消費者行政の推進について(案)

平成3年12月3日
第24回消費者保護会議


 消費者の利益を擁護・増進し,国民の消費生活の安定及び工場を確保することは,現代経済社会における基本的課題であり,政府は毎年,消費者保護会議において,消費者保護に関わる各般の施策を決定し,その推進に努めてきたところである。
 昨年12月4日に開催された第23回消費者保護会議において決定された施策についても,実施ないし検討が着実に進められている。
 我が国においては,その経済的豊かさを国民生活の充実に結びつ付け,生活の豊かさを真に実感しながら,多様な人生設計ができるような社会を実現していくことが求められており,政策,社会システムの視点を消費者や国民生活重視へと転換し,活力と潤いに満ちた「生活大国」作りを進めていく必要がある。その中にあって,消費者行政の重要性は,これまでにも増して高まっている。
 消費者行政をめぐる状況を見ると,国際化,情報化,サービス化,高年齢化等の経済社会の急速な変化の中で,消費者の利便が増進される一方,消費者をめぐる諸問題も複雑化・多様化し,たとえば,製品による消費者危害の発生,青少年,高齢化を中心とした消費者トラブルの発生,地球規模での環境問題といった諸問題も発生してきている。こうした問題に適切に対処し,消費者がより安全かつ豊かな消費生活を営むことができるようにするため,今後とも,「消費者安全の徹底」「適切な消費者選択の確保・推進」「消費者取引の適正化」「消費者支援の強化」を四つの柱として,消費者を取り巻く環境の変化に対応した,積極的な施策を展開していくことが必要となっている。
 消費者安全の徹底のためには,まず,被害の未然防止及び再発防止が重要であるとともに,いったん事故が発生した場合の迅速かつ十分な救済が不可欠であるが,そのためには,事故と被害救済の実態を十分に把握することが必要である。また,消費者ニーズに答える競争原理の確保に努めるとともに,消費者取引の適正化を図るため,消費者トラブルの未然防止及び迅速な解決に向け,取引の実態を踏まえ,積極的な対応が求められている。さらに,主体的な消費者を育成するための消費者教育を一層充実させることや,地球環境への配慮を含め消費者啓発を積極的に推進することも重要である。
 政府としては,このような認識の下に,当面下記の事項を重点として,別添「消費者保護推進の具体的方策」のとおり消費者保護に関する施策を図ることとする。


1 消費者安全の徹底
   
   消費者安全の徹底については,経済の国際化等の進展する中で,品目の特性に応じた安全対策の推進及び被害者救済策の充実を図るとともに,危害情報等の収集,活用を積極的に行い,危害の防止を図る。合わせて,総合的な消費者被害防止・救済の在り方について検討を行う。
     
  (1) 品目の特性に応じた安全対策の推進
   食品,医薬品,農薬,家庭用品,化学品等のそれぞれの特性に応じた安全確保対策を推進する。
   
[1]  増大する輸入食品に関し,食品衛生監視員,検査機器の整備等監視体制の一層の充実に努め,安全性の確保を図るとともに,ポスト・ハーベスト(収穫後使用)農薬を含め,残留農薬については,食品の安全性確保の観点から順次基準を作成する等適切な対応を図る。
[2]  食鳥肉の安全性の確保の観点から公的な食鳥検査を実施する。
[3]  既存化学物質の安全性点検に関して,国内での安全性点検に加え,OECD環境委員会において割り当てられた33物質について,安全性の点検を実施する。
     
  (2) 危害情報等の収集・活用
   危害情報,事故情報等の広範かつ迅速な収集,分析に努め,これに基づき適切な消費者啓発を行うとともに,その結果を必要に応じて安全施策に反映させることにより,危害の予防及び拡大防止に努める。
   
[1]  家庭用品に使用される化学物質による健康被害情報をモニター病院から迅速かつ的確に収集するとともに,その一層の活用を図る。
[2]  消費者の安全意識の高まり等に対応し,国民生活センターにおける危害情報の収集・提供体制(危害情報システム)及び消費生活用製品の欠陥による事故に関する情報の収集・提供体制(事故情報収集制度)の拡充を図る。
[3]  消費者危害情報等の収集・活用を総合的に推進するため,消費者行政関係省庁等において活発な情報交換を行うなど,一層の連携強化に努める
     
