消費者行政の推進について


昭和52年10月28日
第10回消費者保護会議


 政府は,毎年,消費者保護会議において,消費者保護に係る各般の施策を決定し,その推進に努めてきたところである。
 経済取引において相対的に弱い立場にある消費者の利益を擁護・増進し,消費生活の安定及び向上を確保するためには,経済社会環境の変化に対応した行政の適切な展開が不可欠であり,このため,次のような視点から検討を加え,施策の推進を図ることが肝要である。

1. 消費者安全の徹底
   消費者安全の徹底は,消費者保護の基本的課題であるが,確保すべき安全につき,消費者の注意能力,安全性向上に要するコスト等を総合的に勘案し,新製品への対応を含め,適切な行政措置を講じる必要がある。
 このため,許可,届出等の事前規制,立入検査等の実施,回収等による危険の拡大防止,被害者の救済のそれぞれの行政措置について,確保すべき安全の性格に応じて,制度及び施策の内容を再点検し,必要な改善を図る必要がある。
 また,安全性向上のための技術研究,開発,商品の流通過程の品質の変化等の防止及び監視の体制の整備に努めることが要請されている。
 さらに,安全の徹底には,消費者の果す役割が大きいことに鑑み,危険情報の収集,提供,取扱い表示等の表示の拡大,改善に特段に配慮する必要がある。
 消費者被害の救済については,売手危険負担の考え方を原則とする総合的な消費者被害救済制度の確立の検討を進める必要がある。
   
2. 経済社会環境の変化に応じた選択の適正化
   消費生活は,引き続き,高度化,多様化してきており,新製品の出現,各種サービスの拡大に,ややもすると行政の対応が立遅れる側面がみられる。
 また,安定成長に伴う競争環境の変化等により,販売方法の多様化,競争阻害要因の増加等がみられる。
 このような事態に対応するためには,消費者行政の各分野において,既存の制度及び施策の迅速かつ適切な展開に努めるとともに,新たな行政措置の検討により,経済社会環境の変化に応じた消費者選択の適正化を図る必要がある。
 特に,市場の拡大と消費者苦情の増大がみられる消費者信用・取引等の約款取引の改善,消費者のストック指向の強まりを反映した住宅における契約,保証,修理等の諸問題の改善には,早急な取り組みが要請されているところである。
   
3. 資源・エネルギーの合理的使用の推進
   資源・エネルギー制約の下において,省資源・省エネルギーは,国民経済上の要請であると同時に,生活の質的向上による消費者利益の確保の観点から,消費者行政の大きな課題でもあり,消費生活の合理化のため,選択,生活方式等の各般にわたり省資源・省エネルギー指向を推進する必要がある。
 このため消費関連機器の省資源・省エネルギー機能の向上,規格化の推進等による生産,流通体制の省資源・省エネルギー指向への誘導に努めるとともに,比較情報等の提供,我が国のエネルギー,食糧等の資源状況に適合した生活パターン確立への誘導のための消費者啓発に努める必要がある。
   
4. 円滑な合意形成及び消費者啓発
   消費者問題の発生する分野は,消費生活の向上とともに拡大を示しており,安全,品質等の確保を求める消費者意識の高まりともあいまって著しくその解決が困難となる場合がある。
 このような事態を回避するためには,問題発生の事前防止に努めるべきは勿論であるが,同時に,苦情処理体制の整備,消費者意向の反映等の措置により,行政及び事業者の消費者指向を強化し,研修,情報提供等による消費者の啓発を図る等,行政,消費者,事業者の相互信頼に立脚した円滑な合意形成を図る体制を確立する必要がある。
 特に,消費者啓発は,消費生活をめぐる経済社会環境の変化のなかでその重要性を増しつつあり,関係省庁における体制の整備,相互連携,国民生活センターの拡充,地方消費生活センターの整備等による消費者啓発体制の確立を進めるとともに,「消費者の日」の設定等により,消費者及び事業者の啓発等に努める必要がある。
   
   以上の視点のもとに,政府としては,当面,別添「消費者保護推進の具体的方策」に沿い,特に下記の事項を施策の重点として,その実施の推進を図るものとする。





1 消費者安全の徹底
  (1)  食品及び食品添加物等
 食品の安全性の確保及び品質管理の徹底のため,製造,流通過程の監視,指導体制の強化に努めるとともに,食品添加物についての点検作業の進捗を図る。また,合成樹脂製の容器包装についての規格基準を追加設定する。
  (2)  農薬及び飼料の安全確保
 農薬について,年次計画に基づき必要に応じ残留基準,安全使用基準を追加設定するとともに,飼料,飼料添加物の評価基準及び規格の設定によりその安全性を確保する。
  (3)  医薬品の再評価の促進等
 医薬品の薬効再評価作業において,医療用医薬品及び一般用医薬品の再評価を進めるとともに,医薬品の副作用情報の収集を推進する。
  (4)  家庭用品の安全確保
 電気用品の安全確保については,規制対象品目を拡大し,安全基準の強化を図る。
 ガス用品については,安全技術の開発,規制対象品目の拡大,安全基準の強化に努めるとともに,大型ガス用品の設置工事の監督体制を整備する。
 その他の家庭用品については,既存法令の活用等はよりその安全性の確保に万全を期する。
  (5)  建築物等の防災対策
 消防法等に基づく防災上の安全措置の徹底に努めるとともに,既存の特殊建築物及び地下街における避難施設の設置促進につき所要の検討を進める。
  (6)  安全関連情報の提供
 危険情報の収集,提供による消費者危害の予防と拡大防止を図るとともに,品質表示,取扱い表示の拡充,改善,消費者啓発の徹底等により,消費者の誤使用等による危害の発生防止に努める。
  (7)  消費者被害の救済等
 消費者に製品による危害が発生した場合,危害拡大防止のためその製品の回収につき,既存法令への回収命令等の規定の導入を含め体制の確立を図る。
 消費者被害の救済については,国民生活審議会消費者保護部会の「消費者被害の救済について(中間報告)」を参考としつつ,売手危険負担の考え方を原則とする総合的な消費者被害救済制度について被害等の実態調査,諸外国の制度調査等の結果を踏え,その確立の検討を進める。
 また,医薬品等の被害者救済制度の検討を促進する。
     
