消費者行政の推進について

昭和61年10月31日
第19回消費者保護会議


 消費者の利益を擁護・増進し、消費生活の安定及び向上を確保することは、現代経済社会の基本的課題である。
 このため政府は、毎年の消費者保護会議の決定に従い消費者保護に係る各般の施策の整備充実に努めてきたところである。昨年11月1日に開催された第18回会議において決定された施策約280項目については、別表の主要項目をはじめとして、現在実施ないし検討が進められている。
 しかしながら、近年、サービス化、情報化、高齢化等経済社会情勢が変化する中で、新たな内容の消費者取引が生じてきており、消費者の利益を擁護していくためには、先見性を持った消費者保護施策の展開が求められている。
 こうした状況を十分踏まえ、今後とも、消費生活における安全の徹底と適正な選択の確保及び消費者取引の適正化をより一層機動的に進めるべきである。さらに、消費者取引が多様化する中では、主体的な生活態度を身につけた「自立する消費者」を育成することが急務であり、このため消費者への支援施策をより充実させるべきである。
 政府としては、このような認識の下に、当面下記の事項を重点として、別添「消費者保護推進の具体的方策」に沿って施策の推進を図ることとする。



1. 消費者安全の徹底
  (1)  品目の特性に応じた安全対策の推進
     食品、医薬品、農薬、家庭用品、化学品、建築物等それぞれの特性に応じた安全規制の厳格な実施等、安全確保対策を推進する。
 この中で、医薬品、食品添加物等については、安全性再点検を進め再点検結果に応じて所要の措置を講じる。
 化学品については、事前審査制度の充実・改善及び事後管理制度の導入により、よりきめ細かな安全確保対策を講ずる。
 いわゆる健康食品については、今後、調査、分析の結果を踏まえ慢性毒性試験の導入を図る。
 また、高齢化の進展に対応して、老人製品関連品目の安全確保対策を促進する。
  (2)  危害情報等の収集・活用
     危害情報、事故情報等の迅速な収集・分析に努め、これに基づき適切な消費者啓発を行うとともに、その結果を必要に応じ安全施策に反映させることにより、危害の予防及び拡大防止に努める。
     
2. 消費者選択の確保・推進
  (1)  公正自由な競争の確保
     独占禁止法の的確な運用を行うこと等により消費者利益の増進を図るほか、消費者ニーズの多様化に対応するため、金融・保険等の許認可業種等について、規制緩和及び競争原理の導入を更に推進する。
 また、不正商品については、引き続き積極的な取締りを推進するとともに、関係業界との連携を強化する等によりその排除に努め、公正な競争を通じた消費者保護を図る。
  (2)  規格・表示の適正化
     消費者の合理的な選択の確保の観点から、JAS、JISの制定、見直しに努めるとともに、食品、医薬品、家庭用品、住宅等それぞれの分野における規格・表示の適正化を図る。
 特に最近の食生活の多様化に鑑み、次の施策を講ずる。まず、いわゆる健康食品については、業界団体において規格基準の設定、表示事業を実施するとともに、新食品等の品質表示ガイドライン設定事業を実施する。また、加工食品については、関係業界を指導し、61年11月に栄養成分表示制度を発足させる予定である。さらに、食品添加物については、62年度内に全面表示化を実施するため所要の検討を行う。
  (3)  不当景品類及び不当表示の規制
     不当な景品類及び不当表示に対する取締りを行うとともに、公正競争規約制度については、その有効かつ適切な運用を図り、必要に応じ規約の設定の指導を行う。
     
3. 消費者取引の適正化
  (1)  サービス化への対応
     経済社会の変化に伴い拡大がみられる新たなサービス取引について、国民生活審議会等においてその適正化のための方策を引き続き総合的に検討する。
 また、その中で、特に約款面からの適正化が必要な取引については、関係省庁及び国民生活審議会等において所要の検討を行う。
  (2)  情報化への対応
     情報化の進展に伴い予想される個人情報の保護等新たな消費者問題について、関係省庁及び国民生活審議会においてその対応のあり方を総合的に検討する。また、消費者信用情報及びダイレクト・メール等の分野については、個人情報保護の観点から、引き続き適切な業界指導を行う。
  (3)  高齢化への対応
     今後一層の拡大が予想される高齢者向けの消費者取引については、適切な高齢者向け住宅、商品、サービスの開発・普及促進等を図り、その健全な発展に努めるとともに、取引適正化のための方策を検討する。
  (4)  その他個別取引の適正化
   
