消費者の窓

〔2〕消費者政策の具体的施策

5 消費者被害の救済

1.製造物責任法と関連施策

(1)製造物責任法

 現代社会においては製品が高度化、複雑化し、製品の安全性確保を製造業者等に依存する度合いが大きくなっています。製品事故被害者の円滑かつ適切な救済という観点から、製造業者等に「過失」がなくとも製品に「欠陥」があれば賠償責任を負わせることにより、被害者の立証負担を軽減することが製造物責任法の趣旨です。

(1) 製造物責任法の意義について

 製造物責任法は、製造業者等の「過失」に代えて製造物の「欠陥」を責任要件とすることによって、製造物の欠陥により生じた被害者の生命、身体または財産についての被害に対し、製造業者等に賠償責任を負わせることを通じて製品事故被害者の権利・利益を擁護し、増進させようとする法律です。
 裁判の場においてだけでなく、裁判以外の場においても、本法が紛争解決の規範として機能することで、解決水準が安定し、紛争が適切・迅速に解決されることが期待されるほか、製造業者等がより一層消費者の安全性に対するニーズに即して製品を開発、製造するようになることが期待されます。このように同法には、製造業者等・消費者双方の製品安全に対する意識の変化や、国際的な諸制度との調和等を通じて、「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展」に資することが期待されています。

(2) 製造物責任法とは

 製造物責任法は、1995年7月1日に施行されました。製品の欠陥によって生命、身体または財産に損害を被ったことを証明した場合に、被害者は同法により製造業者等に対して損害賠償を求めることができます。
 具体的には、製造業者等が、自ら製造、加工、輸入または一定の表示をし、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、過失の有無にかかわらず、これによって生じた損害を賠償する責任があることを定めています。そのため、その損害が当該製造物についてのみ生じた場合や、安全性に無関係な品質や性能の瑕疵は本法の対象外ということになります。また、製造業者等の免責事由や期間の制限についても定めています。
 欠陥とは、製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。具体的には、(1)製造物を設計する段階で十分に安全性が配慮されていなかった場合や、(2)製造過程で粗悪な材料が混入するなどにより安全性を欠いた場合、また、(3)製造物の特性や内在する危険性等の情報を指示・警告していなかった場合などが欠陥にあたります。

(2)製造物責任法に係る関連施策

 製造物責任法が円滑かつ適切に運用されるためには、同法およびその運用に対する理解と取組みが必要です。そのため、(i)製造物責任法の周知徹底、(ii)裁判外紛争解決体制の整備・充実、(iii)原因究明体制の整備、(iv)情報の収集・提供体制の整備、(v)製品被害の未然・再発防止などの施策が講じられてきました。この間に、消費者の製品安全に関する意識は徐々に定着し、また事業者においては、より安全性を高めた製品の開発や表示・取扱説明書の充実等積極的な取組みが進められています。このように、製造物責任制度は、立法以来、我が国社会に着実に定着しつつあります。
 今後は、次の(1)~(3)を通じ、消費者被害の総合的な防止・救済策の推進が一層図られることが期待されます。

(1) 国民生活センター及び各地の消費生活センターにおける原因究明体制の充実・強化

 製品事故の原因究明体制については、(i)事故の未然防止・再発防止の観点、(ii)製品事故による被害者の立証負担を軽減するなどの観点から、各機関相互の連携の強化により多様な事故に対する原因究明機能を充実強化することが必要です。法施行後、各地の消費生活センター等では、原因究明機関のネットワークが活用されるとともに、原因究明機器の整備等による原因究明の事例の蓄積や、原因究明機関間の連携強化による情報の共有化や紛争のより適切な解決が図られています。

(2) 消費者教育の推進

 製品関連事故による消費者被害を未然に防止するためには、製品の安全性を確保するとともに、製品が消費者によって適切に使用されることが必要です。また、事故の発生後においても、適切かつ円滑な救済を確保するためには、消費者が被害救済の手段や、ルールについて基本的な知識をもつことが必要であり、また、合理的な判断力も求められます。そのため、消費者教育を通じて、早い段階から製品の安全性や救済手段に関する基礎的な知識を身につけ、自ら被害を防止でき、また救済を得られるような主体的な消費者の育成が重要です。

