消費者行政の推進について


昭和60年11月1日
第18回消費者保護会議


 政府は毎年、消費者保護会議において、消費者保護に係る各般の施策を決定し、その推進に努めてきたところである。昨年11月20日に開催された第17回会議において決定された施策約280項目については、実施ないし検討がすすめられている。
 消費者の利益を擁護・増進し、消費生活の安定及び向上を確保するという現代経済社会の基本的要請に応えるためには、経済社会環境の変化に対応した行政の適切な展開が不可欠である。このため、次のような観点から検討を加え、新たなる施策の総合的推進を図ることが重要である。
 即ち、消費生活における安全の徹底と適正な選択の確保を図ることは消費者行政の基本であり今後とも更に推進していくべきである。消費者が自己の選択に基づいて行動しうるようこの点を確保しつつ消費者にとっての選択の幅を拡げることは消費生活の向上に資するものである。
 また、近年における高齢化、サービス化、情報化の進展及び国民所得水準の向上等の経済社会環境の変化並びに消費者ニーズの多様化、高度化等といった状況の中で様々な消費者取引が出現し、取引の過程で消費者トラブルが多発している。特に悪質な商取引による消費者被害は今日大きな社会問題となっており、この問題への対応も含め、消費者取引の適正化を実現するためのより一層の努力が求め られている。
 更に、国際化の進展及び財・サービスや取引形態の多様化のなかで、情報を選択し活用するとともに主体的な生活態度を身につけた、「自立する消費者」を育成するための消費者への支援も新たな展開を要する施策である。
 政府としては、このような認識の下に、当面下記の事項を重点として、別添「消費者保護推進の具体的方策」に沿って施策の推進を図ることとする。



1. 消費者安全の徹底
  (1)  品目の特性に応じた安全対策の推進
     食品、医薬品、農薬、家庭用品、化学品、建築物等それぞれの特性に応じた安全規制の厳格な実施等、安全確保対策を推進する。医薬品、食品添加物等については安全性再点検をすすめ、再点検結果に応じて所要の措置を講じる。また、安全確保対策に関する国際的提携を推進する。
  (2)  危害情報等の収集・活用
     危害情報、事故情報等の迅速な収集・分析に努め、これに基づき適切な消費者啓発を行うとともに、その結果を必要に応じ安全施策に反映させることにより、危害の予防及び拡大防止に努める。
     
2. 消費者選択の確保・推進
  (1)  公正自由な競争の確保
     金融、保険等の許認可業種について競争原理を更に導入するほか、独占禁止法の的確な運用を行うこと等により、消費者利益の増進に資する。
 また、いわゆる不正商品については指導取締体制を強化し、公正な競争の確保を通じた消費者の保護を図る。
  (2)  規格・表示の適正化等
     消費者の合理的な選択の確保の観点から、JAS、JISの制定、見直しに努めるとともに、食品、医薬品、家庭用品、住宅等それぞれの分野における規格・表示の適正化を図り、これらの普及を推進する。特に、いわゆる健康食品については、無承認無許可医薬品に該当するものに対し、更に監視指導等の徹底を図る。また、加工食品の栄養成分表示制度の制度化に向け検討を進めるほか、新食品等の品質表示の実態の分析と消費者への情報提供等を実施する。
 更に、ワインの表示問題への対応も含め、不当な景品類及び表示に対する所要の取締りを行うとともに、公正競争規約制度については、その有効かつ適切な運用を図り、また、必要に応じ規約の設定の指導を行う。
     
3. 消費者取引の適正化
  (1)  悪質な商取引の防止等
     金等の現物まがい取引に対しては、当面、各省庁連携の下、不法事犯の取締りの強化等各種法令の厳格な運用及び迅速な情報提供に努める。更に、消費者被害の防止のための方策について、法制度の整備も含め関係省庁連携の下に検討を進める。
 また、この他の悪質な消費者取引に的確に対応するため実態の究明に努めるとともに、特に消費者取引に係る経済犯罪が多発傾向にあることから、これに的確に対処するため、悪質な事犯の取締り体制を更に強化する。
  (2)  証券取引の適正化
     有価証券取引に係る消費者被害の防止を図る観点から、現行法令の厳格な運用を行うほか、投資顧問業務のあり方について証券取引審議会における検討を進め、その結果を踏まえ所要の措置を講ずる。
 また、適正な投資勧誘に関する業界の研修を推進する。
  (3)  宅地建物取引の適正化
     宅地建物取引業法の的確な運用を図るとともに、特にいわゆる原野商法については、同法の適用される取引に対し行政指導等を行うほか、悪質な事犯の積極的な取締りを行う。
 また、不動産流通機構の活性化等による不動産流通市場の整備を促進するとともに、不動産取引に関する紛争の未然防止及びその適正かつ迅速な処理体制の整備を図る。更に、マンションの管理組合への支援及び管理業者への指導・育成を通じマンション管理の適正化を推進する。
  (4)  訪問販売等の適正化
     「訪問販売等に関する法律」の厳正な運用を行うとともに、訪問販売員登録制度の拡充及び訪問販売トラブル情報提供制度の積極的推進を図る。
  (5)  海外商品先物取引の適正化
     「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」の厳正な運用を行うとともに海外商品取引業者に対する指導監督の強化に努める。
 また、海外商品先物取引を利用した悪質行為による消費者被害を防止するため、不法事犯の取締りの強化等各種法令の厳格な運用を行うとともに、迅速な情報提供及び苦情処理体制の一層の強化を図る。
  (6)  消費者信用取引の適正化
   

