消費者行政の推進について

第15回消費者保護会
昭和57年11月12日

経 済 企 画 庁


 消費者の利益を擁護・増進し,国民の消費生活の安定及び向上を確保することは,現代経済社会における基本的課題である。
 政府は,このような認識の下に,毎年,消費者保護会議において,消費者保護に係る各般の施策を決定し,その推進に努めてきた。
 昨年10月30日に第14回消費者保護会議を開催して以来,決定をみた施策約270項目については,概ね順調に検討ないし実施が進んでいる。これまで実施をみた主な項目としては,消費者安全の分野では,

[1]  食品衛生法に基づく食品添加物の規格基準の改正(BHA及び臭素酸カリウムの最終食品における残留禁止等)
[2]  食品衛生法に基づく器具又は容器包装の規格基準の制定(ナイロン製の器具,容器包装等4規格)
[3]  医薬品再評価結果の公示及び所要の措置(中央薬事審議会薬効再評価答申)
[4]  新医薬品の承認申請等における安全性試験の実施に関する規準の制定
等が挙げられる。
 また,規格・表示の適正化等に関しては,
[1]  日本農林規格(JAS)及び品質表示基準の制定及び改正(豆乳類等)
[2]  日本工業規格(JIS)の制定及び改正(ガス衣類乾燥機等)
[3]  不当景品類及び不当表示防止法に基づく「おとり広告に関する表示」の指定等の施策を実施した。
 次に,消費者取引における消費者利益の確保については,
[1]  「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」の公布
[2]  「旅行業法の一部を改正する法律」の公布(旅行取引の適正化等)
[3]  宅地建物取引の標準媒介契約約款の策定
等を,また,消費者志向体制の強化に関しては,
[1]  消費者被害の円滑かつ迅速な救済に関する国民生活審議会消費者政策部会報告の公表
[2]  消費生活アドバイザー制度,家電修理技術者制度,繊維製品品質管理士制度の普及の促進
[3]  住宅性能保証制度の普及推進
等の施策を講じたところである。
 このように各般の施策の実施をみてはいるものの,消費者利益の擁護・増進のためには,なお引き続き進めるべき施策も数多い。商品・サービスの多様化と高度化,取引形態の多様化や消費者信用の普及等による消費者取引の複雑化,更には消費者の合理的選択意識の高まりといった状況の進展に伴い,一層の施策の強化を図るべき分野が生じている。特に,近時,事業者の消費者志向の促進,消費者啓発の推進とともに,契約内容の適正化,勧誘行為の適正化が消費者行政の重要な課題となっている。
 政府としては,こうした状況を踏まえ,当面下記の事項を重点として,別添「消費者保護推進の具体的方策」に沿って施策の推進を図ることとする。

1. 消費者安全の徹底
  (1)  品目の特性に応じた安全対策の推進
     食品,医薬品,農薬,家庭用品等それぞれの品目の特性に応じた安全規制の厳格な実施に努める。
 特に,食品添加物については,化学的合成品の安全性再評価を進めるとともに,天然品についても安全性の評価を実施し,必要に応じて順次規格基準の制定・改正を図る。
 また,医療用医薬品及び一般用医薬品について,その薬効再評価を進めるとともに,化粧品について薬事法に基づく化粧品原料基準の追加制定を行う。
 更に,化学物質については,国際機関における安全性に関する活動に積極的に参画するとともに,OECDの優良試験所指針,その施行方法等を踏まえ,我が国における優良試験所認定制度の制定を行う。
  (2)

 危害情報の収集・活用

     危害情報等の迅速な収集・分析に努め,適切な消費者啓発を行うとともに,その結果を必要に応じ安全施策に反映させることにより,消費者危害の予防及び拡大防止に努める。
     
2. 規格・表示の適正化等
  (1)  規格・表示の適正化
     食品,医薬品,家庭用品,住宅等それぞれの分野ごとに適切な規格・表示の実現を図るとともに,消費者啓発に努めることにより,その普及を促進する。
 特に,住宅については,住宅部品・建材に関する各種の品質規格・表示制度の普及を図るとともに,良質な住宅を供給するための総合的な技術開発を推進すること等により,住宅性能の規格・表示の適正化に努める。
 また,分譲マンション等の住宅性能の評価表示について所要の検討を進める。
 更に,食品に含まれる添加物の表示について総合的な検討を進めるとともに,加工食品の栄養成分表示制度のあり方についても引き続き検討する。
  (2)  不当な表示の規制等
     不当な表示及び景品について所要の取締りを行うとともに,官公署名を事業所名等に用いる信用誤認表示について,不当な表示として指定することを含め,その規制を検討する。
 また,公正競争規約制度を有効かつ適切に運用することにより,消費者利益の擁護・増進に努める。
     
3. 消費者取引の適正化
  (1)  約款の適正化
     消費者取引に用いられる約款の適正化について国民生活審議会等の場において引き続き検討するとともに,改正旅行業法に基づく標準旅行業約款を策定する。
  (2)

 消費者信用取引の適正化

     割賦販売法の厳正な運用,個品割賦購入あっせん契約に関する指導の徹底を図るとともに,消費者信用産業のあり方について消費者保護の徹底等の観点から引き続き検討を進め,その結果を待って所要の措置を講じる。
  (3)  勧誘行為の適正化
     「訪問販売等に関する法律」の厳正な運用を図るとともに,訪問販売員登録制度の充実及び普及のため所要の措置を講じる。
 また,「海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律」の運用体制の整備及び速やかな施行を行う。
 更に,金の現物取引等と称する悪質な商品取引による消費者被害を防止するため,消費者啓発に努めるとともに,悪質事犯の取締りを強化する。
  (4)  適正な消費者選択の推進
     費者取引の複雑化に対応して,契約についての消費者意識の向上を支援するため,各種の契約に関する消費者情報の提供,消費者保護規程等の周知に努める。
     
4. 消費者志向体制の強化
  (1)  苦情処理体制の強化等
     係省庁,地方公共団体,国民生活センター等の相互間の連携の強化により,商品テスト等の情報の提供,苦情相談の適切・迅速な処理に努めるとともに,消費生活相談員の資質向上のための方策の充実を図る。
 また,宅地建物取引に係る苦情・紛争の迅速な処理体制等の整備強化を図るための方策について検討する。
  (2)

 事業者の消費者志向の促進

     事業者における適切な消費者相談の実施及びこれを通じて把握した消費者の意向の商品・サービスの改善への反映に資するため,消費生活アドバイザー制度,繊維製品品質管理士制度等の定着・普及を図る。
 また,今後における食品企業の消費者対応の基本的な考え方等の取りまとめを行う。
  (3)

 総合的消費者紛争処理制度確立の検討

     消費者被害の未然防止及び迅速・公正な解決に資する総合的な消費者紛争処理制度の確立のための調査・研究を行う。



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