  (3) 消費者危害に関する苦情処理体制の整備
   製品被害の苦情相談に関しては,迅速かつ的確な処理に努める。また,公正な苦情処理を行うため,苦情処理テスト機能の充実を行う。
   
[1]  自動車の検査・整備等に関する苦情相談を,短時間で的確に処理する体制の充実強化を図るため,苦情相談事例等のデータベース化を検討する。
[2]  商品テスト需要に的確に対応するため,通商産業検査所,国民生活センター等の商品テスト実施機関における商品テスト機器・設備の整備・拡充を図る。
     
  (4) 各種救済制度の適正な整備・充実等
   
[1]  製品関連事故に対し,SGマーク制度等,それぞれの製品分野で被害救済の機能を果たしている各種の救済制度の適正な整備・充実や周知を図る。
[2]  経済社会の発展に即応した消費者の保護に関する総合的な方策を策定する視点から,国民生活審議会において,製造責任制度を中心として総合的な消費者被害防止・救済の在り方について,引き続き検討を行う。
     
2 適切な消費者選択の確保・推進
   
   公正自由な競争を確保し,規格・表示等に一層の適正化を図ることにより,適切な消費者選択を確保・推進する。
     
  (1) 公正自由な競争の確保
   
[1]  公正自由な競争を確保し,適正な消費者の選択を確保・推進するため,独占禁止法等を厳正かつ的確に運用し,消費者利益の増進を図る。
[2]  有名ブランドの偽物,ビデオソフトの海賊版等を始めとする知的所有権の侵害に関わる不正商品等の問題が多発しているが,これに対処するため,引き続き積極的な取締りを行うとともに,啓発活動を積極的に推進し,公正な競争と適正な消費者選択の確保を図る。
[3]  再販売価格維持行為の適用除外制度について,所用の調査を行い,消費者,関係業界等から広く意見を聞きつつ,指定商品の取消しを含め,抜本的な見直しを行う。また,レコード版,音楽用テープ及び音楽用CDについては,再販が認められる著作物として取り扱うかどうかについて明確にする。なお,書籍・雑誌・新聞については,今後とも実態の把握に努めるとともに,事業者の監視を続ける。
     
  (2) 計量規格・表示の適正化
     消費者の合理的な選択の確保の観点から,製品及びサービス等の各分野における規格・表示の一層の適正化を図る。
   
[1]  消費者利益等の観点から,平成3年8月2日の計量行政審議会の答申に基づき,計量行政の見直しを行う。
[2]  トランクルームサービスの質の向上を図るとともにトランクルームの性能の明確化を図るため「トランクルーム認定制度」を創設し,一般消費者等利用者の利便の増進を図る。
[3]  既存のマリーナ及び今後整備されるマリーナについて,施設のみならず,管理・運営の面でも優れた優良なマリーナを認定し,安全性,利便性の高いものの普及を図る。
[4]  公正競争規約の設定指導を行うとともに,規約制度の普及啓発に努める。
[5]  JAS規格,品質表示基準の制定・改正を行うとともに,有機栽培等青果物等の特別な表示につき,一定のルール化に努める。
     
3 消費者取引の適正化
     
   消費者をめぐる具体的取引については,情報化,サービス化等の動きの中で,これらへの積極的な対応を図る。特に,青少年,高齢者を中心とした消費者トラブルの未然防止に努める。
     
