消費者の窓
EU「消費者契約における不公正条項に関する
1993年4月5日付け閣僚理事会指令」

第1条

 (1) 本指令の目的は,売主又は提供者と消費者との間で締結された契約における不公正条項に関する加盟国の法律,規則および行政規定を近似させることにある。

 (2) 強行的性質を有する法律又は規則の規定を反映した条項,および加盟国又は共同体を当事者とする国際条約の原則又は規定を反映した条項は,とりわけ運輸分野に  おいては,本指令の規定の適用を受けない。


第2条

 本指令において,

a) 「不公正条項(unfair terms)」とは,第3条により定義される契約条項をいう。

b) 「消費者(consumer)」とは,本指令の対象とされる契約において自己の営業,事業又は専門職業外の目的で行為するすべての自然人をいう。

c) 「売主又は提供者(seller or supplier)」とは,本指令の適用を受ける契約において,公的に所有されているか,私的に所有されているかを問わず,自己の営業,事業又は専門職業に関係する目的で行為するすべての自然人又は法人をいう。



第3条

 (1) 個別に交渉されなかった契約条項は,それが,信義誠実の要請に反して,契約から生じる当事者の権利義務に著しい不均衡を生じさせ,消費者に不利益をもたらす場合には,不公正なものとみなされる。

 (2) 条項は,それがあらかじめ作成され,そのために消費者が当該条項の内容に影響を与えることが不可能であった場合,とりわけあらかじめ作成された標準契約が使用されたという状況においては,常に,個別に交渉されなかったものとみなされる。

条項のある一定の側面又はある特定の条項について個別に交渉されたという事実があっても,契約の全体的評価から,あらかじめ作成された標準契約であることが示される場合には,契約の残部への本条の適用は妨げられない。

 売主又は提供者は,標準条項が個別に交渉されたものである旨を主張する場合には,その立証責任を負担する。

(3) 付表(Annex)には,不公正とみなすことのできる条項の例示的かつ非網羅的(indicative and non-exhaustive)リストが含まれる。


第4条

 (1) 契約条項の不公正性は,契約締結の対象とされた物又はサービスの性質を考慮し,契約締結時点において契約締結に随伴する全事情および当該契約の他の全条項又は当該契約が依拠している他の契約の全条項を参照して,評価される。ただし,このことは第7条の規定には影響がない。

 (2) 条項の不公正性の評価は,当該条項が平易かつ明瞭な言葉で表現されているかぎり,契約の主たる内容の定義や,サービス又は物の提供の対価としての代金又は報酬の妥当性とは関係しない。


第5条

 消費者に提示される契約の全部又は一部の条項が書面による場合には,それらの条項は常に平易かつ明瞭な言葉で起草されなければならない。ある条項の意味について疑問がある場合には,消費者にとってもっとも有利な解釈が優先する。この解釈準則は,第7条第2項で定められる手続に関しては適用されない。


第6条

 (1) 加盟国は,消費者と売主又は提供者との間で締結された契約において使用された不公正な条項が,その国内法の定めるところに従って,消費者を拘束しないこと,および不公正な条項なしでも契約が存続可能であれば,契約はその他の条項について当事者を拘束し続けることを定めねばならない。

 (2) 加盟国は,ある非加盟国が加盟国の領土と近接した関係にある場合に,契約の準拠法としてその非加盟国の法律を選択することによって,本指令より認められた保護を消費者が失うことがないように,必要な措置を講じなければならない。


第7条

 (1) 加盟国は,消費者および競争者の利益のために,消費者と売主又は提供者との間で締結された契約において,不公正な条項が継続して使用されることを阻止するための適切かつ効果的な手段の存在を保障しなければならない。

 (2) 第1項にいう手段には,国内法上,消費者保護について正当な利益を有する人又は団体が,関連する国内法の定めるところに従って,裁判所又は権限ある行政庁において,一般的に使用するために起草された契約条項が不公正であるか否かの判定を求めることができる旨の規定が含まれていなければならない。これによって,それらの人又は団体は,そのような条項の継続的な使用を阻止するための適切かつ効果的な手段を用いることが可能となる。

 (3) 第2項にいう法的救済措置は,国内法を十分に配慮したうえで,同一の普通契約約款もしくは類似の条項を使用する同一の経済分野に属する多数の売主もしくは提供者,又はその使用を推奨するそれらの者の同業団体を相手として,個別に又は一括して提起することができる。


第8条

 加盟国は,消費者の保護を最大限保障するために,本指令の適用される分野における欧州経済共同体の設立に関する条約と矛盾しないかぎりで,もっとも厳格な規定を採用又は維持することができる。


付表(Annex)