[1]  訪問販売等の適正化
   「訪問販売等に関する法律」の厳正な運用を行うとともに、訪問販売員登録制度の拡充及び訪問販売トラブル情報提供制度の積極的活用を図る。
[2]  消費者信用取引の適正化
   「割賦販売法」及び貸金業規制二法の厳正な運用等により消費者保護の徹底を図る。
 また、多重・多額債務者の更正・救済を図るため、クレジットカウンセリング機関の設立を推進する。
[3]  証券取引の適正化
   日本証券業協会の各種研修等を通じて、適正な投資勧誘を行う等の指導を推進するとともに、「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律」を施行し、有価証券に係る投資者被害の防止を図る。
[4]  海外商品先物取引の適正化
   「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」の厳正な運用を行うとともに、海外商品取引業者に対する指導・監督の強化に努める。
 また、海外商品先物取引を利用した悪質行為による消費者被害を防止するため、不法事犯の取締りの強化等各種法令の厳格な運用を行うとともに、迅速な情報提供及び苦情処理体制の一層の強化を図る。
[5]  宅地建物取引の適正化
   今後とも、「宅地建物取引業法」の的確な運用を図るとともに、特にいわゆる原野商法については、同法の適用されるべき取引に対し行政指導等を行うほか、悪質な事犯の積極的な取締りを行う。
 また、高度情報化に対応して不動産流通市場の整備・近代化を一層促進するために、流通機構活性化モデル事業を実施するとともに、不動産取引に関する紛争の未然防止等を図るため、62年度から(財)不動産適正取引推進機構において宅地建物取引従業者登録制度を実施する。さらに、不動産取引における消費者の信頼性向上対策について、今後の中長期的課題として検討を進める。
 マンション管理については、中高層分譲共同住宅管理業者登録規定による管理業者の育成、中高層共同住宅標準管理規約の普及、(財)マンション管理センターの活用による管理組合等に対する指導・相談体制の整備等を通じて、引き続きその適正化を図る。
[6]  旅行取引の適正化
   今後とも「旅行業法」の的確な運用を行うとともに、苦情処理機関の連携の強化を図る。
[7]  悪質な消費者取引の防止等
   金等の現物まがい取引に対しては、「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」の実効ある運用により、消費者保護を図る。
 また、その他の悪質な消費者取引については、関係省庁との連携の下、その実態の究明に努めるとともに、特に消費者取引に係る経済犯罪が多発傾向にあることから、これに的確に対処するため、関係法令の厳格な運用と併せて悪質事犯の取締り体制を更に強化する。
 なお、抵当証券の問題については、投資家の保護を図る観点から検討を行う。
     
4. 消費者支援の強化
  (1)  「消費者の日」
     「消費者の日」を中心に、多様化する消費者取引に対応した総合的な消費者啓発の展開を図る。
  (2)  消費者啓発の機動的推進
     関係省庁、国民生活センター、地方消費生活センター等を通じて、危害情報、消費者トラブルに関する情報、消費者行政施策の実施状況、比較情報の提供等による消費者啓発を進める。特に、悪質な消費者取引による消費者被害を未然に防止するため、各種媒体等を通じた積極的かつきめ細かな啓発を行う。
  (3)  消費者教育の充実
     消費者が自主的かつ合理的な生活態度を身につけることの重要性に鑑み、学校教育及び社会教育における消費者教育が適切に行われるよう指導する。
 特に、学校教育における消費者教育に関して、適切な参考資料のあり方等その推進のための環境整備の方策を検討する。
  (4)  苦情処理体制の整備等
     苦情処理能力の向上と消費者被害の未然防止を図るため、引き続き、消費生活情報ネットワークの整備を進める。
 また、消費者問題の多様化、複雑化に鑑み、関係省庁において苦情の迅速かつ詳細な把握と適切な処理に努めるとともに、国民生活センターの研修業務の充実を図る。
  (5)  事業者の消費者志向の促進
     事業者の適切な消費者相談の実施及び消費者意向の事業活動への反映のため、消費生活アドバイザー制度等の定着、普及に努めるとともに、(社)消費者関連専門家会議(ACAP)において各種研修を開催する。また、事業者における各業態に応じた苦情処理体制の整備等を促進する。
  (6)  消費者意向の反映等
     消費者、事業者、学界及び行政の四者の参加の下に「消費者問題国民会議」を中央及び地方で開催し、学際的、総合的協議を行うことにより、消費者利益の増進を図る。



(別表) 第18回消費者保護会議決定後現在までに講じた主要な措置

施 策 分 野
現在までに講じた主要な措置
1. 消費者安全の徹底

[1] 医薬品再評価結果の公表及び所要の措置の実施(医療用及び一般用医薬品)

[2] 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の改正及び同法に基づく規制対象範囲の拡大

2. 消費者選択の確保・推進

[1] 金融機関における個人向け金融の円滑化の推進(異種金融機関におけるCDオンライン提携の拡大、消費者金融店舗の創設、金融機関の貸越極度額の引上げ等)

[2] 不正商品に対する取締体制の強化、関係業界、業界団体に対する連携・指導体制の整備、強化(警察庁に不正商品取締官を創設等)

[3] いわゆる健康食品の中で無承認無許可医薬品に該当するものに対する指導取締りの一層の徹底

3. 消費者取引の適正化

[1] 「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」の制定

[2] 市民生活侵害事犯の取締りの強化

[3] 「有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律」の制定

[4] 宅地建物取引の適正化(不動産流通市場の整備、「不動産取引の手引き」の作成、マンション管理の適正化の推進、原野商法についての行政指導等)

[5] 訪問販売トラブル情報提供制度の活用

[6] 「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」に基づく政令指定市場の拡大

[7] 消費者信用情報の管理の適正化の推進

[8] 約款取引の適正化(経済企画庁に約款を主として担当する調査官を創設、登録ホテル・旅館を対象とした「モデル宿泊約款」、標準トランクルームサービス約款及び標準引越・取扱運送約款等の制定等)

4. 消費者支援の強化

[1] 消費生活情報ネットワークシステムの整備

[2] いわゆる悪徳商法に関する高齢者向け啓発の推進

[3] 消費者問題国民会議の開催




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