   
[1]  個別取引については,いわゆる悪質商法の多様化,巧妙化及び被害の潜在化に対応して,積極的な取締りを行うとともに,訪問販売等に関する法律関係と関係法令に適正な運用を図り,いわゆる悪質商法に関わる消費者トラブルの解決を図る。
[2]  会員権取引の増加に伴い,ゴルフクラブ,リゾートクラブ等に関わる会員権の取引について,その実態を調査し,その適正化のための施策について検討する。
[3]  高齢者の消費者トラブルの未然防止及び迅速な解決を図るため,関係事業者等の取引実態等を調査し,高齢化に対応した消費者行政の在り方を検討する。
[4]  貸金業者に対し本則金利の遵守を指導するとともに,悪質な違反については所要の取締りを行い,貸金業規制に法の適正な運用を図る。
[5]  証券取引について,引き続き,関係業者等に対し,投資者保護のための指導監督を行っていくとともに,公正な証券市場を確立するための施策を講ずることとする。
[6]  不動産取引が円滑かつ迅速に行われるよう,指定流通機構のオンラインネットワークシステムを活用し,機構の会員業者間の情報交流を推進する。また機構に集積される物件情報や取引データを活用し,不動産流通市場の動向を把握する。
[7]  国民の余暇ニーズの増大と多様化に対応して,国民が低廉で良質な余暇サービスを亨受できるための施策の規格・立案の必要な基礎調査として,余暇関連産業に関して実態調査を行う。
[8]  交通機関・交通関連施設等の業の約款,営業規則類の点検を行い,改善方策を検討する。
     
4 消費者支援の強化
     
     消費者の選択の幅を広げ,より豊かな消費生活の実現を図るため,消費者教育の一層の推進,消費者啓発の積極的推進により,消費者に対する支援を強化する。
     
  (1) 消費者教育の一層の推進
   
[1]  平成元年3月に改訂された小・中・高等学校の学習指導要領が平成4年度から逐次実施されることにともない,その趣旨の徹底に努める。さらに,望ましい消費者教育の総合的な体系の確立,教材,指導者のマニュアル等の作成・配布,データベースの整備等を推進し,消費者教育の定着・充実を図る。
[2]  市町村が独自に行う社会教育施設を中心とした新しいタイプの事業のうち,全国的に普及すべき優れた事業に対して支援をすること等により,地方及び全国における生涯学習の振興を図り,消費者教育を推進する。
     
  (2) 消費者啓発の積極的推進
   
[1]  消費者啓発を積極的に推進するため,毎年5月に全国各地で開催される消費者月間に伴う事業を中心に各種事業を実施する。
[2]  エネルギー需要が増大傾向を示す一方,地球的規模の資源及び環境問題に対する対応が必要になっており,より一層の省エネルギー・省資源意識に普及啓発を実施する。
[3]  再生資源の利用の促進に関する普及啓発,情報提供等を行うとともに,消費者の環境に対する知見の充実に努めるために,再生資源の利用の促進による環境保全上の効果・影響を定量的に評価する。
[4]  環境保全及び資源の有効利用に対する消費者に意識の高揚等を図るため,当該目的に資する商品にマークをつけて推奨する事業を促進し,その普及に努める。
[5]  消費者の環境に配慮した商品選択に資する情報提供を行うため,商品について,その製造から廃棄までを視野に入れた環境への影響を総合的かつ科学的に評価する手法の確立に向けた検討を行う。
     
  (3) 苦情処理体制の整備等
   
[1]  いわゆる悪質商法及び消費者危害等に関する情報収集・提供体制を強化するため,消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)の充実を図る。
[2]  トラブル情報を中止とする消費者関連情報の収集・整理体制を整備するため,相談案件のデータベース化及び地方支分部局等との連絡・調整の円滑化を図るための消費者関連情報ネットワークシステムを構築する。
     
  (4) 事業者の消費者志向の促進
     消費者志向優良企業表彰制度の定着を図るとともに,企業内の消費者問題に関する専門家の組織的活動を支援・活用すること等により,消費者関連部門の地位向上を始めとする企業の消費者志向体制の一層の整備充実を促進する。
     
  (5)

消費者意向の反映等

     中央のみならず地方の消費者組織との懇談会を開催して,地域特性を踏まえた消費者意見の吸収等を図る。また,消費者組織の活動を支援するため海外の消費者組織の活動内容等に関する情報収集・提供等を図る。



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