消費者の窓
消費者契約法検討委員会とりまとめ報告

第17次国民生活審議会消費者政策部会消費者契約法検討委員会報告
消費者契約法検討委員会審議経過
消費者契約法検討委員会委員名簿



消費者契約法(仮称)の具体的内容について

平成11年11月30日
消費者契約法検討委員会


第1 消費者契約法制定の緊急性

 現在,わが国では,国民の自由な選択を基礎とした公正で自由な競争が行われる市場メカニズム重視の社会の実現を目指して,規制緩和・撤廃が推進されているが,もとより,規制緩和・撤廃は,無責任な自由放任や弱肉強食の社会を目指すものではない。公正で自由な競争が行われる市場メカニズム重視の社会を実現するためには,規制緩和の時代にふさわしい「消費者のための新たなシステムづくり」を行うことが大きな課題となっている。

 消費者契約(消費者が事業者と締結した契約)に係る民事ルール(消費者契約法(仮称)。以下「消費者契約法」という。)の整備は,現在規制緩和が着実に進展している中で「消費者のための新たなシステムづくり」の上で最も重要な緊急の課題となっている。


第2 審議の経過

 消費者契約の在り方については,国民生活審議会において数次にわたり調査. 審議が行われてきたところであるが,これらの調査, 審議を受け, 第16次国民生活審議会消費者政策部会(平成9年5月~平成11年2月)では,「消費者契約法(仮称)の制定に向けて」と題する報告書(平成11年1月。以下,「第16次部会報告」という。)をまとめ,「我々は,消費者と事業者との間で締結される契約を幅広く対象としてその適正化を図るため,具体的な民事ルールを規定する消費者契約法をできる限り速やかに制定すべきであると考える。」との総括判断が示された。同時に立法に当たって更に詰めるべき論点についても指摘された。

 第17次国民生活審議会(平成11年4月~)では,第16次部会報告を踏まえ,消費者契約法の具体的内容について,国民的合意の早急な形成を目指すこととし,早期の立法化を実現するため,消費者政策部会の下に,幅広い関係者によって構成される消費者契約法検討委員会を設置して,消費者契約に関する重要事項,無効とされるべき契約条項の内容,適用対象の範囲など残された課題について,具体的な検討を実施し,平成11年末を目途に取りまとめを行うこととした。

 消費者契約法検討委員会では,平成11年6月より合計11回の会合を開き,取引の実情やトラブルの実態等を踏まえ,公正で予見可能性の高いルールを策定するという観点から,立法によって措置するにふさわしいものを採用すべく検討を行った。

 こうした様々な観点からの検討を経て,本委員会は,消費者契約法を制定するに当たっての基本的な考え方について,次のような結論を得たので,報告する。

 今後,消費者契約法の制定に当たっては,本報告の趣旨を尊重して早急に立法が行われることを期待する。併せて,公正で予見可能性の高いルールを策定する観点から,法律の規定の仕方についてさらに検討し,その内容をできる限り明確なものとするよう一層の努力を行うとともに,その解釈を解説書等で明らかにするなど様々な工夫を通じて,法律の内容の周知徹底を図ることを期待する。特に, 本法の制定によって現在民法その他により消費者が持っている権利は何らの制約を受けないことについては,十分周知徹底する必要がある。さらに, 本法が趣旨通り機能するようにその具体的内容を踏まえて,必要な消費者教育の在り方などについて十分検討し,適切な対策がとられるべきである。

  また,以下の「消費者契約法を制定するに当たっての基本的な考え方」は,本法の制定が緊急の課題であることに鑑みて当委員会として消費者契約を広く対象としたルールとして緊急に立法すべきものとして概ね共通認識が得られたものをまとめたものである。必ずしも共通認識を得るに至らなかったものについては,本法の施行状況もみながら,さらに検討することが望まれる。


第3 消費者契約法を制定するに当たっての基本的な考え方

 市場取引においては基本的には契約自由の原則が妥当し,契約が有効に成立することによって当事者双方は,権利を得又は失い,義務を負い又は免れることになる。こうした契約による権利義務関係の実現に当たっては,消費者,事業者双方の自己責任に基づいた行動が必要である。そして,このことは,規制の緩和が進展する中で,より一層求められることとなる。

