消費者行政の推進について

第16回消費者保護会議
昭和58年11月8日


経 済 企 画 庁 



 経済取引において相対的に弱い立場にある消費者の利益を擁護,増進し,国民の消費生活の安定及び向上を図ることは,現代経済社会における基本的課題である。
 政府は,このような認識の下に,累次の消費者保護会議の決定に従い,各種消費者保護施策の強化,拡充に努めてきたところである。
 昨年11月12日に第15回消費者保護会議を開催して以来,決定をみた施策第280項目については,別表の主要な項目等,概ね順調に検討ないし実施が進んでいる。
 しかしながら,消費者ニーズの多様化,経済のサービス化,市場の国際化の進展等を背景とした消費の内容や環境の変化に応じて,新たな対応を求められている分野が生じている。
 第一に,商品・サービスの多様化,高度化に対応して,消費者安全の徹底や消費者選択に資する施策の一層の充実を図る必要がある。特に,市場の国際化の一層の進展に伴い,消費者行政においても,従来にも増して,消費者の安全その他の利益の確保を踏まえた国際提携が求められている。
 第二に,約款取引の普及や勧誘行為の活発化,取引形態の多様化といった状況の進展に伴い,消費者取引の適正化が消費者行政の重要な課題となっている。特に,販売信用及び金融の両面における消費者信用取引の拡大は著しく,この分野における施策の強化を図る必要がある。
 第三に,消費の内容や環境の多様化が進むなかで,行政における施策の改善充実とともに,消費者が自らすすんで消費生活の安定,向上に努めることが期待されている。政府としては,こうした状況を踏まえ,当面下記の事項を重点として,別添「消費者保護推進の具体的方策」に沿って施策の推進を図ることとする。

1. 消費者安全の徹底

(1) 品目の特性に応じた安全対策の推進
 食品,医薬品,農薬,家庭用品等それぞれの品目の特性に応じた安全規制の厳格な実施に努めるとともに,医薬品,食品添加物等についての安全性再点検を推進し,再点検結果に応じて所要の措置を講じる。

(2) 国際機関への積極的参画等
 国際機関における安全性確保のための活動に積極的に参画することにより,国内及び国外双方における各種試験データの一層の信頼性向上に努める。特に,化学物質については,OECDの優良試険所指針等を踏まえ,我が国における優良試験所認定制度の制定及び運用を行う。
 また医薬品についても,医薬品の安全性試険の実施に関する基準を踏まえ,国際的な試験データの信頼性向上に資する体制の整備を図る。

(3) 危害情報の収集・活用
 危害情報等の迅速な収集,分析に努め,適切な消費者啓発を行うとともに,その結果を必要に応じ安全施策に反映させることにより,消費者危害の予防及び拡大防止に努める。


2. 規格・表示の適正化等

(1) 規格・表示の適正化
 消費者の要望に配慮しつつ適切なJAS.JISの制定,改正に努めるとともに,食品,医薬品,家庭用品,住宅等それぞれの分野ごとに適切な表示の実現を図る。
 特に,食品に含まれる添加物の全面表示について総合的な検討を進めるとともに,加工食品の栄養成分表示制度のあり方についても引き続き検討する。
 次に,保存性が低い等のためにJAS制度になじみにくい地域食品については,地域食品認証制度の普及向上と併せて,地域食品品質表示適正化事業を推進する。
 更に,分譲マンションの居住性能等の適正な表示の実施を図る。

(2) 不当な表示の規制等
 不当な表示及び景品について所要の取締りを行うとともに,公正競争規約制度を有効かつ適切に運用することにより,消費者利益の擁護,増進に努める。
 特に,必要に応じ公正競争規約の設定の指導に努めるとともに,公正取引協議会等に対して,規約の励行及び規約の消費者,関係事業者への普及を図るよう指導する。


3. 消費者取引の適正化

(1) 消費者信用取引の適正化
 産業構造審議会等における検討を踏まえ,商品販売に伴う信用供与の増大及び多様化に対応した消費者保護の徹底を図るための立法措置の具体化について早急に検討を行う。
 また,いわゆるサラリーマン金融問題については,貸金業二法の的確な運用を行うとともに消費者金融市場の市場条件を整備することにより,契約条件の開示の徹底,過剰貸付けの防止,貸付け金利の引下げ等に努める。