 割賦販売法及び貸金業規制二法の厳正な運用等により消費者保護の徹底を図る。

 

(7)

 個人情報の保護

     個人信用情報の整備に当たっては、プライバシーの保護等の徹底が図られるよう業界を指導する。また、その他の分野については、多様な個人情報の収集、利用の実態を把握するとともに、これを踏まえた個人情報の流通に伴うプライバシーの保護等のあり方を検討する。
  (8)  新しいサービス取引の拡大への対応
     高齢化の進展、余暇志向及び資産形成取引の増大、女性の社会進出等に伴い拡大が予想されるサービス取引について、国民生活審議会等においてその適正化のための方策を検討する。
     
4. 消費者支援の強化
  (1)  実効ある消費者啓発の推進
     関係省庁、国民生活センター、地方消費生活センター等を通じて、危害情報、消費者トラブルに関する情報、消費者行政施策の実施状況、比較情報の提供等による消費者啓発を進める。特に、悪質な商取引からの高齢者保護の実効を期すため、各種媒体等を通じた積極的かつきめ細かな啓発を行う。
 また、消費者が自主的かつ合理的な生活態度を身につけることの重要性に鑑み、学校教育及び社会教育における消費者教育が適切に行われるよう指導する。
  (2)  苦情処理体制の整備等
     苦情処理能力の向上と消費者被害の未然防止を図るため、引き続き、消費生活情報ネットワークの整備を進める。
 また、消費者問題の多様化、複雑化に鑑み、関係省庁において苦情の迅速かつ詳細な把握と適切な処理に努めるとともに、国民生活センターの研修業務の充実を図る。
  (3)  事業者の消費者志向の促進
     事業者の適切な消費者相談の実施及び消費者意向の事業活動への反映のため、消費生活アドバイザー制度等の定着、普及に努めるほか、事業者における各業態に応じた苦情処理体制の整備を促進する。
  (4)  消費者意向の反映等
     消費者、事業者、学界及び行政の四者の参加の下に「消費者問題国民会議」を中央及び地方で開催し、四者協調の下に消費者利益の増進を図る。
 また、国際貿易を推進し、さらにこれが消費者利益に資するよう、関係審議会等における消費者代表の拡充等、貿易政策に対する消費者の意見をより強く反映するよう配慮する。



(別表) 第17回消費者保護会議決定後現在までに講じた主要な措置

施 策 分 野
現在までに講じた主要な措置
1. 消費者安全の徹底 [1]医薬品再評価結果の公示及び所要の措置の実施(医療用及び一般用医薬品)
[2]医療用具モニター制度の施行
[3]化学品GLP制度(優良試験所制度)の適用
2. 適正な消費者選択の確保・推進 [1]金融機関における個人向け金融の円滑化の推進(異種金融機関におけるCDオンライン提携の拡大、プッシュホン等を利用した資金移動取引の実施等)
[2]いわゆる健康食品の中で無承認無許可医薬品に該当するものに対する指導取締りの一層の徹底
3. 経済社会環境の変化等に対応した消費者取引の適正化 [1]情報化時代の消費者政策に関する国民生活審議会消費者政策部会報告の公表
[2]改正割賦販売法の施行体制の整備
[3]個人信用情報の管理の適正化の推進
[4]訪問販売トラブル情報提供制度の発足
[5]「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」に基づく政令指定市場の拡大
[6]金等の現物まがい取引に関する積極的取締り、情報提供及び相談の実施並びに検討体制の整備
[7]宅地建物取引の適正化(不動産流通機構の整備、不動産取引の紛争事例のとりまとめ、マンション管理の適正化の推進等)
[8]「標準宅配便約款」の制定・告示
4. 消費者志向体制、消費者啓発の強化 [1]消費生活情報ネットワークシステムの整備
[2]「消費者の部屋」の設置
[3]いわゆる悪徳商法に関する高齢者向け啓発の推進



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