 しかしながら,消費者と事業者の間にある情報,交渉力の格差は, 事業者の規模等によっても程度の差はあるが,消費者に自己責任を負わせることが適当でない状況をもたらすこともあり, このことが,消費者が事業者と締結した契約において発生する紛争(トラブル)の背景となっていることが少なくない。

 こうした点を踏まえ,本法は,消費者に自己責任を求めることが適当でない場合のうち,消費者が事業者と締結した契約について,トラブルの実態,取引の実情を踏まえ,契約締結過程及び契約条項に関して消費者が契約の全部又は一部の効力を否定することができる場合を新たに定めようとするものである。

  このような特別の定めを置くことによって,消費者が事業者と締結する契約に係る紛争の公正かつ円滑な解決に資するものと考えられる。また,このことは,ひいては紛争の発生防止にも寄与することが期待される。

 その際には,第16次部会報告においても述べられている通り,本法によって,事業者にとって事業活動に即してどのような行為をするとどのような効果が生じるのか,また,消費者や紛争解決に携わる消費生活相談員等にとってどのような場合にどのような救済が新たになされうるのかが,できる限り明確となるような規範であることが求められる。もとより,本法の基本的性格は裁判規範であるが,裁判外紛争処理の指針ともなる予見可能性の高いものであることが必要である。

 以下は,消費者契約の締結過程に係るトラブルについて, 事業者の不適切な行為を網羅したものではなく, 本法の趣旨に照らし,意思表示の瑕疵(事業者の不適切な行為によって消費者の自由な意思決定が妨げられたこと)として「取消し」という権利を民法の詐欺・強迫(民法第96条)に加えて消費者に新たに付与するに相応しい行為についての考え方を示すとともに, 消費者契約の契約条項に係るトラブルについて, 事業者間契約で使用されていれば必ずしも無効とする必要はないが,消費者が事業者と締結した契約において使用されていれば効力を否定することを相当とする条項を定め,予見可能性を十分確保できるよう明確化を図るものである。


I.適用範囲

 消費者契約法は,消費者が事業者と締結した契約(=消費者契約)を幅広く対象とすることとする。

 消費者契約とは,例えば,当事者の一方(=事業者)のみが,業として又は業のために締結する契約とすることが考えられる。

[説明]

1 消費者契約法は契約を対象とし,契約に基づくものと考えられない法律関係については適用しない。

2 事業者の契約の相手方が法人の場合は,消費者契約としない。消費者契約における事業者の相手方たる個人(自然人)を「消費者」と考えることができる。

3 消費者が事業者に財,役務又は権利の提供を行う契約についても,消費者契約法の対象とする実益があると考えられる。

4 業とは,営利を目的とした事業に限らず,自己の危険と計算によって,一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に行うものを広く対象とする。社会通念に照らし客観的に事業の遂行とみることができる程度のものをいう。

5 労働者が事業者の業に対して労務に服する契約(労働契約)については,労働は他人(事業主)の業の中に位置づけられ,労働者が自己の危険と計算によらず他人(事業主)の指揮命令に服するものであることから,労働者が「業として」締結する契約とはみなさないが,消費者契約とはしない。また,労働者が労務に服するために必要な財・役務等を購入する契約は「業のために」締結する契約とはみなさない。

6 具体的には以下のような契約が対象となると考えられる。

 ア 財,権利の売買,交換,贈与,信託

 イ 財の賃貸借,使用貸借

 ウ 金銭の消費貸借

 エ 金銭の交換,贈与,信託

 オ 請負,委任,寄託等の役務の提供・利用

 カ 権利(担保物権,用益物権等)の設定行為,保証 等

 上記ア~カの契約のみならず,これらに関する混合契約やその他の契約についても当然に対象に含まれる。


II.消費者契約の当事者の努力規定

 事業者は,消費者契約の条項を定めるに当たっては, 当該契約の範囲及び当該契約による権利義務を明確にするとともに,分かりやすいものにするよう配慮しなければならないものとする。また,当該契約の範囲及び当該契約による権利義務の内容について契約の相手方となる消費者の理解を深めるために必要な情報を提供するよう努めなければならないものとする。

