その普及に努める。
[4]  地球環境保全を目的とする民間活動について,引き続き支援に努める。
[5]  省資源・省エネルギー国民運動の推進のため,都道府県の行う各種啓発事業等を支援し,消費者団体を含む国民の自主的な活動の推進を図る。
[6]  地球環境問題等に取り組む民間海外援助団体を支援する国際ボランティア貯金の普及や寄附金付郵便葉書等の発行及び郵便葉書への再生紙の活用により,環境等の地球的規模の課題に配慮した消費者行動に対する消費者の意識の高揚を図る。
     
  (4) 苦情処理体制の整備等
   
[1]  いわゆる悪質商法及び消費者危害等に関する情報収集・提供体制を強化するため,全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)の充実を図る。
[2]  トラブル情報を中心とする消費者関連情報の収集・整理体制を整備するため,消費者相談室の相談案件のデータベース化及び関係機関との連絡・調整の円滑化を図るための消費者関連情報ネットワークシステムの充実を図る。
     
  (5) 事業者の消費者志向の促進
     消費者志向優良企業表彰制度の定着を図るとともに,企業内の消費者問題に関する専門家の組織的活動を支援・活用すること等により,消費者関連部門の地位向上を始めとする企業の消費者志向体制の一層の整備・充実を促進する。
     
  (6) 消費者意向の反映等
   
[1]  中央のみならず地方の消費者組織との懇談会を開催して,地域特性を踏まえた消費者意見の吸収等を図る。また,消費者組織の活動を支援するため海外の消費者組織の活動内容等に関する情報収集・提供等を図る。
[2]  公共交通機関が提供するサービスの改善に資するため創設した「交通アドバイザー制度」の活用により,利用者の意向を反映した施策の推進を図る。
[3]  高齢者,身体障害者等の視点に立脚した交通体系の在り方等を検討するため,高齢者,身体障害者等の交通実態調査等を行う。また,高齢者,身体障害者が公共輸送機関を利用するに際し身体的負担の軽減及び安全性の向上に資するシステムの開発を行う。



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