消費者行政の推進について


昭和49年10月8日
第7回消費者保護会議


 経済取引において相対的に弱い立場にある消費者の利益を擁護・増進し,国民の消費生活の安定及び向上を確保することは,現下の基本的課題である。
 政府は,消費者保護基本法に基づき,消費者保護会議の決定に従い,消費者保護政策の拡充に努めてきたところであるが,なおも消費者の安全と利益を害する問題があとを絶たない。さらに,資源の制約,物価の高騰など消費生活をめぐる新たな条件の中で,行政,事業者,消費者がそれぞれの責務と役割を果しつつ,社会的公正と消費生活の安定を実現することが緊要となっている。
 このような状況に対しては,行政の各分野において,国民福祉優先の原則の下に,消費者利益の増進を第一義とする施策を展開し,従来の消費者保護政策を拡充するとともに,特に,
  (1)  消費者の生命,身体に対する危害を防止するため,危険・事故情報を早期に収集するシステムの確立,安全性総点検の実施等の危険予防を基本方針とした施策を充実するとともに,万一,消費者被害が生じた際には,その効果的な救済を図ること。
  (2)  資源制約という新しい事態に適応して生産,流通,消費の各段階について,消費生活の質的充実を目指した省資源を徹底するとともに,広く商品・サービスの各分野にわたって,競争条件の整備,消費者契約の適正化など,消費者選択の権利を守り, 消費者利益を増進すること。
  (3)  消費者の意向を的確に反映し,消費者,事業者,行政が互いに信頼を確立するため,行政,事業者の消費者指向体制を整備するとともに,消費者の啓発,組織化の推進を図ること。
が必要である。
 なお,近時の傾向として,衣・食・住にわたる消費生活のうち,特に住生活の基本となる住宅建築に対して消費者の強い関心が集まりつつあることにかんがみ,土地対策を含めて住宅政策を全般的に拡充強化するとともに,特に消費者保護の観点から,次の諸点を中心として関係行政機関が緊密な協力の下に検討を進め,改善措置を講ずる必要がある。
  (ア)  住宅建築契約の内容の改善と明確化
  (イ)  住宅の品質,性能,施工の改善,向上
  (ウ)  アフターサービスの充実
  (エ)  住宅ローン,財形制度の拡充,改善等による住宅の建築・購入資金の確保
  (オ)  相談・苦情処理体制の整備
 このため,政府としては,当面別添「消費者行政推進の具体的方策」に沿い,特に下記の事項に留意して施策の推進を図るものとする。   