 消費者は,消費者契約を締結するに当たっては,事業者から提供された情報を活用し,当該契約の範囲及び当該契約による権利義務の内容について理解するよう努めるものとする。

[説明]

1 上記を法定する場合にも,民法を用いてこれまで展開されてきた理論,とりわけ情報提供義務違反を理由とする損害賠償に関する法理論について,変更が加えられるものではない。

2 消費者有利解釈の原則(事業者が契約条項を一方的に定めた場合であって,契約条項の意味について疑義が生じたときは,消費者にとって有利な解釈を優先するという原則)については,「作成者不利の原則」からいっても,法的ルールとして消費者に最も有利な解釈が優先されることは,公平の要請の当然の帰結であると考えられるが,特定の解釈原則が法定されることによって,安易にこの解釈原則に依拠した判断が行われ,真実から遠ざかることになるおそれがあることを考慮する必要がある。また,裁判外での相対交渉への影響を懸念する意見もあった。


III.契約締結過程

(1) 要件及び効果

 消費者は,事業者の下記(1)に該当する行為により誤認したことによって,又は,事業者の下記(2)に該当する行為により困惑したことによって,消費者契約を締結したとき,当該消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を取り消すことができるものとする。

(1) 誤認

 当該消費者契約の締結の勧誘に際し,次に掲げるもののいずれかに関する事項であって,消費者が当該消費者契約を締結する判断に影響を及ぼす重要なものにつき,不実のことを告げ,将来の見込みについて断定的な判断を示し,又は告知した事実に密接に関連する消費者に不利益な事実を故意に告げない行為

 ア.当該消費者契約の対象たる財,権利又は役務の質,用途その他の内容

 イ.当該消費者契約の対象たる財,権利又は役務の対価その他の取引条件

 ウ.当該消費者契約の消費者の解除権の有無

(2) 困惑

 当該消費者契約の締結の勧誘に際し,当該消費者がその住居若しくは就業場所から当該事業者に退去するよう求める旨の意思を示したにもかかわらずこれらの場所から退去しない行為又は当該事業者が勧誘をしている場所から当該消費者が退去したい旨の意思を示したにもかかわらず当該消費者の退去を困難にする行為。

[説明]

1 消費者契約法においては,不実告知等の対象となる「重要事項」を可能な限り明確に示し,重要事項の範囲を明らかにすることが必要である。その場合,上記のように各業種の実態を踏まえた上で,共通した事項を示すことが有益である。

2 「消費者契約を締結する判断に影響を及ぼす重要なもの」とは,「契約締結の時点の社会通念に照らし,当該消費者契約を締結しようとする一般平均的な消費者が当該消費者契約を締結するか否かについて,その判断を左右すると客観的に考えられるような,当該契約についての基本的事項」(平成11年1月 国民生活審議会消費者政策部会報告)を指す。それに当たるか否かは,その通常予見される契約の目的を考慮して判断されるものである。

3 「不実」とは,真実又は真正でないこと,事実と相違することをいい,評価の言説であって客観的な事実によって真実と相違するか否か判断不能なものは,本類型には該当しない。

4 「消費者に不利益な事実を告げない行為」については,故意等の事業者の主観的要件の要否,故意を要件とする場合のその故意の内容等に関し,共通の認識が得られなかった。故意の内容については,「消費者を誤認させる目的で」,「消費者が誤認していることを認識しながら」,「当該事実が消費者にとって不利益であることを知っていながら」,「当該事実を消費者が認識していないことを知っていながら」などの意見があった。また,「告知した事実に密接に関連する」の要件については,商品の展示,書面の備え置きだけでは,「告知した」ことには当たらないと考えられる。一方,「告知した事実に密接に関連する」ものに限定する必要はないとの意見もあった。