第3条第3項において言及された条項

 (1) 以下の目的又は効果を有する条項

(a) 売主又は提供者の作為又は不作為により,消費者に生命又は身体の被害が生じた場合において,売主又は提供者の責任を排除又は制限すること。

(b) 売主又は提供者による契約上の義務の全部もしくは一部の不履行また不完全な履行の場合において,消費者が売主又は提供者に対して有する債権と売主又は提供者に対して負っている債務とを相殺する選択権を含む,売主もしくは提供者又はその他の当事者に対して消費者が有している法的権利を不当に排除又は制限すること。

(c) 売主又は提供者によるサービスの提供の実現は,売主又は提供者の意思次第であるとしておきながら,消費者を拘束する合意をなすこと。

(d) 消費者が契約の締結又は履行をしないことに決めた場合においては,消費者が支払った金銭を売主又は提供者が保持できるとしておきながら,売主又は提供者が契約を解約した場合には,消費者は売主又は提供者からそれと同等額の賠償金を受領できる旨を定めないこと。

(e) 消費者の義務の不履行の場合に,不当に高額の賠償金の支払を要求すること。

(f) 売主又は提供者には,自由に契約を解消することが認められているのに,同様の権利が消費者には認められていないこと。又は,売主もしくは提供者は,みずから契約を解消しておきながら,未だ提供されていないサービスに対して消費者が支払った代金を保持しうるとすること。

(g) 重大な理由がある場合は別として,売主又は提供者は,期間の定めのない契約を,合理的な通知なしに終了させることができるとすること。

(h) 消費者が別段の意思を表明しないかぎり,期間の定めのある契約を自動的に延長するとされている場合に,消費者が契約の延長を望まない旨を表明するために設定された期限が不当に早く到来すること。

(i) 契約締結前に実際に知る機会が与えられなかった条項について,消費者を拘束して,撤回不能とすること。

(j) 売主又は提供者は,契約で特定された正当な理由なしに,契約の条項を一方的に変更しうるとすること。k) 売主又は提供者は,正当な理由なしに,供給されるべき製品又はサービスの性質を一方的に変更することができるとすること。

(l) 物の価格を引渡時に定めるものとし,あるいは物の売主又はサービスの提供者は価格を引き上げることができるとしておきながら,いずれの場合にも,最終的な価格が契約締結時に合意した価格に比して不当に高い場合に,これに対応して契約を解約する権利を消費者に与えていないこと。

(m) 提供された物又はサービスが契約に適合しているか否かを判定する権利を売主又は提供者に与えること,又は契約の文言を解釈する排他的権利を売主又は提供者に与えること。

(n) 自己の代理人によりなされた約束を遵守すべき売主又は提供者の義務を制限すること,又は自己の約束をある一定の形式を踏んでいる場合にのみ遵守するとすること。

(o) 売主又は提供者がその義務を履行しない場合でも,消費者は全義務を履行しなければならないとすること。

(p) 契約から生じる権利義務が譲渡されると,消費者にとって保証が減少するおそれがある場合に,売主又は提供者は,消費者の同意なしに,その権利義務を譲渡できるとすること。

(q) とりわけ,法規の適用に服さない仲裁でのみ紛争解決をすることを消費者に要求し,消費者の利用できる証拠を不当に制限し,又は当該事案に適用できる法によれば契約の相手方にあるとされる立証責任を消費者に課すことによって,消費者が訴訟を提起し,又は他の法的救済措置を行使する権利を排除又は妨害すること。


 (2) (g),(j)および(l)号の範囲

(a) (g)号は,金融サービスの提供者が,正当な理由がある場合に,期限の定めのない契約を通知なしに一方的に終了させる権利を留保する条項の使用を妨げるものではない。ただし,この場合,提供者は,契約の相手方に遅滞なくその旨の通知をしなければならない。

(b) (j)号は,金融サービスの提供者が,正当な理由がある場合に,消費者が支払う利率又は消費者に対して支払われる利率,もしくは金融サービスに対するその他の手数料の額を通知なしに変更する権利を留保する条項の使用を妨げるものではない。ただし,この場合,提供者は契約の相手方に可能なかぎり迅速にその旨を通知しなければならず,相手方は即時に自由に契約を解消することができる。
 (j)号は,また,売主又は提供者が期限の定めのない契約の条件を一方的に変更する権利を留保する条項の使用を妨げるものではない。ただし,この場合,売主又は提供者は消費者に合理的な通知をもって知らせなければならず,消費者は自由に契約を解消することができる。

(c) (g),(j)および(l)号は,次のものには適用されない。


・流通性のある証券,金融証書,および売主又は提供者が支配しえない株式取引相場もしくは指数又は金融市場の利率の変動とリンクした価格付けがなされる製品又はサービスの取引
・外国通貨,旅行者小切手又は外国通貨建ての国際為替の購入又は販売の契約


(d) (l)号は,それが適法であるならば,物価指数条項の使用を妨げるものではない。ただし,この場合,価格を変更する方法が明確にされていなければならない。



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