(3) 専門的知見を活かした処理体制の整備

 製品事故の被害救済については、民間活力を活用し、製品分野ごとの専門的知見を活かした紛争解決機関の整備が図られています。各製品分野において、公平性・中立性に配慮した苦情相談・紛争解決体制の整備が図られています(別表)。

問い合わせ先
 ○内閣府国民生活局消費者企画課
  電話 03―3581―9095
 ○法務省民事局参事官室
  電話 03―3580―4111(代)
 ○農林水産省消費・安全局消費・安全政策課
  電話 03―3502―8111(代)
 ○経済産業省商務情報政策局製品安全課
  電話 03―3501―1511(代)
 ○国土交通省総合政策局政策課
  電話 03―5253―8111(代)

製品分野別裁判外紛争処理機関

2.財産犯等の犯罪収益のはく奪及び被害回復

 最近、振り込め詐欺やいわゆるヤミ金融事件などにより多数の被害が発生しています。
 こうした財産犯などの犯罪では、組織的犯罪処罰法上、被害者による原状回復を優先させるため、犯人が得た財産(犯罪被害財産)をはく奪(没収・追徴)することはできないこととされていましたが、同法の一部改正及び被害回復給付金支給法の制定(両法とも2006年12月1日から施行)により、犯罪行為が組織的に行われた場合や犯罪被害財産が偽名の口座に隠匿されるなどいわゆるマネー・ローンダリングが行われた場合などには、犯罪被害財産のはく奪が可能になるとともに、はく奪した財産を用い、その事件の被害者の方などに被害回復給付金を支給することが可能となりました。
 被害回復給付金の支給の対象となるのは、刑事裁判において認定され、犯罪被害財産のはく奪の理由とされた財産犯等の犯罪行為の被害者のほか、こうした犯罪行為と一連の行為として行われた、いわゆる余罪の財産犯等の犯罪行為の被害者です。また、これらの被害者の相続人等も対象となります。ただし、犯人の共犯者や犯人から不正な利益を得た人等は対象にはなりません。
 支給手続を行うのは検察官です。検察官は、裁判の確定後、犯罪被害財産等を犯人からはく奪した上で、被害回復給付金の支給対象となる犯罪行為や申請期間を定め、支給手続を開始します。支給手続が開始されたことや支給対象となる犯罪行為の範囲などについては、官報や検察庁のホームページに掲載されますが、検察官が通知可能な被害者等がいることを把握している場合は、そのような方には個別に通知がなされます。
 支給を希望する被害者等は、申請書に必要な書類を添えて、支給手続を行っている検察官に申請します。
 検察官は、被害者等の申請に基づき支給の可否等を裁定(判断)します。支給額の上限は、各人が実際に被害を受けた額ですが、資金が足りない場合は、各人の被害額に応じてあん分した額がそれぞれへの支給額になります。
 これらの支給手続の事務のうち、支給の可否等の裁定のための審査に関する事務などは、検察官から「被害回復事務管理人」に選任された弁護士が行うこともできます。

問い合わせ先
 ○法務省刑事局
  電話 03―3580―4111(代)
  ホームページアドレス http://www.moj.go.jp/

3.日本司法支援センター(法テラス)

 司法というものは、国民の目から見ると、縁遠いように感じられるのではないでしょうか。例えば、法的な紛争の解決方法に関する情報が容易に得られない、身近に弁護士等の専門家がいない、あるいは、経済的事情から弁護士等の専門家に依頼できないなどの問題があると言われています。
 そこで、このような問題を解決し、民事・刑事を問わず、国民がどこでも法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにしようというのが総合法律支援構想であり、この構想を具体化するため、2004年6月、総合法律支援法が公布されました。
 日本司法支援センター(愛称「法テラス」)は、同法に基づき2006年4月に設立された法人であり、同年10月から業務を開始しています。
 法テラスは、国、地方公共団体、弁護士会、司法書士会、消費者団体その他の関係機関・団体等と連携・協力して、法律サービスの提供をより身近に受けられる社会の実現を目指しています。
 法テラスでは様々な業務を行っていますが、消費者被害の救済という観点から最も重要となるのは、情報提供業務です。この業務は、法律上のトラブルでお困りの方に対して、そのトラブルを解決するために役立つ制度を説明したり、相談内容に応じて、各地の消費生活センターを始めとする最も適切な相談窓口の紹介等を無料で行うものです。
 この情報提供業務以外にも、