5 不実告知及び断定的な判断の提供を行う手段としては,

 (1) 口頭による説明
 (2) 商品,包装,容器への表示
 (3) 説明書等書面の交付
 (4) 電話,書状等通信による伝達

 など,当該消費者との契約締結のための勧誘に際し,事業者が当該消費者に対して用いる手段を広く対象とすることが考えられる。

6 ウの「解除権」には,法定又は約定の解除権,解約告知権及び申込みの撤回権を含む。

7 財とは,民法において物とされる有体物に加え,無体物を含めた概念である。立法例では商品と表現されることが多い。

8 「意思を示した」とは,客観的に「意思を示した」といえるものであれば言語によると,動作(例えば,「勧誘されている場所から離れ,他の場所に行こうとした場合」)によるとを問わない。

9 (1)の重要事項の範囲については,上記ア.イ.ウ.に限定せず,ア.イ.ウ.は,例示にとどめてはどうかとの意見もあった。また,(2)の事業者側の行為の類型については,事業者が勧誘に際し威迫したことにより消費者が困惑した場合や,事業者が目的を隠匿して消費者に接近した場合等も対象とすべきとの意見もあった。

(2) 第三者が契約締結に介在する場合の取扱

 事業者が第三者に対し,消費者に対して当該消費者契約を締結する旨勧誘することを依頼(以下,単に「依頼」という。当該第三者(当該第三者が依頼する別の第三者を含む。)が別の第三者に依頼する場合を含む。)し,当該第三者が1)(1)(2)において定められた行為を当該消費者に行ったことによって,当該消費者が誤認したことによって又は困惑したことによって当該消費者契約を締結した場合には,当該消費者は当該消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を取り消すことができるものとする。

[説明]

 契約締結に関して,第三者が代理人又は復代理人として選任されている場合,代理人又は復代理人のした法律行為の効果は直接事業者本人に帰属するため,代理人又は復代理人が1)(1)(2)において定められた行為を当該消費者に行った場合にも当然に当該消費者は当該消費者契約の申込み又は承諾の意思表示を取り消すことができる。

(3) 第三者への対抗

 (1)(2)の規定により定められた取消しは,これをもって善意の第三者に対抗することができないものとする。

[説明]

 動産及び有価証券の善意取得並びに不動産の登記制度及び自動車等の登録制度の対抗力については民法及び商法等の規定通りとする。

(4) 行使期間の制限

 1)2)の規定により定められた取消権は,追認をすることができる時から6カ月これを行わないときは,時効によって消滅するものとする。当該消費者契約の締結の時から5年を経過したときも,同様とする。

[説明]

1 取消権者,取消しの効果,取り消すことができる行為の追認,取消し・追認の方法,追認の要件及び法定追認については民法の規定(第120条~第125条)によるものとする。

2 上記の「追認をすることができる時」とは,当該消費者が,1)(1)で定められた行為によって誤認したことに気付き,又は,1)(2)で定められた行為を免れた時である。


IV.契約条項

(1) 無効とすべき不当条項

 消費者契約において,次のような契約条項を無効とする。

(1) 「当該消費者契約に関して,当該事業者,その代表者,代理人又は使用人その他の従業者の過失による債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除する条項」

(2) 「当該消費者契約に関して,当該事業者,その代表者,代理人又は使用人その他の従業者の故意又は重過失による債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を制限する条項」

(3) 「当該消費者契約に関して,当該事業者,その代表者,代理人又は使用人その他の従業者の過失による不法行為により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除する条項」

(4) 「当該消費者契約に関して,当該事業者,その代表者,代理人又は使用人その他の従業者の故意又は重過失による不法行為により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を制限する条項」

(5) 「当該消費者契約に関して,当該消費者契約が有償契約であるとき,契約の目的物の隠れた瑕疵(請負契約の場合,「契約の目的物の隠れた瑕疵」を「仕事の目的物の瑕疵」と読み替えるものとする。以下同じ。)により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除する条項(契約の目的物の隠れた瑕疵に係る瑕疵修補請求権及び代物請求権を免除している場合に限る。但し,契約の相手方である事業者が複数となる消費者契約において,ある事業者が契約の目的物の隠れた瑕疵に係る瑕疵修補若しくは代物提供を当該消費者に行い,又は当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任を負う場合を除く。)」

(6) 「当該消費者契約に関して,当該事業者が所有する土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除する条項」

(7) 「契約の解除に伴う消費者の損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める場合に,これらを合算した額が,事業者に通常生ずべき損害を超えることとなる条項」