2 経済社会環境の変化に応じた選択の適正化
  (1)  新製品の規格,表示への対応
 食品について,JAS制度の活用等により,規格化,品質表示の義務付の対象の拡大を図るほか,家庭用品の品質表示について,品目の拡大,表示事項の追加,取扱い表示を充実する。
 また,食品に関する天然・自然等の表示の適正化に努める。
  (2)  サービスの多様化,普及への対応
 消費者信用取引の増大及び多様化に対応して,その実態把握に努め,信用供与条件の開示,信用調査の適正化等の講ずべき対策につき総合的な検討を行うとともに,金融サービスについては,消費者ローン約定書の改正につき所要の指導を行う。
 また,技能士制度の活用等によるサービス情報の提供を行うとともに,理美容料金の店頭表示,旅館等の料金表示の適正化に努める。
  (3)  販売方法の多様化等への対応
 「訪問販売等に関する法律」の適切な運用により,訪問販売,通信販売の適正化を図り,連鎖販売取引(マルチ・レベル商法)の弊害の規制に努める。
 ねずみ講については,その危険性等を広く国民に周知させるとともに,これの取締りのため,早急に出資法の改正を含め新規立法を検討する。
 自動販売機の普及に伴う安全,表示等の問題については,消費者保護の観点から,その実態の把握に努め,総合的対策の検討に資する。
  (4)  競争環境の変化への対応
 独占禁止政策の厳正な実施に努め,監視体制の一層の強化を図るとともに,大規模小売店舗法,中小企業分野調整法等の運用については,引き続き消費者利益の保護に十分配慮する。
  (5)  資産形成取引の拡大への対応
 宅地・建物取引に関しては,販売物件の事前検査の励行,取引条件の標準化,アフター・サービス体制,紛争処理体制の整備等の推進に努めるほか,特に中高層共同住宅(マンション)については,管理の適正化が図られるよう努める。
 金融資産取引に関しては,各種情報の提供,約款の見直し等に努めるとともに経営効率化の環境整備を図る。
     
3 資源 エネルギーの合理的使用の推進
  (1)  省資源・省エネルギー型製品の開発,普及
 家電製品,自動車,住宅材料等について,エネルギー効率にすぐれ,耐用年数のながい製品の開発,普及に努めるとともに,省エネルギー効率基準についての検討を行う。
  (2)  消費生活の合理化に対する対応
 アフター・サービス体制の整備,家電製品等の補修用性能部品の最低保有期間の遵守及び周知の徹底,過剰機能,過剰包装の適正化,部品の規格化による互換性の確保等に努める。
  (3)  JIS制度の活用等
 現行規格について,省資源・省エネルギーの観点からの見直しに努め,寿命評価等の試験方法等の規格化を図るとともに,エネルギー消費量等の表示の指導を図る。
  (4)  省資源・省エネルギー関連情報の提供等
 各種マーク,比較テスト情報,食品等の保存方法,日付表示等により,消費者選択の省資源・省エネルギー指向に資する。
 また,消費生活の合理化等により,資源状況に適合した生活パターンの確立を推進するとともに,その一環として,食生活における多獲性魚,米等の消費拡大等の各種消費者啓発に努める。
     
4 円滑な合意形成及び消費者啓発
  (1)  苦情処理体制の充実等
 関係省庁,国民生活センター,地方消費生活センター等における消費者苦情の迅速かつ適切な処理を図るとともに,事業者の苦情処理体制についても消費者窓口の設置の促進,苦情処理基準の設定,消費者との意見交換等につき所要の指導 に努める。
  (2)  消費者意向の反映
 関係審議会への消費者代表の参加を促進するとともに,消費生活にかかわる商品の各種安全性の評価,商品・サービスの料金認可等に関して,消費者に対する広範な情報の提供及び具体的説明に努める。
 また,消費者懇談会の開催,モニター制度の活用等により,行政及び事業活動への消費者意向の反映を図る。
  (3)  消費者啓発の推進
 関係省庁における体制の整備,相互連携,国民生活センターの施設整備,地方消費生活センターの整備等により,消費者行政の実施状況,各種の危険情報,比較情報,マーク,使用上の注意等について消費者啓発体制の確立を進める。
 また,学校教育,社会教育を通じて,消費者教育が適切に行われるよう指導する。
 さらに,経済社会環境の変化に対応して,総合的な消費者啓発の展開を図るため,「消費者の日」の設定等により,消費者の自覚を深めるとともに,行政,事業者の消費者指向を推進する。



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