消費者行政の推進について (案)


昭和55年11月14日
第13回消費者保護会議


 経済取引において相対的に弱い立場にある消費者の利益を擁護,増進し,消費生活の安定及び向上を図ることは,現代経済社会における基本的課題である。
 政府は,このような認識の下に,累次の消費者保護会議の決定に従い,各種消費者保護施策の強化,拡充に努めてきたところである。
 しかしながら,商品・サービスの多様化と高度化,訪問販売,消費者信用等の普及による消費者取引の複雑化,更には,合理的選択に対する消費者の意識の高まりといった状況の進展に伴い,一層の施策の強化を図るべき分野が生じてきている。特に,近時,消費者問題は,商品の安全・品質・機能等に係るものから契約,サービスに係るものへとその比重を移す傾向がみられ,契約,サービスの公正化,適正化が行政及び事業者の消費者志向の強化とともに,消費者保護上の重要な課題となりつつある。
 政府としては,今後とも経済社会環境の変化,消費者意識の変貌等に適切に対応しつつ,時代の要請に応じた消費者行政を展開していくこととするが,当面特に下記の事項を重点として,別添「消費者保護推進の具体的方策」に沿って施策の推進を図るものとする。


1. 消費者安全の徹底
  (1)  食品及び食品添加物の安全確保
 食品の安全性の確保及び品質管理の徹底のため,製造,流通過程の監視,指導の強化に努める。また,食品添加物については,化学的合成品の安全性再点検を進めるとともに,天然品についても安全性の評価を行い,必要に応じて順次規格・基準の設定を図る。
 更に,乳,肉等の安全性を確保するため,動物用医薬品について再評価を行い,併せて,その使用基準の設定,普及を図る。
  (2)  医薬品等の有効性及び安全性の確保
 改正薬事法に基づき,医療用医薬品及び一般用医薬品について,その薬効再評価を進める。また,モニター病院,薬局等を通じ医薬品等の副作用情報の収集を推進し,必要に応じ使用上の注意等表示事項の変更,薬局へのフィードバック等の所要の措置を講じる。
  (3)  家庭用品の安全確保
 電気用品取締法,消費生活用製品安全法,有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律等既存法令の対象品目の拡大,技術基準の見直し等を適宜行うことにより,家庭用品の構造上,使用上等の安全の確保を図る。
 また,危害情報の迅速な収集,分析に努め,適切な消費者啓発を行うとともに,その結果を必要に応じ技術基準,表示事項の改善等の安全施策に反映させることにより,消費者危害の予防及び拡大防止に努める。
  (4)  消費者被害救済制度確立の検討
 消費者被害の救済については,わが国における消費者被害救済の実態を商品別,被害類型別に把握するとともに,海外諸国の救済制度調査等を進めることにより,事業者等の売手が危険を負担するという製造物責任の考え方を原則とする総合的な被害救済制度の確立のための検討を進める。
     
2. 規格,表示の適正化
  (1)  規格,表示の適正化
 食品について,JAS制度等の活用により規格化,品質表示の適正化に努める。また,塩分・糖分表示を含めた栄養成分表示制度のあり方について検討を行う。
 電気用品等家庭用品については,家庭用品品質表示法の対象品目の拡大,表示の標準の改正を図るとともに,JIS規格の制定,改正を行う。
 また,医薬品等については,改正薬事法により義務づけられた,経時変化の著しい医薬品等についての使用期限の表示並びにアレルギー成分を含む医薬部外品及び化粧品についてのアレルギー成分表示が適正かつ円滑に実施されるよう所要の指導を行う。
  (2)  不当な表示の規制等
 おとり表示,信用誤認表示等一般消費者に誤認されるおそれのある表示について不当表示の指定を検討するとともに,公正競争規約の認定に当たって苦情処理に関する規定,デメリット表示に関する規定等を設けるよう指導するなど,不当景品類及び不当表示防止法による消費者利益の増進に努める。
 また,テレビを媒体とする広告についてその実態調査を行う。
     
3. 契約の適正化
  (1)  不動産取引の適正化
 改正宅地建物取引業法の運用により不動産取引に関する消費者保護を図るとともに,新たに設立した不動産流通近代化センターを活用して,標準媒介契約約款,中古物件価格査定マニュアルの普及等を推進し,不動産流通の適正化に努める。
 また,瑕疵担保責任期間の延長,住宅性能表示,保証制度について検討を行う。
  (2)  訪問販売の適正化
 事業者に対して事業運営適正化の指導を行うなど,訪問販売等に関する法律の適正な運用に努めるとともに,セールスマンの資質向上のために創設されたセールスマンの登録制度の普及を推進することにより,訪問販売に係るトラブルの防止に努める。
  (3)  消費者信用取引の適正化
 商品販売に伴う信用供与の増大及び多様化が進み,消費者トラブルが増加している現状に対応して,割賦販売法の厳正な運用,個品割賦購入あっせんに関する指導の徹底を図ることにより,その適正化に努める。
 また,これと関連して消費者信用産業のあり方等について総合的な検討を進める。
  (4)  約款取引の適正化
 商品・サービスの内容や取引形態の複雑化に伴い,約款を用いる消費者取引が増加し約款に起因する消費者問題が増加してきていることに対応して,適正な約款のあり方,約款取引適正化のための方策について総合的な検討を進める。
     
4. 消費者志向の強化等
  (1)  消費者行政体制の充実
 苦情相談の適切かつ迅速な処理,消費者選択に資するための啓発及び情報提供の充実,行政施策への消費者志向の的確な反映等に努めるとともに,関係省庁,国民生活センター ,地方消費生活センター等の相互間の連携の強化を図る。
 また,国民生活センターにおいては,引き続き商品テスト・研修施設の整備を進めるとともに,商品テスト誌の発刊により商品テスト情報等の広汎な提供に努め,また,消費生活専門相談員資格認定制度を発足させることにより消費生活センター等の消費生活相談員の資質の向上を図る。
  (2)  事業者の消費者志向体制の整備
 苦情処理体制の整備,公正競争規約の設定,消費者との対話交流の促進等について,事業者に対し引き続き所要の指導を行うとともに,新たに発足させた消費生活アドバイザー認定登録制度を運用するなどにより,事業者の消費者対応の適正化,消費者志向の促進等を図る。



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