(8) 「消費者が契約(金銭を目的とする消費貸借を除く。)についての対価の全部又は一部の支払の義務を履行しない場合(契約が解除された場合を除く。)の損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める場合にこれらを合算した額が,契約についての対価に相当する額から既に支払われた額を控除した額にこれに対する年14.6%による遅延損害金(日歩4銭)を超えることとなる条項」

(9) 「その他,正当な理由なく,民法,商法その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合よりも, 消費者の権利を制限することによって又は消費者に義務を課すことによって, 消費者の正当な利益を著しく害する条項」

[説明]

1 上記(1)から(8)は,契約の主要な目的及び価格以外の条項について,トラブルの実態等を踏まえ,およそ消費者契約において効力を認めることが適当でないものを明確な要件によって定型的に定めるものである。

2 契約の主要な目的及び価格に関する条項など(1)から(9)に当てはまらない条項の効力については,民法(公序良俗違反,信義則違反,権利の濫用等)による。

3 上記に掲げられた無効とすべき条項は,消費者契約についてのみ妥当するものであり,消費者契約のみならず契約一般に共通して無効とされるべき条項の取扱いについては,消費者契約法とは別に検討すべきものである。

4 (1)から(8)に当たる条項を一律に無効にすると著しく不合理な結果を招くような消費者の不当な権利主張は,権利濫用禁止の法理(<注)等の援用によって排斥される。 (注) いかなる場合に「権利の濫用」に当たるかについては,

 ア. 単に他人に損害を与える目的でする場合 又は
 イ. 権利の行使によって権利者に得られる利益と,権利の行使によって相手方に与える

不利益及び社会的な不利益とを比較考慮して,相手方に与える不利益がはるかに大きく,しかも,それが単に相手方に与える不利益に止まらず,社会全体の不利益になるという場合であると理解されている。

5 効果については,当該条項を全部無効とするか,一部無効にすれば足りるものもないか検討が必要である。

6 契約締結時のあらゆる事情を考慮して, 契約全体を有効としつつ(9)に当たるような個別の条項が民法上の信義則や公序良俗等の一般条項によって無効とされうることは,裁判実務上ほぼ定着している。このことは本法が制定されても変わらない。したがって,いわゆる「反対解釈」(ここでは本法で規定されたもののみ契約条項が無効とされ,これ以外は無効とならないという解釈)の考え方は誤りであるが,個別の条項が民法によって無効とされうるという趣旨を確認するという意味で,本法において,(9)のような規定を置く意義がある。

7 しかしながら,民法が規定する場合以外に,無効という効果を発生させるものとして消費者契約法において(9)のような条項を規定し機能させる場合には,「正当な理由なく」「正当な利益」「著しく害する」といった概念の内容を確定するための検討を行う必要があり, その概念が明確にできない場合には(9)のような条項を規定することは適当でないとの意見があった。


V. その他

(1) 他の法律との関係

消費者契約については,この法律の規定によるほか,民法及び商法の規定によるものとする。また,消費者契約について,民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは,その定めるところによるものとする。

[説明]

1 (1)前段に関して,消費者契約法が適用される消費者契約においても,本法に定めがないものは,民法,商法その他各種の個別法の民事規定が現行法のまま適用されるものである。これらの法の定める消費者の権利は,本法の制定によって何らの制約を受けないものとして立法されなければならない。本法と関連の深いものとしては,民法の錯誤,詐欺,強迫,債務不履行(解除,損害賠償),不法行為(損害賠償),個別法のクーリングオフ,中途解約権などがある。

2 (1)後段に関して,民法及び商法以外の他の法律の私法規定と消費者契約法の私法規定が競合する場合には,原則として,民法及び商法以外の他の法律の私法規定によるものとする。

3 消費者の取消権の行使及び不当条項の無効の主張は,損害賠償の請求を妨げない。

4 本法の定める権利及び義務も,民法の一般原則である信義誠実の原則,権利濫用の禁止など私権の行使に関する制約を受ける。

(2) 証明責任

[説明]