・民事法律扶助業務(資力の乏しい人への無料法律相談や弁護士費用等の立替え)
・司法過疎対策業務(司法過疎地域で適切な料金により法律サービスを提供)
・犯罪被害者支援業務(犯罪被害者の支援に詳しい弁護士等の情報を無料で提供)
・国選弁護関連業務(迅速・確実に国選弁護人を確保して、捜査から裁判まで一貫した国選弁護体制を整備)

等の各業務を一体的に行い、「身近な司法」の実現を目指しています。

 消費者被害でお困りごとがありましたら、法テラス「(0570-078374(おなやみなし)」へお電話ください。豊富な知識や経験を持った担当者がトラブル解決の道案内をします。

問い合わせ先
 ○法テラス本部
  電話 050-3383-5333(代)
  ホームページ http://www.houterasu.or.jp

4.裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)

 紛争が生じた場合に、これを解決する方法として裁判がありますが、このほか、裁判外紛争解決手続(ADR)を利用して解決することも可能です。
 裁判外紛争解決手続とは、裁判以外の場において紛争を解決するための手段や方法の総称です。裁判外紛争解決手続は、厳格な裁判手続と異なり、それぞれが対象とする紛争の分野について、手続を提供する者の専門的な知見を反映して紛争の実情に即した迅速な解決を図ることなど、柔軟な対応が可能であるという特長があり、利用しやすい多様な裁判外紛争解決手続が発展することが望まれます。
 そこで、司法制度改革の一環として、裁判外紛争解決手続の拡充・活性化を図るための制度基盤の整備について検討がされ、2004年に「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR法)が制定されました。ADR法は、2007年4月1日から施行されます。
 ADR法は、紛争の解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、国民の権利利益の適切な実現に資することを目的として、裁判外紛争解決手続の基本理念等を定めるとともに、民間紛争解決手続(民間事業者が行う、いわゆる調停やあっせんをいいます。)の業務に関し、法務大臣による認証の制度を設け、併せて、認証を受けた業務について、時効の中断等に係る特例を定めてその利便の向上を図ることを内容とするものです。
 ADR法により新設される認証制度は、民間紛争解決手続の業務を行う者の申請に基づき、法務大臣が、当該業務が法令の定める一定の基準・要件を満たしているかどうかを審査し、それらを満たしていると認められる場合に当該業務について認証する制度です。また、認証を受けるためには、暴力団員等であることなどの欠格事由に該当しないことが必要です。
 法務大臣は、認証をした民間紛争解決手続の業務に関する情報を広く国民に提供し、紛争解決の手段の選択の目安とするため、事業者の名称、事務所の所在地、業務の内容、利用に要する費用等の様々な情報を法務省のホームページを利用して公表することとされています。

 (参考) 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)について
      http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/adr01.html

問い合わせ先
 ○法務省大臣官房司法法制部審査監督課
  電話 03―3580―4111(代)

5.原因究明テスト機関

(1)国民生活センター

 製品関連事故による消費者被害の救済にあたっては、消費者の立証負担を軽減するため、製品関連事故の原因究明体制の整備が必要です。国民生活センターは製品関連事故の原因究明の中核的機関の1つとして、自動車関係、家電製品、食品・化学品などの高度専門性を必要とする分析等を中心に、各地消費生活センター等の依頼に基づいて製品関連事故の原因究明テストを実施しており、消費者被害の未然防止・再発防止にも役立てています。
 また、各地消費生活センター等が製品関連事故の原因究明を実施するにあたり、専門性や設備の点で対応ができない場合に利用できるよう、原因究明テストの依頼、技術指導、機器利用等が可能な原因究明機関(公的試験研究機関、民間検査機関、国の機関等)を掲載した原因究明機関リストを作成し、インターネットで公開しています。