1 消費者安全の徹底
  (1)  危険情報システムの確立
 消費者危害の予防と拡大防止を図るため,商品による事故,食品・食品添加物の安全性,医薬品の副作用,農薬・微量重金属の毒性等に関する内外の情報を,関係機関,消費者等から積極的に収集し,これに基づく所要の安全対策をすみやかに講ずるための,事故情報収集システム等の危険情報システムを整備,確立する。
  (2)  食品及び添加物の安全性点検
 食品の監視体制を強化するとともに,食品添加物については,新しい技術水準の下で点検を行い,必要に応じ,使用の制限,禁止等の措置をすみやかに講ずる。なお,食品添加物フリルフラマイド(AF2)の使用禁止に伴う食中毒予防対策に万全を期する。
  (3)  飼料の安全確保
 飼料が畜産物を通じて人の生命,健康に危害を与えないよう,特に飼料および飼料添加物について,規格・基準を作成して安全性の厳格な審査,検査を行うこと等を内容とする飼料の品質改善に関する法律の改正案を,次期通常国会に提出する。
  (4)  医薬品の再評価の促進等
 医薬品等の効能,効果,副作用等について,最新の医学,薬学のレベルの下で再検討,再評価を急ぐとともに,医薬品の製造及び品質管理面における安全対策の強化のための具体的基準(GMP)を策定する。
  (5)  危険な家庭用品の規制
(ア)  電気用品,ガス用品,身のまわり品その他の消費生活用製品について,使用上の安全を確保するため,安全基準の見直し及び規制対象品目の追加を行うとともに,消費者の使用上危険な商品については,諸外国と連携しつつ,危険性識別のための特別の表示の準備を進める。
(イ)  家庭用品に含有される有害物質についての規制基準の拡充を図る。
(ウ)  洗済の毒性の試験研究を行い,必要に応じ規格基準を設定する。
(エ)  既存化学物質の安全性総点検を促進する。
  (6)  建築物等の防災対策の徹底
 不特定多数の者が利用する建築物等の安全を確保するため,消防法に基づく防火上の安全措置の徹底を図るとともに,既存の特殊建築物及び地下街における避難施設の設置義務づけ等を内容とする建築基準法改正の実現を図る。
  (7)  消費者被害の効果的救済制度の創設
(ア)  消費者被害を効果的に救済するため,売手危険負担の考え方を原則とする総合的な消費者救済制度の早急な確立を図るための調査を推進する。
(イ)  食品,医薬品,医療等に係る被害者救済・紛争処理制度の創設に必要な調査検討を進めるとともに,家庭用品等に係る民間自主の救済措置の普及を推進する。
2 資源制約等新しい環境下の消費者利益の確保
  (1)  資源の合理的使用の推進
(ア)  エネルギー効率の優れた民生用機器,実用的な家庭用品等の普及を促進するとともに,家電製品・自動車等の過度なモデルチェンジの自粛,過大広告・過剰包装の是正等の指導を行い,浪費刺激的販売行為を規制する。
(イ)  家電製品等について,アフターサービス体制の整備,補修用部品の保有期間延長等の指導を徹底し,家庭における消費財の長期間使用を可能ならしめるとともに,古紙,廃家電製品,廃プラスチック,廃車等の回収,再生事業を推進する。
(ウ)  国民の間に高まりつつある「節約」の気運を基盤として,「資源とエネルギーを大切にする運動」の全国的展開を図るとともに,その一環として,国民生活センター,地方消費生活センター,生活学校等を活用して,資源制約下における消費生活のあり方に関する消費者啓発を行う。
  (2)  預貯金の優遇等
 物価高騰等消費生活をめぐる環境の変化にかんがみ,預貯金の金利のあり方等について検討を行うとともに,簡易生命保険の保険金最高限度額の引き上げを検討する。
  (3)  特殊販売の規制その他契約の適正化
(ア)  通信販売,訪問販売,マルチレベル商法等のいわゆる特殊販売及びねずみ講について,法的措置を含め,必要な規制措置を検討する。
(イ)  契約行為に習熟していない一般消費者を保護するため,民間建設工事標準請負約款の改正等による住宅建築契約の適正化その他保険,証券取引等サービスに関する諸契約等の改善を図るほか,委託者債権保全措置の充実等を内容とする商品 取引所法の改正案を次期通常国会に提出するとともに,商品取引に伴う危険性のPR等に努める。
  (4)  公正自由な競争の促進
 不当な取引制限等による消費者被害の防止の徹底を期するため,競争促進等の観点から独占禁止法の見直しを行う。また,購買意欲を過度にそそる景品類の提供行為の規制等を検討する。
  (5)  計量法の見直し
 計量販売の推進,正味量表記の促進を図るとともに,計量法について,消費者保護等の観点から,全面的な再検討を行う。
3 消費者指向体制の整備
  (1)  消費者意向の行政への反映
(ア)  消費者と行政とのコミュニケーションを深め,消費者意向を積極的に行政に反映させるため,引き続き,関係審議会への消費者代表の参加,商品・サービスの料金認可等に際しての具体的理由の説明等を促進する。
 また,各種モニター制度の活用,消費者大会の開催等により,公聴活動を強化する。
(イ)  行政機関,国民生活センター,地方消費生活センター等の消費者苦情処理体制を拡充強化し,増大する消費者苦情の迅速な処理を行うとともに,これらの苦情内容を参考として,行政の改善を図る。
  (2)  地方消費者行政の充実
 消費者と密着した行政主体である地方公共団体における消費者行政を強化することとし,とくに市町村を中心とする地方消費者行政について,消費生活相談,情報提供,消費者啓発等の充実を図る。
  (3) 消費者啓発の推進等
(ア)  学校,社会における消費者教育が適切に行われるよう指導するほか,特に一般主婦を対象とした資源制約下の合理的な消費生活のあり方に関する消費者啓発活動を充実する。
(イ)  消費者,消費者団体に消費生活に関する情報を積極的に提供するとともに,消費者団体等が行う資源節約運動等に対して助成する。
(ウ)  消費生活協同組合の育成を図るため,政府関係金融機関等の融資の拡充に努める。
  (4)  事業者の消費者指向体制の整備
 事業者側における消費者指向体制を強化するため,苦情処理体制の整備,対話による消費者意向の反映,公正競争規約の認定,広告向上指針の作成その他の広告に関する自主規制措置等について,引き続き必要な指導を行うとともに,事業者責任の強化など消費者保護強化の視点に立った企業の社会的責任を明確にする。



▲ ページの先頭へ | 消費者保護会議総覧へ