 当事者双方が,原則どおり自己に有利な法律効果の発生を定める法規の主要事実について証明責任を負うものとする。

(3) 基準時点

[説明]

取消し及び無効の要件を判断する基準時点は,原則として,契約が締結された時点となる。



[ 第17次国民生活審議会消費者契約法検討委員会の審議経過 ]

○ 第1回消費者契約法検討委員会(平成11年6月3日)
 ・ 消費者契約法検討委員会の今後の運営について

○ 第2回消費者契約法検討委員会(平成11年6月17日)
 ・ 関係省庁における検討(法務省から報告)
 ・ トラブルの実態(野々山[弁護士会],藤井[消費生活相談員協会],小野田 [東京都]各委員報告)

○ 第3回消費者契約法検討委員会(平成11年6月30日)
 ・ 取引の実情(1)(武内[警備],馬場[食品],伊藤[私学]各委員報告)

○ 第4回消費者契約法検討委員会(平成11年7月13日)
 ・ 取引の実情(2)(早川[銀行],菅野[証券],八木橋[不動産]各委員報告)

○ 第5回消費者契約法検討委員会(平成11年7月23日)
 ・ 取引の実情(3)(畔柳[医療],西村[運輸],萩原[電気通信]各委員報告)
 ・ 消費者契約法に関わる行政法上の前提的諸問題(山本(隆)委員報告)

○ 第6回消費者契約法検討委員会(平成11年9月6日)
 ・ 消費者政策部会に報告する「検討状況」の取りまとめ
 (第2回消費者政策部会(平成11年9月17日)にて報告)

○ 第7回消費者契約法検討委員会(平成11年9月27日)
 ・ 消費者契約法の立法に係る考え方について(1)

○ 第8回消費者契約法検討委員会(平成11年10月7日)
 ・ 消費者契約法の立法に係る考え方について(2)

○ 第9回消費者契約法検討委員会(平成11年10月29日)
 ・ 消費者契約法の立法に係る考え方について(3)

○ 第10回消費者契約法検討委員会(平成11年11月12日)
  ・ 消費者契約法検討委員会報告(案)について(1)

○ 第11回消費者契約法検討委員会(平成11年11月30日)
 ・ 消費者契約法検討委員会報告(案)について(2)



[ 第17次国民生活審議会消費者政策部会 消費者契約法検討委員会 委員名簿 ]

[五十音順]

委員長

落合 誠一 東京大学大学院法学政治学研究科教授
委員長代理

松本 恒雄 一橋大学大学院法学研究科教授
委員 井田 敏 全国商工会連合会専務理事
伊藤 信博 全私学連合事務局長
及川 昭伍 国民生活センター顧問
角田 博 社団法人経済団体連合会経済本部長
河上 正二 東北大学法学部教授
畔柳 達雄 社団法人日本医師会参与
佐藤 繁 神田公証役場公証人
潮見 佳男 京都大学大学院法学研究科教授
菅野 浩 日本証券業協会総務部長
高橋 宏志 東京大学大学院法学政治学研究科教授
武内 望 社団法人全国警備業協会消費者契約に関する特別委員会委員長
中島 芳昭 日本商工会議所理事・産業部長
鍋嶋 詢三 社団法人消費者関連専門家会議理事長
南条 俊二 読売新聞社論説委員
西村 康雄 財団法人海事産業研究所理事長
野々山 宏 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長
萩原 旭児 社団法人電気通信事業者協会業務部長
浜野 崇好 日本放送協会解説委員
早川 智 東京都生活文化局消費生活部長
早川 淑男 全国銀行協会事務局長
原  早苗 消費科学連合会事務局次長
馬場 久萬男 財団法人食品産業センター理事長
日和佐 信子 全国消費者団体連絡会事務局長
福川 伸次 株式会社電通電通総研研究所長
藤井 教子 社団法人全国消費生活相談員協会理事長
政野 澄子 全国地域婦人団体連絡協議会監査
八木橋 孝男 社団法人不動産流通経営協会業務委員会委員長
山下 友信 東京大学大学院法学政治学研究科教授
山本 豊 上智大学法学部教授
山本 隆司 東京大学大学院法学政治学研究科助教授
吉岡 初子 主婦連合会事務局長