(2)消費生活用製品関係

 消費生活用製品に関する事故の再発・未然防止を図るため独立行政法人製品評価技術基盤機構では、消費生活用製品の事故に関する情報を収集しております。(参考IX.危害情報、事故情報の収集・提供等をご参照下さい。)また、収集したすべての事故情報について、内容を調査・分析し必要な場合には再現テスト等を実施するなど、製品事故の原因究明を行い事故原因や再発防止策を公表しております。

(3)医薬品、医療機器等関係

 安全に疑義がある医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器については、薬事法に基づき、原因究明を含めて、保健衛生上の危害の防止のための措置を講じることが、製薬企業等に義務づけられています。
 また、行政機関では、必要と認めた場合には、衛生研究所等で試験・検査を実施しています。

(4)食品関係

 食品等に関する事故の未然防止・再発防止を図るため、独立行政法人農林水産消費技術センターでは、食品等の品質や成分の検査、混入した異物の鑑定等の原因究明テストを実施しています。
 また、食品等に関する事故情報を収集、整理し、公表しています。

問い合わせ先
 ○独立行政法人国民生活センター相模原事務所
  電話 042―758―3161(代)
 ○経済産業省商務情報政策局製品安全課
  電話 03―3501―1511(代)
 ○厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課
  電話 03―5253―1111(代)
 ○農林水産省消費・安全局消費・安全政策課
  電話 03―3502―8111(代)

6.(社)全国警備業協会

 警備業界の業界団体である(社)全国警備業協会では、警備業者と消費者間のセキュリティーサービスにかかわる契約に関して起こるトラブルを防止するために、「消費者契約に関するガイドライン」を定めるとともに、ADR機関として同協会及び各都道府県警備業協会に苦情受付窓口を設け、警備業者、顧客のいずれかの申し出により、問題の適切な解決に努めるものとしており、業界団体として自主的に警備業務に関する苦情の解決を図っています。

問い合わせ先
 ○(社)全国警備業協会総務部
  電話 03―3342―5821

7.(財)日本クレジットカウンセリング協会

 (財)日本クレジットカウンセリング協会は、クレジットや消費者ローンの利用者で、、複数の債務者に対しての債務の返済が困難に陥った、いわゆる多重債務者に対し、消費者保護の立場から公正・中立なカウンセリング等を行い、その生活再建と救済を図ること、及びクレジットや消費者ローンの健全な利用についての啓発を行い、多重債務者の発生の未然防止を図ることを目的として、1987年に設立されました。
 (財)日本クレジットカウンセリング協会では、日本弁護士連合会、消費者団体、言論界、学識経験者、クレジット業界、貸金業界及び銀行業界の協力の下、消費者信用業界横断的なカウンセリング組織として、カウンセリング事業等の各種事業を行っています。

(1)多重債務者の生活再建と救済を図るためのカウンセリング事業

 クレジットや消費者ローンの利用者で複数の債務者に対する債務の返済が困難な状況に陥った方の生活再建と救済を図るため、消費者保護の観点から公正・中立な立場でカウンセリング事業を実施しており、(財)日本クレジットカウンセリング協会の東京・福岡・名古屋の各カウンセリングセンターにおいて実施する電話相談と面談によるカウンセリング事業と、全国主要都市において、弁護士会等の協力のもとに実施する法律・家計相談会とがあります。

(2)クレジットや消費者ローンの健全な利用に関する啓発・調査事業

 クレジットや消費者ローンによる多重債務者の発生を未然に防止するための啓発・調査事業を行っており、消費者啓発用のビデオ、リーフレット・冊子等の資料も用意しております。

問い合わせ先
 ○(財)日本クレジットカウンセリング協会
  ホームページ http://www.jcca-f.or.jp/
  ・東京センター
   住所 〒160-0022 東京都新宿区新宿1丁目15番9号
             さわだビル4階
   電話 03―3226―0121 FAX 03―3226―7451
  ・名古屋センター
   住所 〒460-0002 名古屋市中区丸の内3丁目19番1号
             ライオンビル7階
   電話 052―957―1211 FAX 052―972―7781
  ・福岡センター
   住所 〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2丁目12番15号
             赤坂セブンビル2階
   電話 092―739―8104 FAX 092―725―0147