(2) 約款取引の適正化
 国民生活審議会等の場において,個別業種約款の適正化について審議を進めるとともに,必要に応じ各種標準約款の見直しを行う。また,我が国における約款規制のあり方についての基本的な考え方等の取りまとめを行う。

(3) 訪問販売等の適正化
 「訪問販売等に関する法律」の厳正な運用を行うとともに,訪問販売員登録制度の拡充及び通信販売業における取引適正化のための努力を促進する。
 また,詐術的な販売行為等による消費者被害の未然防止を図るため,一定の基準に従い悪質な販売業者に関する情報を一般の消費者に明らかにする制度の創設を図る。

(4) 悪質な勧誘行為の防止等
 金の現物取引等と称する悪質な商品取引や海外商品先物取引を利用した悪質行為による消費者被害を防止するため,不法事犯の取締りの強化等各種法令の厳格な運用を行う。
 また,消費者被害の発生状況に対応して,随時迅速な消費者啓発を行う等消費者被害の拡大防止に努める。

(5) 宅地建物取引の適正化
 価格査定マニュアルの改善,標準媒介契約約款の普及等により不動産流通市場の整備を促進するとともに,紛争処理等のための総合的機関の設置の検討を行う等,宅地建物取引に係る苦情・紛争の迅速な処理と未然防止を図る体制の整備を推進する。


4. 消費者志向体制の強化

(1) 消費生活情報ネットワークシステムの整備等
 苦情の迅速な処理と消費者被害の未然防止に資するため,国民生活センターを中核として地方消費生活センターを結ぶ消費生活情報ネットワークシステムの整備を行う。
 また,消費生活相談員の資質の向上を図るため,国民生活センターにおいては,研修業務の一層の活発化に努めるとともに,高度の専門性を要求される相談事項についての苦情処理マニュアルを作成する。

(2) 消費者啓発の推進
 関係省庁,国民生活センター,地方消費生活センター等の相互の連携の強化により,総合的,効率的な消費者啓発に努める。
 特に,消費者取引の複雑化に対応して,契約についての消費者意識の向上を支援するため,各種の契約に関する消費者情報の提供に努める。
 また,学校教育,社会教育を通じて消費者教育が適切に行われるように指導する。更に,「消費者の日」(5月30日)関連施策の拡充について検討を行う。

(3) 事業者の消費者志向の促進
 消費者苦情の適切な処理が行われるとともに,消費者意向が事業活動に反映されるよう,事業者の消費者問題に対する対応の体制整備を促進する。
 特に,消費生活アドバイザー制度等の定着,普及を図るとともに,訪問販売業,通信販売業等における苦情処理窓口の整備を促進する。


(別表)

第15回消費者保護会議決定後現在までに講じた主要な施策

施策分野 現在までに講じた主要な施策
1. 消費者安全の徹底

[1] 「有害物質に含有する家庭用品の規制に関する法律」に基づく有害物質の追加(テトラクロロエチレン等二物質)

[2] 医薬品再評価結果の公示及ひ所要の措置(医療用及び一般用医薬品,動物用医薬品)

[3] 薬事法に基づく化粧品原料基準の追加制定(L-アスパラギン酸等107成分)

2. 規格・表示の適正化等

[1] 食品に含まれる添加物の物質名表示の義務付け(78品目について。着色料等8用途については用途名併記の義務付け)

[2] 分譲マンションの居住性能等の表示手法の取りまとめ

3. 消費者取引の適正化

[1] 「貸金業の規制等に関する法律」等いわゆる貸金業二法の施行

[2] 改正旅行業法に基づく標準旅行業約款の策定

[3] 商品取引所法に基づく貴金属の政令指定(金に銀,白金を追加)

4. 消費者志向体制の強化

[1] 宅地建物取引に関する苦情・紛争の未然防止及び迅速な処理体制の整備の検討(不動産取引紛争処理機構検討委員会提言)

[2] 消費生活アドバイザー制度,繊維製品品質管理士制度等の普及の促進




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